今回はちょっと地味なところで、地雷やIEDの探知について取り上げる。地味なテーマだが、後述するように多数の犠牲者を出している厄介者で、しかも探知が難しい。米陸軍では「第六感が役に立たないか」なんてことまでいいだしたことがあるぐらいだ。

IEDとは何か

IEDとは「Improvised Explosive Device」の略で、日本語訳すると「即製爆発物」となる。つまり、あり合わせの砲弾や爆弾などに起爆装置を組み合わせて作った爆発物で、有線、あるいは携帯電話などを活用した無線装置で遠隔起爆させる。

このほか、爆発物と起爆装置を自動車に積み込んで、運転担当者もろとも目標に突っ込ませるVBIED(Vehicle-Borne IED)、いわゆる自動車爆弾もあるが、それについては存在を隠蔽するわけではなく、明らかに目に見える形で突っ込んでくるので、今回は対象から外す。

一般的にIEDは、見つかりにくいように設置する。地中に埋めたり、草むらや植え込みに隠したり、街角だとゴミの山に隠したりする。また、建物の扉に仕掛け線を設けておいて、扉を開けて中に入るとドッカーン! という形もあり得る。

500ポンド爆弾を改造して作ったIEDが、イラクの某所で地中に埋められていた(出典 : US Army)

なにしろ、いつ、どんな形で襲ってくるか分からない上に、爆発力だけはやたらと大きいことが多いので、IEDは重大な脅威とみなされている。イラクでもアフガニスタンでも、米軍やその他の有志聯合諸国の部隊に対して、もっとも多数の死者をもたらしているのがIEDだ。

では、そのIEDにどうやって対処するかということで、さまざまな方法が考え出された。例えば、無線で遠隔起爆する方式であれば、その電波を妨害するのは一案である。いわゆるIEDジャマーだが、これが有効に機能するには、IEDの遠隔起爆に使用する電波の周波数が分かっていないといけない。そもそも無線遠隔起爆でなければ妨害できない。

また、今回の本題である「センサーによる探知」もある。カメラやアームなどを取り付けたロボットを送り込む手もあるが、それとは別に、IEDの存在を遠方から検知できないか、ということだ。

IED検知用のセンサー

地中に埋まっている地雷やIEDであれば、真っ先に思いつくのは金属探知機だ。あり合わせの品物を寄せ集めて作るIEDであれば、地雷と違って金属製品を排除するのは難しいので、この方法はそれなりに効果がある。ただし、金属探知機を持った人間が現場まで出向かないといけないので、危険度は高い。

そこで登場したのが地表貫通レーダー(GPR : Ground Penetrating Radar)だ。読んで字のごとく、地中まで電波を貫通させて(といっても、探知可能な深さには制約があるが)、その反射波を調べることで、地中に地雷やIEDが埋まっていないかどうかを調べるものだ。応用例で、森林貫通レーダー(Foliage Penetration Radar)もある。

GPRは、かなり高い周波数の電波を使うのが一般的で、その分だけ分解能は高くなるが、探知可能距離は短くなる。しかし、広域対空監視レーダーではないから、探知可能距離の短さは大した問題にならない。

地中に埋まっているモノをレーダーで探知できるぐらいだから、地表に置かれたIED、あるいは植え込みやゴミの山に隠蔽したIEDでも、レーダーで探知できる可能性がある。ただし、レーダーの電波を反射するモノがすべてIEDとは限らないから、誤警報(false alarm)をいかにして排除するかが重大な課題だ。

すると、本物のIEDを検知したときと、その他のモノを検知したときとで反射がどう異なるか、いろいろと実際にレーダーで探知してみて、データを蓄積しておかなければならない。しかも、最新のデータを迅速に前線に配布する必要もあるだろう。こうなると、IT業界っぽい話題になってくる。

また、地表に露出した物体については、本物のIEDかどうか確認するために形状を調べる方法もある。IEDは爆弾や砲弾を改造することが多いから、「それっぽい形状の物体である」と判断したら警報を出すわけだ。防衛省の技術研究本部が研究しているIED探知機材では、レーザーを使って前方を走査、その反射波に関する情報を集積することで、目標の形状を把握する方法をとっている。

ただし注意しないといけないのは、形状を把握する手段だけではIED探知にならないということだ。探知したブツの形状を手持ちのデータと照合して、IEDなのか、それとも別のものなのかを判断する必要がある。しかも、大きさや向きは一定ではないから、さまざまなモノを、さまざまな方向から走査したときのデータを蓄積しておかなければ、そもそも判断がつかない。そして、データの更新が必要になるのは、レーダーの場合と同じだ。

また、処理速度も大事である。操作に時間がかかったり、得られたデータを手持ちのデータと比較照合するのに時間がかかったりすれば、有効性が減じられる。できるだけ早く処理することも必要だ。すると、データベースの設計や、検索・比較照合のアルゴリズムをどうするか、という話になってくる。ソフトウェア開発者の技量が問われるところだ。

ただ、こうしてテクノロジーが発達すれば、敵はその裏をかこうとして頭を使い、いたちごっこになる。だから、米陸軍みたいに、大真面目に「第六感」の研究を始める事例まで出てくる。

執筆者紹介

井上孝司

IT分野から鉄道・航空といった各種交通機関や軍事分野に進出して著述活動を展開中のテクニカルライター。マイクロソフト株式会社を経て1999年春に独立。「戦うコンピュータ2011」(潮書房光人社)のように情報通信技術を切口にする展開に加えて、さまざまな分野の記事を手掛ける。マイナビニュースに加えて「軍事研究」「丸」「Jwings」「エアワールド」「新幹線EX」などに寄稿しているほか、最新刊「現代ミリタリー・ロジスティクス入門」(潮書房光人社)がある。