【コラム】

Flashアニメ作家・青池良輔の「創作番長クリエイタ」

25 アニメーションの特徴的な技法「予備動作」と「後追い」を学ぶ

 

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Flashアニメ作家・青池良輔がクリエイターになる方法を熱く伝授する連載「創作番長クリエイタ」。連載第25回では、アニメーションの特徴的な技法である「アンチシペーション(予備動作)とフォロースルー(後追い)」を学んでいく。

「アンチシペーション(予備動作)とフォロースルー(後追い)」

アニメーションをより活き活きと描く為に、前回「スクィッシュ&ストレッチ」などを考えてみました。アニメーションをより楽しく見せる工夫は様々ありますが、今回は前回同様に大切な「アンチシペーション(予備動作)とフォロースルー(後追い)」についてです。

予備動作とは、その字のごとく、何かアクションを起こす前に、その前兆として行うものです。垂直に飛び上がる前に、膝を曲げて腰を落とすとか、くしゃみをするまえに、一瞬「へっ!」っとなるとか、いろいろあると思うのですが、この「アクション前のアクション」が予備動作となります。これを描くことで、通常の状態から大きなアクションへの繋ぎが、よりダイナミックになりキャラクターに躍動感を与えます。

サンプル動画のように、予備動作は、キャラクターの力の「溜め」の表現に重要な役割を果たします。ゴムを引っ張って、ビヨンと飛ばす様に、溜めや引きつけが大きくなればなるほど、その次に繋がるアクションが力強く表現されます。

予備動作と合わせて紹介したいのが、「後追い」です。アクションには中心となる大きな重心の移動があり、予備動作とメインのアクションでその重心の動きが見えてくると思います。しかし、体には手足や髪の毛、衣装など質量の違う部分があり、それらは、メインの重心をフォローはしているものの、それとは違うバランスで動きます。例えば、人が振返るとき、基本顔がくるっと回りますが、髪の毛はふわっと後を追ってきますので、頭が回りきった後、髪の毛は遅れて定位置に収まってきます。これが「後追い」になります。極端な例として、デンデン太鼓のようなものを想像してもらえればいいのではないでしょうか。

また「振返る為に頭の向きを変える」という動きでは、それに追従して、体も多少向きを変えるでしょう。僕の解釈では「後追い」の多くの場合には「意識的な動作に追従する無意識の動作」の表現がキモだと思っています。振返りでは、意識の中心は頭にあるため、体は体のバランス的に、無意識に後追いしてきます。それが「肩がぶつかりそうになり避ける」という動きになれば、意識の中心は肩であり、頭はその動きを後追いしてくるはずです。

走っていた人が急に止まる場合では、「止まる」という意志を持った動きのあと、「無意識にバランスをとる」ポーズが含まれてくると思いますし、バットを振り切った後に、緊張感をもってひねりきった体が無意識に引き戻されるでしょう。そういった表現があると、描くアニメーションはより自然な動きになると思います。

しかし、予備動作も後追いも、見せたいアクションの前後につくので、作画の枚数を増やしてしまい、あまりに丁寧な作画は敬遠される場合もあります。特に後追いはアクションに余韻を持たそうと思うとメインのアクションより多くの作画を必要とすることさえあります。しかし、非常に大切な表現なので、制作環境を加味しながら検討する価値はあると思います。

よくアニメータの人が、「実際に自分で動いてみて動作を確認」ということを言われるように、メインのアクションは頭でもイメージしやすいですが、予備動作や後追いは重心の移動や質量の違いなど、動いてみて始めてわかる部分も多いと思います。仕事仲間や家族のいる所ではちょっと恥ずかしいかもしれませんが、キャラクターになりきって動き回ってみながら、アクションの前後を丁寧に把握し、その流れを掴むことも重要です。特に、「グワッ!」とか「ビシッ!」という、勢いのある表現を求めているのにうまく行かない場合は、構図や画角の問題とは別に、この予備動作と後追いの表現がうまくできていないのかもしれません。

前回の、「スクィッシュ&ストレッチ」と合わせ、この予備動作、後追いでは、大きな誇張を入れることで大変アニメーションらしい、伸び伸びとして楽しい表現ができるようになります。キーになる原画の間に、動画でどのぐらいデフォルメするかという度合いで作品の印象も大きく変わるでしょう。動画枚数を気にしない昔のアニメーション等の滑らかかつ活き活きとした表現の裏には、熟練アニメーター達の技術と遊び心が満載されていますので、どういう風にアクションの前後を装飾しているのかを意識しながら鑑賞してみると、参考になるかもしれません。

青池良輔


1972年、山口県出身。大阪芸術大学映像学科卒業後、カナダに渡り映像ディレクター、プロデューサーとして活動。その後、Flashアニメで様々な作品を発表。短編アニメやCFを多数手がける。最新作はDVD『CATMAN』(2008年)、『ペレストロイカ ハラペコトリオの満腹革命』(2008年)。『藤子・F・不二雄のパラレル・スペース DVD-BOX』(2009年)では、 谷村美月主演の実写作品「征地球論」の監督と脚本を担当。森永アロエヨーグルトのWebサイトで、最新Flashアニメシリーズ5作目となる『Boy meets Girl アロ恵』公開中。全国のTOHOシネマズで本編前に上映されている短編『紙兎ロペ』では、アニメーション制作を担当。

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インデックス

連載目次
第31回 超実践編 -試行錯誤しつつも、キャラクターデザインを進めていく
第30回 超実践編突入 Flashアニメーションの企画を立て制作開始
第29回 Flashアニメーション制作テクニックをまとめてみる
第28回 あえて「動きの少ないアニメーション」について考えてみる
第27回 アニメーションにおける演技やアクションの構築について考える
第26回 「キャラクターの運動曲線」について考えてみる
第25回 アニメーションの特徴的な技法「予備動作」と「後追い」を学ぶ
第24回 アニメーションの特徴的な技法「スクィッシュ&ストレッチ」を学ぶ
第23回 アニメーションで大切な「詰め」について考える
第22回 Flashアニメーションのキャラクターの口の動きを考える
第21回 Flashアニメーションでキャラクターを活き活きと見せる演出方法とは?
第20回 トゥイーンのみを活用してアニメーションを作ってみる
第19回 コマアニメの中にトゥイーンアニメーションを効率よく組み込む方法とは?
第18回 描いたキャラクターを動かしてみる
第17回 Flashアニメーション制作 ついに制作実践編に突入
第16回 アイデアから絵コンテ完成まで -創作までの流れをまとめてみる
第15回 紙からデジタルへ -ビデオコンテを作成する
第14回 紙からデジタルへ -絵コンテを具体的な「絵」の形にしていく方法とは
第13回 紙からデジタルへ 脚本から絵コンテを描く方法とは
第12回 キャラクターをFlashでアニメーションにする方法を考える
第11回 紙からデジタルへ -キャラクターをデジタルデータ化する手法を考える
第10回 紙からデジタルへ -制作アプリケーション選択について考える
第9回 ショートコンテンツ(短編作品)の物語作法について、さらに深く考える
第8回 ショートコンテンツ(短編作品)の物語作法について考える
第7回 著作権の意味や役割について考える
第6回 完全オリジナルのキャラクターを確立する方法
第5回 どのようにキャラクターの個性を設定するべきか
第4回 絵が苦手でもツールを駆使してアイデアをビジュアル化する
第3回 自分のアイデアをさらに磨き上げる方法とは?
第2回 クリエイターがアイデアを具体的な形に落とし込む方法とは?
第1回 クリエイターになるために、有効な時間の使い方を考える

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