【コラム】

クリエイターのためのライフハック

9 みんなの力を借りて何か作ってみない? - Cambrian House

    長谷川恭久  [2006/07/28]

    クラウドソーシングという考え方

    クラウドソーシング(Crowdsourcing)という言葉を知っていますか? 2006年6月号のWired誌に登場したこの言葉。意味はアウトソーシングと少し似ていますが、ビジネスモデルとして全く新しい意味を持っていると考えられています。

    アウトソーシングの場合、社外ではあるもののプロと呼ばれる人たちを雇うというケースが多いですが、クラウドソーシングは低賃金もしくは無償でプロジェクトに参加してくれる人を集めます。しかもその多くはフルタイムではなく、余暇を利用して作業を行うという人たちが多いと言われています。今までプロと呼ばれている人たちが集まってプロジェクトが進行していたわけですが、クラウドソーシングは不特定多数の群集(Crowd)が自分たちができるパーツを持ち寄って組み立てていくわけです。

    以前からソフトウェア開発ではオープンソースという名称でクラウドソーシングが行われていたわけですが、現在のクラウドソーシングはソフトウェア開発をはじめ多岐にわたります。「InnoCentive」のようなクラウドソーシングに適した人材紹介サイトもありますし、Amazon.comでも「Mechanical Trunk」と呼ばれるクラウドソーシング的なサービスが立ち上がっています。

    クラウドソーシングを形にするWebサービス

    今回紹介する「Cambrian House」はブレインストーミングからプロダクトの完成まで、クラウドソーシングできるサービスです。主にソフトウェアの開発に使われます。アイデアを出し合って、人気のあるアイデアはプロジェクトとして実作業に入ります。このときもクラウドソーシングを利用して、プログラミングのソースやロゴマークのデザインなどを会員から募集していきます。この一連の流れをサイト上で行うことができるわけです。

    最近のWebサービスではなかなか見ることのできない遊び心満載の見た目は好印象。ページ上のフォームからログインするか「sign up here!」をクリックすると、会員登録ができる

    メールアドレスをニックネームを記入した後、確認のメールが届くようになっている

    メールに記載されているアドレスをクリックして認証完了。リンク先のページでパスワードを設定した後、すぐにサービスを利用することができる

    このサービスではプロジェクトに参加した人全員に利益になるようなシステムもきちんと組み込まれているようです。Royalty Pointsというポイント制が、このサービスには導入されていて、自分の出したアイデアの価値が上がったり、動き出したプロジェクトの機能が増えることでポイントも増えて行きます。

    プロフィールページでは自分が投稿したアイデアや、参加しているプロジェクトの確認ができるようになっている

    このポイントは株のような役目を果たしていて、プロジェクトの関わりが大きければ大きいほど得られるポイントも大きくなり、成功すればそれだけ大きな利益を得ることもできるようになっています。まだ立ち上がったばかりのサービスなので、実例がないのが残念ですが、ポイントはお金に課金できるようにもなるようです。

    小さなアイデアがプロジェクトとして動くことも。クリエイターやプログラマであれば、プロジェクトに参加することでポイントを得ることもできる

    Cambrian Houseサービスの裏にあるクリエイティブプロセス

    しかし、このサービスを使って"お金を稼ごう"ということをお勧めするのが、今回のコラムの趣旨ではありません。英語の理解がなければCambrian Houseのようなサービスを使いこなすのは難しいですし、投稿されているアイデアを読むだけでも一苦労です。

    とはいうものの、このサービスで参考になることはいくつかあると思います。例えば、Cambrian Houseではまるで紙ナプキンの裏に何気なく書くいたずら書きのように(文字通りサイトではそういうデザインになっていますが)、アイデアを書き込むことを勧めています。ひとつのアイデアだけではピンと来ないアイデアも、他のアイデアと組み合わせることで魅力的なプロジェクトになることも考えられます。

    会員はアイデアを書き込むことができる。シンプルなフォームにアイデアを書き込んで行くだけ。1000文字以内という制限はある

    非会員でも「Idea Warz」でおもしろいと思ったアイデアに投票することができる。アイデアボードは紙ナプキンのようなデザインだ。「Vote」をクリックするだけで手軽に次々と投票可能

    Cambrian Houseではアイデアを出す人も、デザインやプログラミングのコードを提出するも、一概にその道のプロとは言えない場合があります。特に最近はプロとアマチュアとの隔たりが曖昧になってきている職種もいくつかあります。また、趣味として、プログラミングなど技術的なこと、もしくはクリエイティブなことに打ち込んでいる人も多いです。彼、彼女等を取り込むことによって、プロゆえにあるクリエイター同士の隔たりを打ち破るおもしろいコラボレーションが可能になるかもしれません。また、参加している人たち全員に何らかの利益が出るような仕掛けをあらかじめ作っておくかどうかで、モチベーションの高さも変わるかもしれませんね。

    このサービスは現在β公開中ですし、実際、利益になるかどうかを含めて未知数な部分が多いですが、これからのクリエイティブプロセスを考えるという意味で、とても参考になるサービスだと思います。まず、アイデアは、どのような形式でもいいので、アウトプットしておく。そして、その道のプロだけではなく幅広いアイデア、技術、クリエイティブを取り入れてみる。この2つをネットでは可能にしてくれています。Cambrian Houseのようなサービスを使う使わないは関係なく、頭の片隅に置いておきたい考え方ではないでしょうか。

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