以前の連載で、仕事に不必要なアプリケーションを自動的に消して仕事に集中するための方法を紹介しました。新着メールのお知らせ、Twitterなどのマイクロブログやメッセンジャーのアラート、RSSをはじめとしたWeb上の情報をほぼリアルタイムで受信できるような環境にいると、パソコンのデスクトップは常にあなたの集中力を欠くきっかけにあふれているといえます。たとえデスクトップの隅で小さく表示されているものだとしても、視界に入ることで気になってしまいますし、結果的に仕事とは関係ないことをし始めてしまうこともあります。つまり、集中するためには、アプリケーションを単に不可視にするのではなく、自動的に情報が自分に降り注いで来る状態を最小限に抑える必要があるといえます。

必要なアプリケーション以外を終了するのが、最適な手段かもしれませんが、ひとつのタスクをこなすのにたったひとつのアプリケーションを利用していれば済むというわけでもありません。

例えばこうして記事を書くという作業も単にテキストエディタを開いて書いているだけでなく、資料となるWebサイト、画像、文書などを見ながら行っています。理想はアプリケーションをひとつだけ開いて"邪魔"を排除して作業するべきですが、現実はそうもいきません。しかし、文章を書いている間、常に複数のアプリケーションが必要というわけではないので、調子よく書ける状態になると他のものを一切排除して書くことに集中したいところです。文章を書くという作業は不思議なもので、一時間まったく書けないこともあれば、長い文章を30分くらいで書けてしまうこともあります。書けない理由は数多くありますが、書けるモードになると、必ずといって良いほど他のことを気にすることなくひたすら書いていると思います。今回紹介するテキストエディタはそんな"書けるモード"を作り出すのに最適なアプリケーションです。

WriteRoomは24.95ドルのシェアウェアですが、30日間の試用期間があります。とりあえずダウンロードしてフルスクリーンでの文章編集を体験してみましょう

WriteRoomは、フルスクリーンで文章を書くことができるMac OS X用のテキストエディタです。メニューバーやDockも表示されないフルスクリーンなので、他のアプリケーションの情報が目に入ることもありません。つまり、WriteRoomを立ち上げるだけで、デスクトップをあたかもWriteRoomしか開いていないような状態にし、文章を書くことに集中することができるわけです。独特な見た目ですが、Microsoft Wordをはじめとした他のアプリケーションで作成した文書を開いて編集することが可能ですし、書き出しもテキスト(.txt)だけでなく、HTMLやWord 2007フォーマットにすることが可能です。

文字通りフルスクリーンで文字以外何も表示されません。長い文章はマウスホイールでスクロールします。マウスをスクリーン上部へもっていくと、メニューバーが表示されます。Escキーでフルスクリーンモードを終了することができます

設定画面から背景色、文字の色の設定が出来るだけでなく、ページ枠やスクロールバーを表示させることが出来ます。自分に合ったフルスクリーン環境をつくることができます

文字の大きさや装飾が可能なリッチテキストモードがあるのもWriteRoomの特徴。ページ数やページの枠といったワープロソフトのような機能も実装されているのは嬉しい

デフォルトでは黒い背景に緑色の文字ですが、透明度も含めて細かい設定を行うことが出来ます。メニューバーを常に表示させておきたいときも設定から変更することができます

フルスクリーンということもあるので、ほとんどの作業はショートカットで行うことになりますが、開く(Cmd+O)、保存(Cmd+S)、新規作成(Cmd+N)など他のアプリケーションと同じなので迷うことはほとんどありません。また、数秒ごとに自動保存もされるので、万が一強制終了になったとしても心配することもありません。

このWriteRoomにインスパイアされて開発されたのがDark RoomというWindows用のテキストエディタです。WriteRoomと同様、フルスクリーンでテキスト編集をすることができます。集中して文章を書くという意味ではDark RoomもWriteRoomも変わりありませんが、無料のDark Roomに対し、有料のWriteRoomのほうがスクリーンのカスタマイズや複数フォーマットと文字コードのサポートなど機能が充実しています。

最新にアップデートしているOSであれば既にインストールされていますが、Dark Roomを利用するには.NET Framework 2.0が必要です

WriteRoomと同様、シンプルな見た目。右側に見えるボタンはスクロールするためのものです

Escを押すとウィンドウモードに切り替わります。再びフルスクリーンにしたい場合はメニューからか、F11を押します

背景色や文字の変更など最小限ですが、フルスクリーン編集で欲しいと考えられる設定が揃っています

文章を書く機会が多い方はWordやOSに付属しているテキストエディタではなく、WriteRoomやDark Roomを試してみてはいかがでしょうか。ただフルスクリーンになるという単純なコンセプトですが、驚くほど集中できますし、自分がどれだけ不必要な情報の中に埋もれているのか気付くかもしれません。