格差社会・少子高齢化・不確実性の時代…など、不安をあおる言葉ばかりが飛び交っていますが、これからの時代は本当にマイナス面ばかりで、若い世代にとっての利点は全くないのでしょうか。また、時代に見合った資産形成はどうすればよいのでしょうか。この連載では、夫婦の財産はどう分配すればよいか、いわゆる「おひとりさま」の人生はどう備えていけば安心かなど、時代に応じた資産形成・サバイバル方法などについて考えていきます。


運用の価値時間とは - 投資は早めに着手が成功のもと

運用の価値時間とは、利益を生んでくれる時間=年数のことです。下記の図を見るとAさんは就職した年からコツコツと年間20万円貯蓄し、4%で運用し、33歳までそれを継続します。その後貯蓄は中止し、33歳時の資金をそのまま65歳まで4%で運用し続けると、65歳で約1,000万円の資産が手に入ります。33歳から65歳までの時間が利益を生み続けてくれます。一方Bさんは37歳から同様の貯蓄と運用を開始し、65歳まで継続すると同じく約1,000万円の資産が手に入ります。しかしAさんの貯蓄期間は12年なのに対してBさんは29年と2倍以上の開きがあります。AさんはBさんの半分以下の金額の投資で65歳時にほぼ同額の金額を手にするのです。

4%の利回りは現状かなり難しいかもしれませんが、Aさんの例で考えると、まだ若く、親も現役で仕事をしている年齢で、冒険も可能です。安定した貯蓄と利回りの高い投資の配分を考えてチャレンジする事が可能な年齢です。34歳からも同額の貯蓄を継続すれば、65歳までの総額は利子分を考慮しなくても20万円×31年=620万円となり、あわせて約1,600円以上の老後の資金が得られます。一方Bさんが貯蓄する年代は子供の教育資金も必要で、その後は自分たちの老後の資金の準備をしなければなりません。リスクの高い投資は難しい年齢です。つまり利回り高の如何にかかわらず、若い頃からの投資が重要な事がわかります。表の方は運用率を3%にしたものです。Aさんは65歳に1,000万円受け取るために積立期間を15年にしています。

(C)佐藤章子

(C)佐藤章子

無駄を省いた分で投資の資金を - 節約と運用は表裏一体で!

運用の価値時間の事例の年間20万円を利回りの高い運用先に投資するのはリスクが大きいと感じるかもしれません。しかし、知らず知らずに消費していた金額であれば、リスクが高くても問題ないはずです。例えば、街中に自動販売機はどれ程あるでしょうか。私が住んでいる場所は駅近くなので数10mごとにある気がします。それだけ利用されているということでしょう。下記の表のように毎日1本消費すると、22歳から65歳まで200万円にもなります。飲んだつもりになって貯蓄すると運用次第ではびっくりする金額になります。

タバコ代は禁煙すればさらに格好の投資資源となります。毎日1箱消費すると65歳までに700万円も使うことになります。ペットボトル飲料と合わせれば1,000万円近くにもなります。ペットボトル飲料の表のように3%で運用すると、65歳時には1,500万円を越える金額が手元に残るでしょう。

苦労して禁煙しても、いつのまにか他の消費に消えてしまっては意味がありません。大切なことは節約した分をしっかりと貯蓄や投資などの資金に振り分けることです。ペットボトル飲料やタバコ以外にもコーヒーなど、何となく日々消費してしまっているものがいろいろあると思います。毎月決まった金額を貯蓄することをベースに、自分なりの無駄を見直しして、その分の金額を別途貯蓄してみてください。通帳などもベースの貯蓄分と別にすると良いと思います。別に分けた通帳の金額を使って利回りの良い投資先で運用するのも良いでしょう。リスクはありますが、ベースの貯蓄はしっかりしている前提ですので、消費したつもり貯蓄のご褒美に運用を試みても良いと思います。どう配分するかは人生設計次第です。

(C)佐藤章子

(C)佐藤章子

生活スタイルもフローからストックへ - 時代に見合った新しい価値観を見出す事が大切

現代は消費生活が膨張しすぎています。私は住宅の仕事をしてきましたが、1人用アパートの間取りは次第に贅沢なものになってきました。私自身、就職して親から独立する時にアパートをいろいろ見てきましたが、風呂なし、トイレ共用が普通でした。中にはキッチンも共用というところもありました。部屋の広さも3畳というものもあり、4.5畳が普通、6畳は贅沢なイメージでした。私が借りたのは6畳キッチン付きで風呂やトイレはありませんでした。

今は全て揃っていないと借り手はないでしょう。しかも昔のバスとトイレがセットになったタイプが敬遠され、トイレが別でないと借り手に敬遠されます。空室が増えた大家さんに建て替えた方が良いか、よく相談されました。後戻りはなかなか難しいですが、シェアハウスやルームシェアなど、新しい形の暮らし方も登場しています。使い捨てのフロー時代から長く遣い続けるストック時代への転換のために、政府はいろいろ策を凝らしてきましたが、国民の意識が変わらないと、なかなか思い通りにはいきません。物質的な豊かさから精神的な豊かさを追求して、時代に合った生活スタイルを作り上げていくのは可能だと思います。自分なりの生活スタイルを見出して、それに見合った節約や貯蓄を考えていけば、将来は明るく感じられないでしょうか。

<著者プロフィール>

佐藤 章子

一級建築士・ファイナンシャルプランナー(CFP(R)・一級FP技能士)。建設会社や住宅メーカーで設計・商品開発・不動産活用などに従事。2001年に住まいと暮らしのコンサルタント事務所を開業。技術面・経済面双方から住まいづくりをアドバイス。