第3回はジェットスター・ジャパンについてである。運航開始後、毎年大きな赤字を出してきたジェットスター・ジャパンだが、2016年5月期に初めて営業黒字を計上した。とは言え、営業利益率は2%であり、他社に比べて脆弱な経営体質であると言えるだろう。

ジェットスター・ジャパンは2016年5月期に初めて営業黒字を計上

加えて、今期決算発表で「有効座席キロ(事業規模)は前年より22%増加」と述べているが、これだけ事業を拡大しても年間営業費用は前年度とほぼ変わっていない。原油安という要件を加味したとしても、筆者の理解を超えるものではある。巷間言われる、ジェットスター本体へのブランド料や機材リース料の支払いなど、グループ内コスト分担に大幅な改善(配慮)があったことは想像に難くない。

国内線開拓は一程度完了

ともあれ、ジェットスター・ジャパンは急速な機材導入を背景に、国内線で果敢な路線開拓を行ってきた。最低運賃保証などと相まって低イールドで推移する一方、単位コストがピーチ・アビエーションより15%程度高いことから損益分岐利用率が高止まりし(2015年度で80%を超えると思われる)、過去3年間で300億円の累損を抱えるに至った。

日本国内の路線開拓は一程度完了したとも思われることから、2015年から成田/関空/中部=台北/マニラ線を開設して国際線比率を高める戦略に移行。2017年1月23日には、ピーチを追って上海線の開設を予定している。

鍵を握る国内線の収益維持

また、ピーチやバニラエアと異なり、国際線の外国での販売網構築においては既にジェットスターグループ各社のネットワークができ上がっている。そのため、ジェットスター・ジャパンの2016年度以降の国際線を軸とする収益改善の道筋はイメージできるとも思うが、懸念は国内線の収益維持ではないだろうか。

地方にも積極的に路線を展開している

ジェットスター・ジャパンは、国内線では他のLCCが手を出さない地方路線にも積極的に路線展開してきた。高松、佐賀、大分、熊本、松山などだ。ここで一定の低価格志向旅客を獲得してきたことは事実だが、中期的に大手各社が「国内線はゼロ成長」と予測する中で、地方都市への国内需要(潜在需要に限界がある地方都市ではリピーター需要が必須)を掘り起こし続けることは難しい。

座席を埋めて利用率を維持するために、さらなる低価格化(イールド低下)が進むことが予想され、利用率もしくは旅客単価で2~3%のダウンが赤字化に直結する同社は、引き続き難しい舵取りを強いられるだろう。

最後は、2015年度LCC唯一50億円の赤字を計上している春秋航空日本である。また、最後に、第1回の冒頭で述べた「LCCのシェア拡大を阻むもの」について触れておきたい。

筆者プロフィール: 武藤康史

航空ビジネスアドバイザー。大手エアラインから独立してスターフライヤーを創業。30年以上に航空会社経験をもとに、業界の異端児とも呼ばれる独自の経営感覚で国内外のアビエーション関係のビジネス創造を手がける。「航空業界をより経営目線で知り、理解してもらう」ことを目指し、航空ビジネスのコメンテーターとしても活躍している。スターフライヤー創業時のはなしは「航空会社のつくりかた」を参照。