"茶の湯"の所作や心得、教養を学び、また癒しを得ることで、仕事の質の向上を目指すビジネス茶道の第一人者である水上繭子。本連載では、水上が各界のキーパーソンを茶室に招き、仕事に対する姿勢・考え方について聞いていく。

聞き手の水上繭子(左)とエルビオリス社 アカンティス研究所 代表 ブノア・アルティクロウ氏
通訳:鶴田満美子

第2回は、政府公認のABマークを取得する植物ハーブ飲料「ジェモレメディ」を販売するフランスの企業 エルビオリス社のブノア・アルティクロウ氏のインタビューをお伝えする。

神社や茶の湯から感じた日本の自然への想い

「日本の神社や茶の湯には、自然に対する日本人のスピリットが宿っている」とアルティクロウ氏は語る

南フランスでジェモセラピーに使用する植物の採取や有機栽培を行っているエルビオリス社。アルティクロウ氏は、より自然で体に優しい成分を使うことで、自然なエネルギーを体に取り入れようと考え、自然素材にこだわった製品開発を行っている。その成果は、同社製品が「全ての工程で、添加物などを一切含まない製品」であることを示す、ABマークを取得していることにも表れているだろう。

自然に対する深い敬意を持つアルティクロウ氏に、実際に今回は茶の湯を体験していただいた。同氏は茶の湯から、茶席が備える"気"のようなもの、そしてお茶に対する日本人の心を感じたという。そして、仕事を行ううえで大切にしているモットーを2つあげた。それは、「自然を尊敬すること」「人間を大切にすること」だ。お茶とジェモには、ある意味で魂に共通した部分がある。それは自然の恵みによって、人に"健康"と"平和"を与えるという点ではないだろうか。

アルティクロウ氏は、日本でのビジネスの合間に、神社などのスポットを見学したという。同氏が感銘を受けたのは、これが人間によって建てられたものだということ。日本は、自然を敬い、とても大切に扱っていると感じたそうだ。自然への敬意という点で、エルビオリス社の考え方とつながるものがあると語る。

茶の湯を体験するアルティクロウ氏

すべての国の人がもっている自然への敬意と愛情

茶席を終えたところで、アルティクロウ氏に1点の丸い木の香合を見せる水上。これは樹齢7000年の縄文杉で有名な、あの屋久島の杉を使ったもの。屋久島でガイドを務める「森人」はこう語っていた。「木には神様が住んでいる。だから人が勝手に切ることは許されない。伐採する前には儀式を執り行い、自然への感謝を伝えなければいけない」。貴い自然の力に深い敬意を持つことが、古くからの日本の教えだ。

こちらが、屋久島の杉を使った丸い香合

アルティクロウ氏は、森人の語る言葉に共感を述べるとともに、フランスでも同様に採集の前に祈りを捧げる風習があると伝える。自然への敬意と愛情は、日本人であってもフランス人であっても、人が本来備えているスピリットなのかもしれない。人間は科学の力を応用し、ビジネスを発展させてきた。だが最後に人を救うのも、きっと自然の力なのだ。

今回の来日では、研究所を設立したジェラルド・ドゥゼル博士や、みなさんのご家族もいらっしゃっていた

聞き手 : 水上 繭子(みずかみ まゆこ)


大学時代に表千家茶道の師と出会い、入門。京都家元での短期講習会に参加し、茶道の奥深さに惹かれ、政府系金融機関OECF(海外経済協力基金)勤務や結婚、子育ての中で、茶の湯の稽古を継続する。その後、茶道の豊かさ、楽しさ、奥深さを伝えるべく、茶道教室を主宰。近年はコミュニケーション力や新しい発想力を養う人間力道場としての茶道を提案している。