生活費を見直して節約したいと思うものの、どこから手をつけて良いのかわからない……と思ったことはありませんか? 多くの人はそこで挫折をしてしまうのです。衝動買いをしたとか、明らかな無駄遣いをしたという意識があればともかく、ふだんの生活費でどこか節約できるものがあるのかはなかなか見つけにくいものです。

まずは使ったお金の仕分けから

節約を実践しようとしたときに大切なことは、単に「いくら節約する」ではなく、「何の費目で、いくら節約する」という目標にすることです。大抵「毎月生活費を5,000円節約する」と目標を立てると思うのですが、これでは漠然としすぎており、それこそが「手をつけるところがわからない」原因なのです。

では、どうやって見つければ良いでしょう。そのためにはまず使ったお金の仕分けをしましょう。

■仕分け項目
(1)食費
(2)住居費(家賃、駐車場代など)
(3)水道光熱費
(4)家具・家事用品費
(5)被服・履物費 
(6)保健医療費(診療・治療費、薬代など) 
(7)交通・通信費 
(8)教育費(学費、テキストなど) 
(9)教養娯楽費(TV有料契約、新聞・雑誌、旅行代など) 
(10)その他(理美容費、化粧品、たばこ代、交際費、仕送り(自宅に入れる食費含む)など)

買い物をしたときはレシートを費目ごとに分けておきます。引き落としされるものはメモに明細と金額を書いて仕分けすると良いでしょう。

消費傾向を把握する

月末に、費目ごとに分けたレシートの金額を合計し、表に記載していきます。参考までに示しているのは、総務省の家計調査における34歳までの勤労者世帯の消費支出の平均金額です。

消費支出の動向(単位:円)

参考の金額とみなさんが記入した金額は当然違っています。参考値はあくまで調査した中での平均値なので、この金額自体と比較する必要はありません。この表で見てほしいのは「消費傾向」と「使途不明金がありそうか」です。

消費傾向というのは、「それぞれの費目が全体の支出のどれくらいを占めているか」ということで、お金のかけ方が見えてきます。例えば食費などは、大体どの世代で見ても25%前後となりますが、年代や家族構成で違いが明確な費目もあります。

みなさんの家計でそれぞれの費目の割合と調査の平均値を比較し、かい離が大きいものや特徴的なことが見えたら、それがみなさんの家計の消費傾向(お金の使い方)なのです。

この時点で支出割合が小さな費目というのは、そもそも節約ののりしろはあまりありません。つまり支出割合の小さい費目で節約しようとするよりは、支出割合が大きい費目の方が節約のターゲットにしやすいといえます。これでどこから手をつければ良いかがわかりますね。

また、生活費として引き出した金額と、表の合計が合わないということもよくあります。表で合計したものは「レシートがある」「記憶にある」ものを合計していますが、「レシートがない」「使った記憶もない」というものについては計上されません。これがいわゆる使途不明金です。差額が大きいほど無意識に使ったお金が多いということなので、ここも節約可能性のあるお金です。

ちなみに私はこれを「埋蔵金」と呼んでいますが、埋蔵金は探せばお宝(貯金)に換えることができるのです。

ケチと節約は違う

ただし、節約を心がけるときに大切なことがあります。何でもかんでも切り詰めるのが節約ではありません。それは単なるケチ。

調査結果と比べ、かい離している費目は節約ポイントではありますが、(お金を使っているということですから)みなさんにとってこだわりポイントでもあるのです。オシャレな人であれば被服費がかかっているかもしれません。しかし杓子定規に「ここは切り詰めなきゃ」としてしまうと、それは我慢になりかねません。

不思議なもので、こだわりポイントを確保できると、その他は多少我慢してもそれほど苦にはならないのです。これがいわゆる「メリハリのあるお金の使い方」というもの。自分の消費傾向やこだわりとしっかり向き合うことで、「これだけははずせない」「ここは我慢してもいいか」とお金の使い方の優先順位ができるのです。

初めての人はちょっと面倒だなと思うかもしれませんが、習慣になるとそれほど大変ではなくなります。メリハリのあるお金の使い方をしながら、賢く埋蔵金を探してみましょう。

執筆者プロフィール : 鈴木暁子

ファイナンシャル・プランナー(CFP認定者)。キャリアコンサルタント。FPオフィス Next Yourself代表。
「多様化するライフスタイルに応じたライフプラン・マネープランづくりが重要」という視点で、企業、自治体、大学オープンカレッジなどで年間約50回のセミナー・講演を行うほか、新聞、雑誌・WEBなどで精力的に情報発信をしている。
「お金はいい使い方をしてこそ活きる」をモットーに、これまでに数百件の家計診断のほか、 個人コンサルティングも行っている。資産運用、ライフプランニングを得意とし、特に共働き夫婦のライフプランニング、リタイアメントプランニング、高齢期のお金と住まい、相続設計に力を入れている。著書に『100歳まで安心して暮らす生活設計』(実業之日本社)。