【コラム】

軍事とIT

178 マン・マシン・インターフェイス(3)情報の見せ方・その2

 

178/179

前回は情報の見せ方に関するイントロと、レーダーを例に取り上げて書いた。今回はレーダー以外のセンサーについて、情報をどんな風に見せるか、という話をしてみようと思う。

レーダー警報受信機

英語ではRWR(Radar Warning Receiver)、戦闘機や爆撃機の必須アイテムだ。敵のレーダー、主としてミサイルの誘導や対空砲・機関砲の射撃管制に使うレーダーの電波を受信した時に、どちらの方位からどの種類の電波がきているかを知らせる。

ミサイルを撃つ場合でも、対空砲や機関砲を撃つ場合でも、射撃管制レーダーを使って目標を捕捉・追尾することで、狙いをつけるために必要なデータを得る。対空砲や対空機関砲は雷管をひっぱたいて弾が出たら、後は弾まかせだから、撃つ前に精確に狙いをつけないと当たらない。一方、ミサイルの方は目標の位置情報を入力してから発射するとか、発射した後で誘導電波を照射し続けるとかいう手続きが必要になる。

どちらにしても射撃管制レーダーの電波を浴びたら、それは「危険信号」だから回避行動をとらなければならない。そのためのRWRである。

どの方向から電波を浴びるかわからないから、RWRのスコープは全周をカバーする必要がある。また、発信源の種類などの付加情報も必要になる。そういうところがレーダーに似ているので、RWRのスコープはレーダー用のPPIスコープと似た、円形のものを使うことが多い。そこに方位の目安となる放射方向の線と、距離の目安となる円周方向の線を描いておく。

戦術情報ディスプレイ

センサーの高性能化・高機能化・多様化、それとコンピュータによる情報処理の組み合わせにより、敵味方の位置情報や識別情報をとりまとめて、地図みたいに表示することが可能になった。自己位置は慣性航法システム (INS : Inertial Navigation System) やGPS(Global Positioning System)によって把握できるから、それが1つの基準点になる。

いってみれば、地図上に探知目標のアイコンを並べたようなもの。それの極めつけが、本連載の第1回で取り上げた、F-35のコックピットに設けられている大画面タッチスクリーン式ディスプレイということになる。

F-35のコックピット・シミュレータ。左側は飛行・航法関連情報、右我は赤外線センサーの映像などを表示している。ここには現れていないが、燃料タンクごとの残量をグラフィカルに表示する仕掛けもある

F-35ほど大きく、リッチなものでなくても、同じ要領で彼我の位置情報を描き出すディスプレイ装置を用意する事例は増えている。戦闘機に限らず、艦艇でも事情は同じだ。

イージス艦の戦闘情報センターに入ると、指揮官席の真正面に大きなディスプレイが2面、ないしは4面あり、そこに敵と味方の艦や航空機やミサイルの情報が表示される仕組み。もっとも、報道公開の席ではディスプレイは消されているか、当たり障りのない内容の表示しかなされていないものだが。

ソナー

ここまで解説してきたものは比較的わかりやすいが、「何、それ?」と言いたくなりそうな表示をするのがパッシブ・ソナーのディスプレイ。題して「ウォーターフォール・ディスプレイ」という。といっても、ウォーターフォール型開発とは関係ない。

パッシブ・ソナーで得られる情報は、音源の方位と、音そのものだけである。重要なのは、聞こえる音の内容、あるいは周波数ごとのレベルの違い。音源としてはエンジンそのものが発する騒音やスクリューが発する音が挙げられるが、エンジンの種類や運転状況、スクリューの回転数によって、聞こえる音が違ってくる。

そこでウォーターフォール・ディスプレイでは、縦方向の表示と横方向の表示を組み合わせている。横方向は方位に対応しており、画面いっぱいで360度全周をカバーする。

では、縦方向はというと、時間が経過するにつれて、上から下に向けて表示がゆっくりスクロールする。そして、音源を聴知すると、明るい輝線が現れる。聴知した音源の方位が変わると、上から下にスクロールする過程で、音源に対応する輝線の位置が左右方向に移動していくことになる。

もう1つの表示方法として、横軸に周波数、縦軸に時間をとるものがある。例えば、横軸が左から右に向かって数字が増える(周波数が上がる)設定になっていれば、周波数が高い音源を聴知した時ほど、輝線が画面の右寄りに現れることになる。

時間の経過に従って音源の周波数が変化した場合、画面が上から下に向かってスクロールする過程で、輝線の位置が左右方向に移動することになる。そうやって構成されるトーン・ラインは音源となる艦によって違いがあるから(いわゆる音紋)、敵艦の種類を識別する際の判断材料になる。

