ドラマの既婚女性は「専業主婦」か「パート主婦」

前クールのドラマ、夫婦ものが目立ちましたね。『○○妻』『残念な夫。』などなど。『○○妻』は人気ニュースキャスターの夫を支える専業主婦の妻、 そして『残念な夫。』も専業主婦Xサラリーマンの家庭。子どもが生まれたのに、まったく生活を変えようとしないイケメンで、なんちゃってイクメンの夫がでてくる「産後クライシスもの」です。

日本のドラマに出てくる既婚女性はやはりまだまだ「専業主婦」か「パート主婦」ですね。そして後者は圧倒的に不倫ものが多いような……。しかし、専業主婦が「当たり前」と思っているうちに、今や「リスクに満ちた選択」となっているのです。『サザエさん』も『クレヨンしんちゃん』のママも安穏としてはいられないデータが明らかになりました。

夫が働けなくなったら……?

ドラマを見ながら「自分は平凡な家庭だわー」と思っている奥さま……夫が「病気」や「リストラ」などで「長期就業不能」になったら……どうしますか?

ライフネット生命の調査によれば「夫が長期就業不能になった場合」に「半年しか暮らせない」と答えた妻が6割でした。

■夫が長期就業不能になったら……家族はどのくらいの期間生活できる?

「半年しか生活できない」が6割半、「1年以内」ではなんと8割半!
「夫が働けなくなると1週間しか生活できない」家庭も1割
「夫が就業不能になっても2年以上生活できる」家庭は1割半にとどまる

じゃあ、もしもの場合どうやって生活をしていくのか?

■もしも夫が長期就業不能になったら……どうやって生活する?

1位「貯金を取り崩す」
2位「自分の働く時間を増やす」
3位「趣味・娯楽費を節約」
主婦の1割弱が、クルマや自宅といった資産の売却を決断!

主婦1,000人へのアンケートですが、彼女たちは「配偶者がいて、かつ住宅ローンを組んでいる(自分名義のみは除く)20~49歳の女性」です。つまり、はた目には「持ち家があって、夫はしっかり働いている、幸福な家庭」といううらやましい存在でしょう。2位に「自分が働く時間を増やす」となっているので、多分「専業主婦→パート」という、日本のごく一般的な妻コースをたどってきた女性だと思います。

「もと専業主婦(今はパート主婦)」か「いつかは専業主婦」

女性活躍推進とは言われていますが、まだまだ日本は実は「専業主婦の国」なのです。あれだけ国が「女性活躍推進」と旗をふっても、どの年代でも正社員共働き夫婦は15%ぐらいです。分析すると、夫と同程度の収入がある大企業の社員なんていう妻は、まだまだマイノリティです。

今どきの女子大生は「就業継続したい」が5割ぐらいなのですが、8割が5歳時点で専業主婦だった母親の子どもなので、「働くことは当たり前」とは思っていません。「好きな仕事をしなくてはいけない」「輝かなければいけない」と思うような教育をされておりますが、その前に「女性が働くことは当たり前」という前提がない。だから「希望の仕事とは違う」と絶望して辞めてしまったりします。お金のための淡々と働く……というのは、どうも「輝く」ことではないので、教育現場では推奨されていないらしい。

かくして、日本は「もと専業主婦(今はパート主婦)」と「いつかは専業主婦」の国なのです。しかし専業主婦には二大リスクがあります。夫のリストラ、会社の倒産、病気による長期就業不能など離婚(3組に1組が離婚。そのうち子どもがいての離婚が6割。離婚の平均年齢は33歳前後と若く、養育費をもらっていない人が8割)とまあ、このような事態に備え「バッファ」をとりたい。つまりリスクヘッジとして貯蓄などをしたいところなのですが、子育ての費用はかかるし、家のローンもあるしで、なかなか難しい。

「じゃあ、もっと妻が働けば」という方も多いと思いますが、日本では一度女性が子育てで仕事を辞める=「稼げない人になる」ということです。「女性が一度無業になると年収300万円以上を回復できる人は10%」というデータもありました。よほどの専門性があって、しっかり収入になる資格などを持っていない限り、子育て中の一時期の短期間と思っても、一回仕事を手放すリスクは大きいのです。

