連載『馬養雅子の「マネー道場」』では、「普段気になっているんだけど、本当のところはどうなの?」と読者の方々が思っているであろう疑問に対し、金融商品や資産運用などに関する記事を新聞・雑誌等に多数執筆しているファイナンシャル・プランナーの馬養雅子氏が、"一歩踏み込んだマネー知識"を提供します。


「NISA(少額投資非課税制度)」は、投資初心者にもベテラン投資家にもメリットのある仕組みなので、ぜひとも利用しましょう。

NISAは、税金に関する制度です。

株や投資信託は、買ったときより高い値段で売れば売却益が得られ、保有している間は配当や分配金が受け取れます。こうした、売却益や配当・分配金には税金がかかります。税率は、2013年末までは10%でしたが、2014年から20%になりました(※)。税率が上がると、同じだけの利益を得ても投資家の手取り額は減ってしまいます。例えば、1万円の利益に対して、これまでは手取り9000円だったものが、8000円になってしまうわけです。

※実際には復興特別所得税を含むので、10.147%が20.315%になります

そこで、NISAが導入されました。

NISAとは、証券会社や銀行などにNISA専用の口座を開設し、そこで株や投資信託を買った場合、5年間は売却益や配当・分配金に税金がかからない、という仕組みです。NISA口座であれば、1万円の利益があれば、手取額も1万円になるわけですから、メリットは大きいといえます。

非課税になるのは1年間(1月1日~12月31日)に100万円まで。もちろん、100万円より少ない金額でも利用できます。例えば、投資信託を毎月1万円ずつ積立で買う、という場合でもOKです。

今のところ、NISAで新規に株や投資信託を買ったり、NISA用口座を開設したりできるのは、2023年までです。買った株や投資信託はいつでも売却できます。

非課税期間の5年が終わるところで保有している株や投資信託は、翌年の非課税枠に移すことができるので、一度買ったものは、最長で10年間保有することができます。

NISA口座は、日本に住んでいる20歳以上の人なら、投資経験や資産額などにかかわりなく、開設することができます。現在は、1人につき1金融機関に1口座しか作れませんが、来年以降は、1年ごとに金融機関を変えることもできるようになる予定です。

NISAを利用する上での注意点は?

NISAを利用すれば、誰でにでも非課税のメリットがあるわけですが、注意しなければいけない点もいくつかあります。

  • NISAの対象となる金融商品は、上場株式、公募株式投資信託、ETF(上場投資信託)、REIT(不動産投資信託)。このうち、銀行が扱っているのは公募株式投資信託で、それ以外のものを利用したい場合は、証券会社でNISA口座を開設する必要があります。

  • NISAでない口座で保有してた株や投資信託を、NISA口座に移すことはできません。NISAで非課税になるのはNISA口座で新規に購入したものだけです。

  • NISAで非課税のメリットを活かせるのは、利益が出たときだけです。売却して損失が生じた場合は、その損失はなかったものとみなされます。NISA以外の口座では、同じ年に利益と損失があった場合、それを相殺することで利益にかかる税金を少なくする「損益通算」ができますが、NISA口座の中や、NISA口座とそれ以外の口座との間では損益通算はできません。

  • NISAで株の配当を非課税で受け取るためには、配当を「株式比例配分方式」で受け取る必要があります。これは、NISA口座を開設した証券会社で手続きできます。

そのほか細かい注意点があったり、不便な点もあったりしますが、それよりも非課税のメリットのほうがずっと大きいといえます。投資初心者はもちろん、投資経験のない人も、NISAをきっかけに投資を始めてみてください。

執筆者プロフィール : 馬養 雅子(まがい まさこ)

ファイナンシャルプランナー(CFP認定者)、一級ファイナンシャルプランニング技能士。金融商品や資産運用などに関する記事を新聞・雑誌等に多数執筆しているほか、マネーに関する講演や個人向けコンサルティングを行っている。「図解 初めての人の株入門」(西東社)、「キチンとわかる外国為替と外貨取引」(TAC出版)など著書多数。新著『明日が心配になったら読むお金の話』(中経出版)も発売された。また、リニューアルされたホームページのURLは以下の通りとなっている。

http://www.m-magai.net/