ソナーのディスプレイ表示例。横軸に周波数、縦軸に時間をとったもの。撮影者が下手だったので、写りが良くないところは勘弁していただきたい

もちろん、生の音を聞くことで得られる情報もある。スクリューが回転して「シャッシャッシャッ」と水切り音がすれば、スクリューの羽根の数や回転数を知る手がかりになる。ただし、最近の水上戦闘艦では可変ピッチ・プロペラを使っているものがけっこうあり、これは同じ回転数のままで羽根の角度を変えて速度や進行方向を変えてしまう。だから、別の手がかりが必要になるらしい。

電子光学/赤外線センサー

業界ではEO/IR(Electro-Optical/Infrared)センサーという。

電子光学センサーというと物々しいが、要するにデジタルカメラだと思っていただければよい。画素数はせいぜいハイビジョン程度(1,920×1,080ピクセル)が上限で、市販品のデジタルカメラと比べると少ない。闇雲に画素数だけ増やしても、データ量が増えて通信回線とストレージを圧迫するだけなので、用途と目的に見合った画素数があればいいのだ。

赤外線センサーのほうは、探知する対象が可視光線ではなく赤外線に変わるが、基本的な考え方は同じ。波長の関係で、可視光線よりも鮮明さを欠く映像になる傾向があるが、昔の製品と比べると、最近の製品は鮮明な画を得られるようになってきている。

どちらも静止画あるいは動画の映像を表示する必要があるので、普通にディスプレイ装置を用意して、そこに表示する。カラー表示を行いたければ、もちろんカラー表示が可能なディスプレイ装置が必要になる。

面白いのは赤外線センサーの表示で、ブラック・ホットとホワイト・ホットの切替ができる場合が多い。赤外線センサーは赤外線の多寡を映像として得るものだから、強力な熱源があるほどハッキリ映る。それを黒く表示するか、白く表示するかで、ブラック・ホットとホワイト・ホットの違いが生じる。どちらを使うかはオペレーターの好み次第。

デジタルカメラと違うのは、作戦、あるいは交戦のために必要となる付加情報を一緒に表示するところ。センサー自体の位置、センサーが向いている方向、(航空機搭載用なら特に)センサーの高度や移動速度、といったデータが必要になる。

なお、合成開口レーダー(SAR : Synthetic Aperture Radar)も、電波を使うところは違うが「映像」を得るのは同じだから、表示に際しての考え方はEO/IRセンサーと同じになる。

