「難しさ」を払拭する簡単操作を実現した
低価格なカラーキャリブレータが登場! 【2008年7月号掲載】


カラープリンタの性能が年々向上し、モニタの品質もそれに合わせて向上しているにも関わらず、"モニタと印刷の色が合わない"という質問が絶えない。これは、モニタとプリンタのカラーマッチングがとれていないことが原因であり、それさえしっかりやっておけば色は合わせられるのだ。そのカラーマッチングを行う機器が、エックスライト社から発売される「カラーモンキーフォト」だ。1台で環境光からモニタ、用紙に合わせたプリンタのカラーマッチングが可能なオールインワンタイプのカラーキャリブレータ。CRTはもちろんのこと、液晶パネルやプロジェクタまで対応しており、これ1台あればあらゆる環境下でのカラーマッチングが可能となる。


スペック

[発売元] エックスライト [価格] オープンプライス [実勢価格] 7万円前後 [OS] Mac OS X 10.4以上 [メモリ] 512MB以上 [HD] 300MB以上 [インターフェイス] USB2.0 [備考] PowerPC G4/G5、またはインテル製CPU搭載のMacに対応 [掲載号] 「Mac Fan」2008年7月号

OVERVIEW

本製品は、モニタとプリンタが出力する色を測定し、基準となるカラープロファイルを作成することで、モニタで表示する色とプリンタで出力する色とを正確に合わせる(カラーマッチングする)ためのツールだ。 カラーマッチングと聞くと何かと難しいイメージを持つかもしれないが、本製品の使い方は至って簡単だ。付属ソフトをインストール後、コンパクトな分光測定器をMacに接続したら、あとは付属ソフトのウィザード画面に従っていけばいい。もし途中で操作がわからなくなっても、操作方法を動画で解説したQuickTimeムービーを見ればすぐに理解できる、という親切設計だ。

(1) 手のひらサイズの分光測定器
分光測定器は、丸みを帯びた正方形の形をしたコンパクトなデザイン。左右側面に大型のダイヤルがある

(2) ダイヤルでモード切り替え
底面に測色センサが搭載されている。ダイヤルを回転させることで、モニタやプリンタのキャリブレーション、環境光の測定といった各モードを切り替える

付属ソフトのメインメニューには、モニタのみのキャリブレーション、プリンタのみのキャリブレーション、そして両方同時に行うためのモードが用意されている。モニタのキャリブレーションは、ソフトウェアに従って分光測定器をディスプレイ上に設置すれば5分程度で終了する。

(3) ウィザード形式で操作
ウィザード形式で手順が指示される。それに従って操作すればカラーマッチングが行える仕組みだ。ダイヤルの表示は本体と連動しており、正しく設定されないと次のステップに行けないように工夫されている

(4) モニタからぶらさげて測色
モニタのキャリブレーションを行うには、測色用のケースに入れて、モニタにぶら下げて計測する。測定器の取り付けのタイミングや位置はソフトウェアが指示してくれる

(5) プリンタのマッチングも簡単
プリンタのカラーキャリブレーションのためには、プリンタで印刷したカラーパッチを分光測定器で読み込む

また、プリンタのキャリブレーションは、ターゲットとなるカラーチャートをプリントアウトし、それを分光測定器で1色ずつ測色していく。最初は機械を動かす速度がつかみにくいが、慣れてしまえば楽に行える。

Mac対応のカラーキャリブレーションツールとしては、エックスライトの「i1シリーズ」やソリューションシステムズの「スパイダー」が有名だが、この中でモニタとプリンタ両方のキャリブレーションを行える製品は10万円を超える。その点、本製品はその両方を1台で実現し、環境光やスポットカラーの測定、カスタムカラーパレットの作成機能、プリンタプロファイルの自動作成機能も搭載。それでいて、実売価格7万円を切るお手頃な価格を実現している。

FOCUS ON

実際に本製品を使ってモニタとプリンタのキャリブレーションを行ってみたところ、性能は普段筆者が常用している「i1」とほぼ同じ結果が出た。また、筆者はセカンドモニタとメインモニタは別の会社のものを使っており、i1ではなかなか両方の色が合わなかったのが、本製品を使うとほぼ同じ発色に合わせられたのが驚きだった。

初心者でも迷うことなく使えるように、操作を簡単にするための工夫が随所に見られる。例えば、キャリブレータは基準合わせとして白色点調整を行う必要があり、このため白色のパレットが別部品として添付しているが、カラーモンキーの場合は本体内部にこのパレットを内蔵しており、本体のダイヤルを回すだけで白色点調整を行える。

(6) 多彩なディスプレイに対応
ディスプレイのタイプを自動的に検出後、さらにどのようなタイプかを選べる。詳細モードでは、ディスプレイの白色点を指定できる

また、カラーパッチを印刷する際に、本製品ではi1のように百を超える膨大な数のパッチ(色見本)を読み込む必要がなく、5列のチャートを1列ずつ読み込むだけという簡単さ。パッチの数が少ないと、調整の精度の信頼性が気になるかもしれないが、最初に読み込ませたカラーパッチの結果を元に調整パッチを再度生成し、再度読み込ませるという方法を採用することで精度を高め、結果的にパッチの読み取り数を少なくしている。

さらに、布や印刷物などの物体の色を測定してLAB値として専用ソフトウェアに記憶できたり、付属ソフトで読み込んだ写真専用のカラーパッチを生成し、Adobe CSシリーズで使用できる「スウォッチ」を作成するなど、セミプロ/ハイアマにも有用な機能も備えている。

(7) プロ向けアプリも簡単設定可能
測色終了後、Adobe CSとQuarkXPress用に印刷用プロファイルを設定でき、それらのアプリケーションでプリンタプロファイルが有効になる

ソフトウェアが目標とする色温度は5000Kもしくは6500Kに固定されていたり、細かな輝度調節が行えなかったりと、柔軟な設定を行いたいプロには若干物足りない部分はあるのは確かだ。しかし、それらのプロ向けの機能を切り捨てることで、カラーキャリブレーションにまつわる「難しい」というイメージを払拭し、実際に初心者にも手軽に使えるソリューションを実現したという点で本製品の持つ意味は大変大きいだろう。

AFTER REVIEW

物体の色を測定して、LAB値として専用ソフトウェアに記憶できる機能が便利。撮影後に記憶を頼りに画像補正をする必要がなく、後日、しっかりと色調整が行える。狂いがあると問題となる企業のロゴ色や、カタログパンフレット用の撮影など、カメラマンにとってうれしい機能だ。デザイナー向きのカラーパレット作成ツール「カラーモンキーデザイン」(実売7万円前後)も発売されている。