最近頻繁に耳にする「フィンテック」ですが、知っているようで実は今一つよくわかっていないという人も多いようです。「今更聞けない」となる前に、今回は、これだけは知っておきたいフィンテックの基本を解説します。

決済や資金調達で大きな変化をもたらした

「フィンテック:Fintech」とは、「ファイナンス:finance(金融)」「テクノロジー:technology(技術)」を組み合わせた造語「ファイナンス・テクノロジー」の略称で、IT技術を使った金融サービスを意味します。

「IT技術を使った金融サービス……って何だか難しそうなことを言っているな」と思ったかもしれませんね。でも実は既に私たちの身近にあるんですよ。

例えばクレジットカード決済。従来はレジの横に置いてある機械で読み込ませていたものが、スマートフォンやタブレットなどのモバイル端末と専用アプリ、そして小型のカードリーダー(イヤホンジャックに差し込むだけの小さなものも!)があれば決済ができてしまうのです。

これにより店舗側は非常に簡単にPOSシステム(Point Of Sales System/販売時点情報管理システム)を導入することができます。すると、これまで現金決済のみであったお店などでもクレジットカード決済をできるようになるわけです。

私たち顧客側としては大金を持ち歩かなくても済みますし、現金決済のためポイントなどがつかないのがもったいないと思っていた店舗でクレジットカードを利用できるようになれば、ポイントやマイルを貯める機会も増えるなど、利便性が高まります。

フィンテックはクラウドファンディングなどの資金調達方法にも大きな影響を与えている(画像はイメージ)

また、資金調達方法でもフィンテックは大きな影響を与えました。「クラウドファンディング:Crowdfunding」という言葉は最近よく耳にしますよね。これも「クラウド:crowd(群衆)」「ファンディング:funding(資金調達)」を組み合わせた造語で、資金を金融機関ではなく群衆から調達するということです。

金融機関からの融資は手続きも大変ですし、担保なども必要なのでハードルも高いですが、インターネットを使って「こういう目的のために資金を募っている」と不特定多数の人たちに呼びかけることで、コストをかけずに賛同者(投資家)から資金を調達するのです。集まった資金で目的の事業を行い、投資家へ報酬(利子、配当、株式など)を支払うという仕組みです。

投資家も少額で良いので賛同しやすく、双方にメリットがあるといえます。最近では、7月に発生した九州豪雨の災害支援活動費用調達のためのプロジェクトがクラウドファンディングで資金を募っていました(なお、寄附を目的としたものは報酬を受け取りません)。

このように、従来は金融機関を通じて決められた枠組みの中で行ってきた金融サービスの形を変えたことが、フィンテックの功績といえるでしょう。

参加しやすい分、リスク管理も必要

今後も更に広い場面でフィンテックによる金融サービスの革新が進んでいくでしょう。したがって皆さんのように若い世代の人たちは、今よりもインターネット、モバイルなどによるサービスを使うことになるはずです。もちろん若い人たちはインターネット、モバイルなどに対しての拒否反応は少ないですが、逆に簡単、手軽であるゆえ、リスク管理をしっかりしていくことが重要です。

例えば、クラウドファンディングによる詐欺や、事業計画の頓挫などもありますから、投資する場合は、企画をしっかり見極める必要があります。個人情報なども今以上に管理していくべきでしょう。

またクレジットカードを使う場面が増えたものの、キャッシュのやりとりがないとお金を使った気がしないため、支出の管理ができなくなっては本末転倒です。セキュリティや金銭感覚に対する意識をしっかり持つことが、フィンテックによる金融サービスを上手に活用するポイントです。

今回はフィンテックの概要について触れましたが、次回は私たちが直接使うサービスとなる家計管理や資産運用とフィンテックについて解説します。

※画像は本文とは関係ありません

執筆者プロフィール : 鈴木暁子

ファイナンシャル・プランナー(CFP認定者)。キャリアコンサルタント。FPオフィス Next Yourself代表。
「多様化するライフスタイルに応じたライフプラン・マネープランづくりが重要」という視点で、企業、自治体、大学オープンカレッジなどで年間約50回のセミナー・講演を行うほか、新聞、雑誌・WEBなどで精力的に情報発信をしている。
「お金はいい使い方をしてこそ活きる」をモットーに、これまでに数百件の家計診断のほか、 個人コンサルティングも行っている。資産運用、ライフプランニングを得意とし、特に共働き夫婦のライフプランニング、リタイアメントプランニング、高齢期のお金と住まい、相続設計に力を入れている。著書に『100歳まで安心して暮らす生活設計』(実業之日本社)。