178/179

インデックス

連載目次
第179回 マン・マシン・インタフェース(4)どう操作するか
第178回 マン・マシン・インターフェイス(3)情報の見せ方・その2
第177回 マン・マシン・インタフェース(2)情報の見せ方(その1)
第176回 マン・マシン・インタフェース(1)インタフェースの良し悪しは重要
第175回 人工衛星(9)データ中継衛星と衛星間通信
第174回 人工衛星(8)データの受信・解析・配信
第173回 人工衛星(7)衛星管制網と衛星管制システム
第172回 人工衛星(6)UAVと衛星の関係
第171回 延命改修(7)形態管理
第170回 延命改修(6)ミサイルの場合
第169回 延命改修(5)艦艇の場合
第168回 延命改修(4)輸送機の場合
第167回 延命改修(3)AWACS機の場合 - E-3Cセントリーの機内を紹介
第166回 延命改修(2)F-15の場合
第165回 延命改修(1)総論
第164回 特集F-35(6)短距離離陸・垂直着陸を容易に実現
第163回 特集F-35(5)ソフトウェアの開発と飛行諸元の制限
第162回 特集F-35(4)不思議の国のALIS
第161回 特集F-35(3)CNIとデータリンク
第160回 特集F-35(2)EO-DASとHMD
第159回 特集F-35(1)精緻な組み立て工程
第158回 平成29年度概算要求における情報通信系の話題
第157回 装甲戦闘車両とIT(12)車両の無人化と自動走行
第156回 装甲戦闘車両とIT(11)IEDジャマー
第155回 装甲戦闘車両とIT(10)周辺監視用カメラなど
第154回 装甲戦闘車両とIT(9)アクティブ自衛システム
第153回 装甲戦闘車両とIT(8)砲弾と信管
第152回 装甲戦闘車両とIT(7)ネットワーク化とユーザー・インタフェース
第151回 装甲戦闘車両とIT(6)FBCB2とBFTとBMS
第150回 装甲戦闘車両とIT(5)指揮車という名のAFV
第149回 装甲戦闘車両(AFV)とIT(4)IED対応のアクティブ座席
第148回 装甲戦闘車両(AFV)とIT(3)砲兵の射撃統制装置
第146回 装甲戦闘車両(AFV)とIT(2)戦車の射撃統制装置
第145回 装甲戦闘車両(AFV)とIT(1)行進間射撃
第144回 X-2と将来戦闘機(10)運用構想と技術の関係
第143回 X-2と将来戦闘機(9)機内空間設計と3D CAD
第142回 X-2と将来戦闘機(8)FBWか、FBLか
第141回 X-2と将来戦闘機(7)データリンク
第140回 X-2と将来戦闘機(6)モデリングとシミュレーション
第139回 X-2と将来戦闘機(5)カウンター・ステルス
第138回 X-2と将来戦闘機(4)クラウド・シューティング
第137回 実はハイテクな救難ヘリコプター
第136回 X-2と将来戦闘機(3)スマート・スキン
第135回 X-2と将来戦闘機(2)推力・飛行統合制御[2]
第133回 X-2と将来戦闘機(1)推力・飛行統合制御[1]
第132回 軍事作戦と通信(5)通信とコンピュータの関わり
第130回 軍事作戦と通信(4)国立暗号博物館訪問記
第129回 軍事作戦と暗号(3)暗号の機械化
第128回 軍事作戦と通信(2)コードとサイファー
第127回 軍事作戦と通信(1)通信手段いろいろ
第126回 人工衛星(5)早期警戒衛星
第125回 人工衛星(4)測位衛星(航法衛星)
第124回 人工衛星(3)偵察衛星
第123回 人工衛星(2)通信衛星
第122回 人工衛星(1)軍事衛星の種類いろいろ
第121回 防空とIT(7)エネルギー兵器の場合
第120回 防空とIT(6)IAMD(防空とミサイル防衛の統合)
第119回 防空とIT(5)艦隊防空[その2]
第118回 防空とIT(4)艦隊防空[その1]
第117回 防空とIT(3)野戦防空
第116回 防空とIT(2)防空システムのコンピュータ化
第115回 防空とIT(1)第二次世界大戦における防空システム
第114回 米海軍イージス艦を見る(4)戦闘システムの形態管理
第113回 米海軍イージス艦を見る(3)艦橋の更新
第112回 米海軍イージス艦を見る(2)戦闘システムの更新
第111回 米海軍イージス艦を見る(1)「変わるもの」と「変えてはいけないもの」
第110回 電子戦とIT(10)蔵出し写真館・艦艇編
第109回 電子戦とIT(9)蔵出し写真館・飛行機編
第108回 電子戦とIT(8)電子戦装置の自動化
第107回 電子戦とIT(7)艦艇の電子戦装備
第106回 電子戦とIT(6)その他の電子戦
第105回 電子戦とIT(5)自衛用電子戦装備
第104回 電子戦とIT(4)ECCM
第103回 電子戦とIT(3)ECMとCOMJAM
第102回 電子戦とIT(2)脅威ライブラリ
第101回 電子戦とIT(1)電子戦とはなんぞや
第100回 水中戦とIT(9)ソノブイ・オペレーション
第99回 水中戦とIT(8) 潜水艦の目標運動解析(2)
第98回 水中戦とIT(7) 潜水艦の目標運動解析(1)
第97回 水中戦とIT(6)港湾警備・ダイバー探知
第96回 水中戦とIT(5)嫌らしい機雷
第95回 水中戦とIT(4)機雷戦その2
第94回 水中戦とIT(3)機雷戦その1
第93回 水中戦とIT(2)魚雷避けに関するいろいろ
第92回 水中戦とIT(1)水中戦とは?
第91回 艦艇のシステム化(6)タンクと電子制御
第90回 艦艇のシステム化(5)フネの中における通信手段
第89回 艦艇のシステム化(4)ズムウォルト級とTSCE-I
第88回 艦艇のシステム化(3)省人化とダメコン
