操作画面が一新! 検索機能を強化した、定番データベース作成ソフト
【2009年3月号掲載】


「FileMaker Pro(ファイルメーカープロ)」は、ワープロ感覚で誰にでも扱いやすく、それでいて企業の業務管理データベースとしても使える十分な機能を持ったデータベース作成ソフトだ。メジャーバージョンアップを重ねバージョン10となった本製品では、インターフェイスを一新し、よりMacらしい使い勝手を実現した。機能面では、検索履歴の保存など使いやすさの向上が図られると同時に、システム開発者を納得させるようなパワフルな新機能が数多く搭載された。


スペック

[発売元] ファイルメーカー [価格] 3万9,900円(FileMaker Pro 10 Advanced:6万900円、FileMaker Server 10:13万4,400円、FileMaker Server 10 Advanced:39万9,000円) [OS] Mac OS X 10.4.11以上 [メモリ] 512MB以上 [備考] PowerPC G4/G5、またはインテルCPUを搭載したMac [掲載号] 「Mac Fan」2009年3月号

OVERVIEW

カード型データベース作成ソフトとして定評のあるファイルメーカーも、ついに本作でバージョン10となった。本バージョンでは、長年受け継いできたインターフェイスを一新。これまでは左側についていたステータスバーが、ウインドウ上側に移動し「ステータスツールバー」という名称になった。このステータスツールバーは、メールやSafariなどのMac OS X純正アプリケーションのように、表示するボタンをカスタマイズすることもできるようになっている。

(1) ステータスバーが上部に移動しカスタマイズが可能に
ステータスバーが上になり、ステータスツールバーへと進化した。ステータスツールバーを[コントロール]キー+クリックすれば、配置するボタンをカスタマイズできる

新しくなったのはインターフェイスだけではない。検索履歴の保存やユーザの操作をきっかけにスクリプトを実行する「スクリプトトリガ」、データの集計結果を表示する「集計レポート」画面からでも直接データの修正ができる「ダイナミックレポート」などの新機能が加わったほか、メールソフトを起動せずにファイルメーカー自身でメール送信が行えるようになるなどの機能強化が図られた。

テンプレートも一新されており、「家計簿」「医療記録」「従業員情報」などグラフィカルなものが30種類用意されている。

FOCUS ON

(2) 検索条件の再利用が可能に
検索条件を保存していつでも呼び出せるようになった。さらに検索の履歴も残るようになり、何度も入力する手間が省ける

新機能の中でも特に重宝しそうなのは、検索機能の強化だ。よく使う検索内容を保存しておき、すぐに呼び出して利用できるようになったほか、最近使った検索内容が履歴として表示される。

以前のバージョンでも、スクリプトを駆使すれば過去の検索内容を再利用することができたが、スキルを必要とする敷居の高いものだった。そうしたスキルを必要とせず、また面倒な設定なしに簡単に再検索できるようになったことは、あらゆるレベルのユーザにとって非常にありがたい進化だ。

保存した検索条件は保存した順にリストに並んでいくが、ユーザが並び順を変更することもできるなど、細かいところまで行き届いているという印象を受ける。

また、「レポート作成」機能の進化もありがたい。これまで、表示された集計レポートは閲覧やプリントアウトができるだけでデータの修正ができないのが難点だったが、本バージョンではレポート画面で直接データの修正ができるようになり、元のデータにすぐに反映されるようになった。複数の画面を行ったり来たりする手間がなくなり、操作時間が短縮できる。

(3) データの編集が可能なレポート機能
これまで集計レポート画面ではデータの変更ができなかったが、10からはリアルタイムにデータを書き換えて反映できるようになった

そして、スクリプトを扱えるユーザにとってうれしいのがスクリプトトリガ機能の実装だ。この機能を使えば、フィールドの値を変更したときや、フィールドからカーソルが移動したときなどに、設定したスクリプトを自動的に動くようにすることができる。

(4) スクリプトトリガを実装
要望の多かったスクリプトトリガがようやく実装。フィールドの値を変更したときなど、さまざまなタイミングで特定の処理を実行させることができるようになった

これまでスクリプトの実行は、ボタンを押すなどユーザの自発的アクションでしか行えなかったが、データベースの状況を見て自動的にスクリプトを走らせることができるようになった。この機能をうまく活用することで、ファイルメーカーで作成したシステムは、より柔軟な運用ができるようになるだろう。

(5) Bentoからデータベース作成が可能に
Microsoft Excel 2008の標準保存形式「.xlsx」ファイルや、同社のパーソネルデータベースソフト「Bento 2」の読み込みをサポート。Bentoでデータベース作成を始めた人でもスムーズにステップアップできる

AFTER REVIEW

既存ユーザにとっては前バージョンとの互換性も気になるところだろう。大幅な機能強化が行われている本バージョンだが、拡張子は「.fp7」のままで変更はない。メーカー側ではバージョン9との互換性以外は保証していないが、筆者が使用した限りでは、新機能を使わなければそれ以前のバージョンでも問題なく開くことができていた。そういった面でも、充分に検討に値するバージョンアップといえるだろう。