このコラムでは、少子化ジャーナリスト・ノンフィクション作家である著者が、マイナビで実施した結婚に関するアンケートをもとに、独自の切り口で、最近の恋愛・結婚のトレンドを解説していきます。

妻は夫のためには働かない

マイナビ読者にアンケートした結果、既婚男性会員233人の妻59%が働いていました。今、共働きと片働き家庭のどっちが多数派でしょう? 1992年から逆転し、2009年には共働き世帯995万、男性のみが働く世帯は831万世帯と、共働き家庭が多数派です。マイナビ会員の男性の妻の働く率は全国平均と同じぐらいでした。

でも、その共働きの実態はというと、バリバリ働いて夫と同じぐらい稼ぐ正社員の妻は、すべての年代においてわずか15%です。残念ながら、日本では「妻の年収は90万から110万」のところにかたまっています。つまり「パート」などで扶養範囲内で働いている人がとても多いのです。その理由は「子育て」で一回仕事を辞めると、正社員に戻れるのは4人に1人しかいないのです。

読者アンケートの妻たちが働く理由としては、夫は「経済的理由からだろう」と思っていて、妻たちは「1人で生きていきたい」「若々しくいたい」など「自分」中心の理由が多かったという、夫と妻の意識のズレが印象的でした。

妻たちは実は「夫のため」には働かないのですね。また「家計は夫が支える」という前提で結婚している人が多いので、「家族のために私も働こう」という動機も、よほど家計が火の車にならないと強くはない。

妻たちが働く理由は「わたしのため」、子どもがいる人は「子どものため」です。

「パート妻の働いたお金は教育費」にまわり、「正社員妻」の働いたお金は「贅沢品や旅行など余裕のある消費行動」などにまわるそうです。(中央大学教授山田昌弘さん)

妻が「年収100万のパート以上」に働けば、消費は活発になり、日本の経済の活性化にも貢献するはず。

妻を働かせるには「懺悔」が必要

しかし現実はなかなか難しい。

先日も悩める夫Aさん(39歳)の嘆きを聞きました。「妻を働きに出したいのに、ぜったいに働いてくれないんです。もうフランス語の教室とかフラワーなんちゃらとか、投資は十分にしている。とっくに教師の免除も持っているので、そろそろ回収したい」

しかしどんなに説得しても妻の答えはNo!

「だって、あなたは子育てを私にまかせっきりで、好き放題してきたじゃない。いまさら、養えないなんて、約束が違う!」

確かに…仕事仕事と言いつつ、飲んで午前様も多かった子どもが小さかった時代。妻は「早く帰ってきて」と言っていたけれど、「仕事してんだ!」と怒鳴った覚えも…休日も仕事で子どもとの約束もすっぽかした。やがて、妻は何も言わなくなったそうです。私はAさんの愚痴を聞いて、言いました。

「奥さんに家計のために働いてほしいなら、まず言うことがあると思うんけど…」

そう、それは「懺悔」ではないでしょうか?

「養うという約束を破ってごめんなさい。一番だいへんな時、子育てを手伝わなくてごめんなさい」

でも…とAさんは言います。

「子どもが小学校の高学年ぐらいのときから、会社も不況で仕事も減り、土日の接待ゴルフなんかもなくなったし。子どもをディズニーランドに連れて行ったり、結構いいパパだったと思うんですけど」

いやいや、それは「自分の都合のよいときに、子どもを構う」という、やらないよりはましですが、奥さんにとっては「員数外」の手なのです。

問題は「一番大変なとき」なのです。それはゼロ歳から3歳ぐらいまで。

いくら後から挽回しようとしても、人生で一番たいへんな時期、自分と子どもに背を向けていた夫のことを、妻は一生覚えているのです。

だから、その時期のことを思い出して、懺悔するしかない。

そこからが第一歩でしょう。

「パー活」も「ママCEO」も!

現実的にFPなどの方に話を聞くと、「子育て後の奥さんが、例え年間100万でも働けると、老後の二人の貯蓄がまったく違ってくる」ということです。

そして妻の側にも、実は働かねばならない事情があります。それは「65歳以上の単身世帯の女性の二人に1人が貧困ライン」という衝撃の事実!

65歳以上の人は97%ぐらいまで結婚しているので、一人暮らしの女性は「死別」か「離別」をして、今1人ということです。

つまり、夫は自分が死んだ後の妻の分まで稼いではくれていなかったのです。

自分の楽しい老後のためにも、妻は今こそ働いたほうがいいのです。

先日も「働きたいママ」を応援するイベントに6000人が集まったという話を企画サイドの方に聞きました。 夫の懺悔を待たずにも、「働きたい」という妻は増えているので、夫はそれをできる限り応援したほうがいいでしょう。

子育て期間のブランクがあると「パートにすらなれない」という人も多いので、パートへの就職活動を「パー活」と呼んでいる人もいます。

普通の就職がままならないなら、ネット店舗や自分のサロンなどを開設したいという人も多く、雑誌には「ママCEO」と紹介されていました。

主婦の起業は政府にも応援されていますが、ほとんどの女性たちが「月収10万」の壁を越えられません。しかしたまに才能があって、どんどんビジネスが大きくなり「月収10万」をはるかに超えてしまう人もいます。

しかし、そうなると「主婦」をやるのには不可能なほど忙しくなるので、今度は「夫婦仲」がダメになり、離婚してしまう人も。まさに起業離婚です。そうやって起業して、今は年下の夫と再婚して幸せになっている人もいるので、人生、何が幸いするかはわかりませんが。とにかく、これからは専業主婦は少数派になっていく時代。夫婦での意識改革、話し合いで、二人で稼ぐリッチな夫婦を目指していきましょう。

著者プロフィール : 白河桃子(しらかわとうこ)

少子化ジャーナリスト、作家。一般社団法人「オサン・デ・ファム」アンバサダーとして、「女の子を幸せにする心とカラダの授業」プロデュース、「全国結婚支援セミナー」主宰。大妻女子大学就業力GP「ライフコース講座」講師および企画。山田昌弘中央大学教授とともに、2008年度流行語大賞にノミネートされた「婚活(結婚活動)」を提唱し、共著『婚活時代』(ディスカバー21)がある。近著は、国立成育医療センター母性医療診療部不妊治療科医長、齊藤英和先生との共著で『妊活バイブル』(講談社)、『女子と就活 20代からの就・妊・婚講座』(中公新書ラクレ)。