第87回 艦艇のシステム化(2)指揮管制装置とは
第86回 艦艇のシステム化(1)システム艦とは
第85回 射撃管制(6)対地・対艦ミサイル
第84回 射撃管制(5)対空ミサイル
第83回 射撃管制(4)砲兵に特有の事情
第82回 射撃管制(3)機関銃・機関砲・火砲その3
第81回 射撃管制(2)機関銃・機関砲・火砲その2
第80回 射撃管制(1)機関銃・機関砲・火砲その1
第79回 相互運用性(5)相互運用性実現の足を引っ張るのは?
第78回 相互運用性(4)物資補給の相互運用性
第77回 相互運用性(3)情報システムの相互運用性
第76回 相互運用性(2)通信分野の相互運用性
第75回 相互運用性(1)相互運用性とは
第74回 不正規戦とIT(8)NATOが演習にソーシャル・メディアを取り込む
第73回 不正規戦とIT(7)国境線の侵入監視や港湾警備
第72回 不正規戦とIT(6)不正規戦と電子戦
第71回 不正規戦とIT(5)コミュニケーションに翻訳ツール
第70回 不正規戦とIT(4)民心掌握とIT
第69回 不正規戦とIT(3)通信を利用した追跡・捕捉
第68回 不正規戦とIT(2)コミュニケーション手段としてのIT
第67回 不正規戦とIT(1)宣伝戦とインターネット
第66回 衛星携帯電話も使いよう
第65回 個人用装備のIT化(5)無線機をめぐる話・いろいろ!?
第64回 個人用装備のIT化(4)個人用武器の精密誘導化
第63回 個人用装備のIT化(3)個人用情報端末機器のあれこれ
第62回 個人用装備のIT化(2) 個人レベルの通信網はどうするか
第61回 個人用装備のIT化(1) 個人レベルの情報武装
第60回 サイバー防衛(8) ソーシャル・エンジニアリング
第59回 サイバー防衛(7) サプライチェーンという戦場
第58回 サイバー防衛(6) オープンな場も戦場になる
第57回 サイバー防衛(5) 弱者の最強兵器
第56回 サイバー防衛(4) アクティブ・ディフェンス
第55回 サイバー防衛(3) 攻撃手段いろいろ
第54回 サイバー防衛(2) サイバー攻撃の動機・手段・内容
第53回 サイバー防衛(1) サイバー攻撃・サイバー防衛とは
第52回 軍事におけるシミュレーションの利用(6) 負傷者治療の巻
第51回 軍事におけるシミュレーションの利用(5) 計測とデブリの巻
第50回 軍事におけるシミュレーションの利用(4) 海の巻
第49回 軍事におけるシミュレーションの利用(3) 陸の巻
第48回 軍事におけるシミュレーションの利用(2) 空の巻
第47回 軍事におけるシミュレーションの利用(1) RDT&Eの巻
第46回 情報活動とIT(6) 情報戦とサイバー戦
第45回 情報活動とIT(5) 情報資料の配信と利用
第44回 情報活動とIT(4) 情報を管理するためのシステムに求められる課題
第43回 情報活動とIT(3) ELINT・COMINT・SIGINT
第42回 情報活動とIT(2) 画像情報のデジタル化
第41回 情報活動とIT(1) なぜ情報活動が必要か
第40回 軍艦・海戦とIT (6) 艦艇の設計・建造とIT
第39回 軍艦・海戦とIT (5) ダメージコントロール
第38回 軍艦・海戦とIT (4) ウェポンシステムとオープンアーキテクチャ
第37回 軍艦・海戦とIT (3) データリンクによるネットワーク化
第36回 軍艦・海戦とIT (2) 艦内ネットワークの整理統合
第35回 軍艦・海戦とIT (1) システム艦ってなに?
第34回 警戒監視体制の構築とIT(6) IT化と人手の使い分け
第33回 警戒監視体制の構築とIT(5) 宇宙空間とサイバー空間
第32回 警戒監視体制の構築とIT(4) 陸の警戒監視
第31回 警戒監視体制の構築とIT(3) 海の警戒監視
第30回 警戒監視体制の構築とIT(2) 空の警戒監視
第29回 警戒監視体制の構築とIT(1) 警戒監視とITの関わり
第28回 指揮統制・指揮管制とIT(4) : 関連する要素技術とまとめ
第27回 指揮統制・指揮管制とIT(3) 軍艦の戦闘指揮所
第26回 指揮統制・指揮管制とIT(2) 特定任務分野の指揮管制
第25回 指揮統制・指揮管制とIT(1) 戦略・作戦レベルの指揮統制
第24回 陸戦とIT(6) 兵站業務とIT活用
第23回 陸戦とIT(5) 地雷やIEDの探知もハイテク化
第22回 陸戦とIT(4) IT化と電源の問題
第21回 陸戦とIT(3) 陸戦と通信網
第20回 陸戦とIT(2) 陸戦兵器の精密誘導化
第19回 陸戦とIT(1) 陸戦における状況認識
第18回 UAVとモジュラー設計
第17回 UAVによる映像情報の収集とデータ処理
第16回 無人戦闘機は実現可能か?
第15回 UAVと有人機の空域共有問題
第14回 武装UAVのオペレーション
第13回 無人偵察機(UAV)に関する基本と武装化の経緯
第12回 Build a Little, Test a Little and Learn a Lot
第11回 イージス・アショアとモジュール化と相互運用性
第10回 ミサイル防衛に必要な通信網とネットワーク化交戦
第9回 イージス艦のベースラインと能力向上
第8回 イージス艦とはそもそも何か
第7回 弾道ミサイル防衛とC2BMC
第6回 F-35ライトニングIIの操縦システム
第5回 F-35ライトニングIIの兵站支援
第4回 F-35ライトニングIIのソフトウェア
第3回 F-35ライトニングIIとネットワーク中心戦
第2回 F-35ライトニングIIの"眼"
第1回 F-35ライトニングIIは何が違う?

もっと見る



人気記事

一覧

イチオシ記事

新着記事