ウェブサイト制作でも、印刷物をデザインする場合も、完成までに「提案」、「用件定義」、「分析・調査」、「制作」、「テスト」という5つのフェイズがあります。それぞれのフェイズを順に進めていき、完成に向けてチームとクライアントを誘導するのがプロジェクト管理です。管理の際によく採用されるのが、ひとつのフェイズが終われば、次のフェイズへ進むという『ウォーターフォール・モデル (waterfall model)』です。これは、次のアクションが何か分かりやすいというメリットがあります。しかし、すべてのプロジェクトがフェイズごとに順に進むということはありません。「分析・調査」と「制作」は重なり合っている部分があるでしょうし、「制作」と「テスト」は繰り返し行われながら完成へ向かう場合もあります。状況が変化したときに、柔軟に対応にできるようにしておきたいですし、フェーズを構成している仕様の進み具合も同時に管理できるようにしておきたいところです。このように、常に変わりながら進むプロジェクト管理の場合、特定の型にはめてしまうツールを使うのではなく、シンプルで柔軟性があるツールが必要とされます。そこで今回は、柔軟性に長けたシンプルな無料プロジェクト管理サービス「Less Projects」を紹介します。

シンプルでユニークな「LessProjects」。無料で幾つものプロジェクトを管理できるので早速会員登録しよう(左)。Google アカウントをサポートしているので、新規会員登録を行う際に、新しいユーザーIDを作りたくない方は右側のパネルから会員登録することが可能です。認証のためにちょっとした計算問題もあるので注意してください(右)

登録後まずサブドメイン名を決めます。固定リンクなので半角英数で分かりやすい名前にしておきましょう

プロジェクト管理といえばガントチャートがあったり、細かくタイムラインが引かれている場合がありますが、Less Projects は、他のプロジェクト管理と異なりシンプルなリストで構成されています。各プロジェクトは複数の「Iteration (反復)」で構成されており、それぞれに「Spec (仕様)」を加えて、進行状況や必要項目を確認することができるようになっています。つまり、Iterationがプロジェクトを構成するフェイズ/カテゴリ、Specがその中でしなければならない項目と捉えることができます。

プロジェクトのリストビュー。他のプロジェクト管理ツールとは異なり色や文字の使い方がシンプルです。ドラッグ&ドロップで順番を変えることができます(左)。プロジェクトは幾つでも作成可能で、もちろん日本語を使うことができます(右)

個々のSpecは、「Not Started (未開始)」から「Completed (完了)」までの段階を複数設定することができ、完成までの進み具合が具体的に分かるようになっています。例えば「設計中」、「クライアントに確認中」、「品質管理中」などが、ディフォルトであらかじめ用意されています。また、カスタマイズすることによって、日本語の用語に書き加えたり、状態の数を変えることができます。自分の仕事の仕方に合わせて状態名を変更するとプロジェクトの進み具合がより明確になるでしょう。ほかにも「Sticke Notes」では、Spec の状態を一望することができ、ドラッグ&ドロップで状態を変更することができるようになっています。各Specの状態の進み具合に応じて、プライオリティを変更したり、別の Iteration へ移行するといった作業を直感的に行うことが可能です。

Specを追加する際は、プライオリティや割り当てる人を指定することができます。詳細はリッチエディタ形式なので、文字に装飾を入れたり、画像を追加できます。詳細はリストビューでもマウスオーバーをすることで観覧可能

Iterationの状態は Stickie Note で一望することができます。状態が変わった Spec は、ドラッグ&ドロップで変更することができます

各Specの状態を表す名称は日本語に変えることができるだけでなく、数や順番も自由に変えることができます

複数の人が利用したとしても、混乱しないための工夫が幾つかなされています。各Specは誰に割り当てるのか決めることができるのは当然のこと、Specには履歴機能が実装されているので、いつ誰が状態やプライオリティを変えたのか分かるようになっています。招待した人に対して4種類の役割を割り当てることができますが、細かい権限はありません。しかし、履歴機能を利用することで状況確認ができますし、誤って編集してしまったとしても、元の状態に戻すのは難しくありません。

それぞれの Specは履歴が残るようになっており、いつ誰が内容や状態を変更したのか分かるようになっています

複数のプロジェクトが同時に動いていても、誰に何を割り当てるかといった設定を行うことが可能です

Less Projects は他のプロジェクト管理とは異なるアプローチをとっているので、最初は分かり難いかもしれません。プロジェクト管理に必要とされている様々なデータフィールドがある多機能ツールとは異なり、柔軟性に長けた空の箱といっても良いかもしれません。様々なフィールドの名称を変えることができますし、変更しなくてはいけない場合でも、マウスクリックやドラッグ&ドロップといったシンプルな動作で対応することができます。

クライアントが変われば仕事の進め方も変わります。そして、プロジェクトは必ずといって良いほど何か例外が発生し、計画どおりに進まないです。こうした先が読めないプロジェクトに対応するには Less Projects のような柔軟なツールを使うのもひとつの手段でしょう。