男性にも知ってほしい、専業主婦のリスク

男性はこの時代いかに生きるべきなのか? そして、男性も妻を安易に専業主婦にしてしまうことのリスクを知ってほしいのです。テレビで「男性が一億円生涯収入をあげる方法」というのをやっていましたが、答えは「妻にしっかりと働いてもらうこと」です。

正社員だった女性が子育てで無業になり復帰して正社員に戻れる確率は25%。「事務職正社員→専業主婦→パート主婦」というコースをたどるだけで1億5千万円以上の損失。さらに「正社員総合職→専業主婦→パート主婦」だと2億円以上の損失です。妻にとっても夫にとっても、この家計の損失はかなり痛い。

サイボーグじゃないんだから、妻も夫も就業不能になるリスクはあるし、片方が稼ぐ、片方が家庭をやるという機能で分けていると、どちらかが倒れたときにリスクが高くなります。いざとなれば、お互いにどちらもできるという風にしておくとリスクが低くなります。

働く妻を応援すればするほど、男性は楽になる

妻に働いてほしければ、夫は早く家に帰り、しっかり家事、子育てに参戦しないといけません。稼ぐ人が2人、主婦がいて主夫がいて、という家庭なら、どちらに何があっても子育ても仕事も大丈夫。夫が倒れたら収入が困る、妻が倒れたら子どもの靴下もどこにあるかわからない……そういったリスクが回避されます。

主婦雑誌のアンケートによると、仕事を辞めた妻の9割が「もう一回働きたい」と思うのです。しかしこれがなかなか大変です。ブランクが長ければ長いほど厳しい再就職となります。

多くの「再活中」の主婦の方に話を聞きましたが、問題なのは「働く時間の確保」。みんな「主婦の時間」をそのままにして、働きたいと言う。そうなると「16時までの仕事ならありますが……」「えっ、うちは子どもが15時に帰るので、15時までの仕事がいいんです」というミスマッチが起きます。

このミスマッチを解消するのは家族の協力しかない。お母さんがパートに出ても、家族は相変わらず専業主婦のお母さんがいるときと同じように動いている。家内の業務フローが専業主婦フローのままなのです。この足かせがあると、妻の稼ぎはぐっと低くなります。

しかし、家族が協力して、家の中を『働くお母さんがいるフロー』に変えていくと、働く時間が確保できます。確保できるのが早ければ早いほど、仕事復帰も容易になります。パートではなく、正社員になる可能性もあります。そうなれば、夫は一人だけで一家を背負うプレッシャーから解放されます。働く妻を応援すればするほど、男は楽になるのです。

フランスの男性は日本よりはマシですが、それほど家事をやっているわけではない。しかし夫婦で子育てを楽しみ、妻としっかりデートしたり、時には花など買って帰ってご機嫌をとったり。女性をいい気分にさせるのがうまいのです。これだけのことで、彼らは『男が一人で稼ぐ』という重荷から解放されています。フランスの男性たちはすごく楽しそうでしたよ。それを考えたら花なんか安いものじゃないか、と思うのです。

<著者プロフィール>
白河桃子(しらかわとうこ)
少子化ジャーナリスト、作家。相模女子大客員教授。経産省「女性が輝く社会のあり方委員会」委員。山田昌弘中央大学教授とともに、2008年度流行語大賞にノミネートされた「婚活(結婚活動)」を提唱し、共著『婚活時代』(ディスカバー21)がある。婚活ブームのきっかけを作った。近著は、『「産む」と「働く」の教科書』(講談社)『格付けしあう女たち 女子カーストの実態』(ポプラ新書)、国立成育医療研究センター母性医療診療部不妊診療科医長の齊藤英和医師との共著で『妊活バイブル』(講談社)、『女子と就活――20代からの就・妊・婚講座』(中公新書ラクレ)、。『専業主婦になりたい女たち』(ポプラ新書)。

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話題の授業が一冊になりました。女の子の親は必見です。
『「産む」と「働く」の教科書』白河桃子・齊藤英和

※写真と本文は関係ありません