Flashアニメ作家・青池良輔がクリエイターになる方法を熱く伝授する連載「創作番長クリエイタ」。連載第18回では、作画したキャラクターを動かしていく。

キャラを作画で走らせる。

前回(第17回)、ツールについて触れたので、今回は、とにかく自分のキャラクターを描いて動かしてみます。下図のようなサンプルキャラを走らせようと思います。

独断と偏見でFlashアニメを作るときに一番作りやすいと思うフレームレート、15fpsに設定したドキュメント上に、横から見たキャラクターの走る姿を描いてみようと思います。あまりフレームレートが高いと、SWFの再生時に意図通りのタイミングからずれたりすることがあり、こだわりだすと死ぬほど動画を描きたくなったりもします。また将来的に、ビデオにコンバートする時などの事を考えると、15fpsがビデオの標準的な30フレームの半分ということもあり、コンバートが上手くいくようなので、僕は基本的には15fpsで、作品を作るようにしています。

まずは、フレーム1にアクションの頂点、一番手足が前後に伸びている絵を描きます。ペンでもブラシでも好きな方で描いてください。上手く描けたら、5フレーム目に、空白フレームを挿入し、オニオンスキンボタンをオン。オニオンスキンの反映される範囲を1フレームまで伸ばし、前の絵を参考にしながら、手足が反転している絵を描きます。そして、次にフレーム3に空白フレームを作り、フレーム1と5の間となるような走りの中間の絵を描き、同様にフレーム7にフレーム3の手足が反転した絵を描きます。計4枚描くことになります。

解説画像

ここ迄を早速プレビューしてみましょう。

走っているように見えるでしょうか? 参考までに、1フレームづつ作画したバージョン(8枚)も作ってみます。

4枚よりは8枚の方が動き繊細でリッチな感じに見えると思います。ただ、リッチな方が良いかどうかは、作品を作る人が決める事なので、4枚の方が切れがいいと思えばそちらを取るべきです。ちなみにこの4枚の方では、1秒15フレームのタイムラインを2コマずつ使っているので、1秒7.5フレームで、テレビアニメ等で多用される、1秒24フレームの3コマ打ち、すなわち1秒8フレームに近い動きになると思います。枚数が多くなれば多くなるほど、手間もかかりますので、良い落としどころを見つけてください。

しかし、全ての走りがこのスピードというわけではありません。そこで、次に6枚の走り方についてもやってみます。こちらは、1フレームと、7フレームに一番足が伸びている状態を描き、次に、1、7フレームの中に、3、5フレームにその間の動きを3分の1ずつ描いてゆきます。伸びている足が、3フレームには地面について体重が乗りかけている所、7フレームには、体重を乗せている足を蹴りだすちょっと前という感じでしょうか。1フレームで後ろ足だった方は、3フレームで足を巻き込み始めたぐらい、5フレームで、体の前方に出て行こうとしているぐらいのタイミングで描きます。言葉だとわかりにくい部分もあると思うので、サンプルを見てください。

この作画を、シンボルとしてまとめ位置を移動させたり、もしくは、背景の方を動かしてやると、走っているように見えるはずです。移動量は、速すぎても遅すぎても違和感があると思うので、走りの歩幅を考慮して、良い移動量を見つけましょう。厳密にいうと、2コマ間で作画したシンボルを、そのまま、親のタイムラインで移動させると足下が滑っているように見えます。こだわる方は、移動量を決めた後に、1フレーム毎にキーフレームを追加して、その後で、トゥイーンを削除して、コマアニメが移動しているようにタイムラインを作り込んで見てください。

また、一言で走りと言ってもキャラクターの状態、体型などによって、様々なパターンの走り方があると思います。もっと速く走らせたければ、3枚の走り、2枚の走りなどもあるでしょう。そういった、色々なタイプの走り方を想像し、ラフでもいいので、とにかくタイムラインに絵を描いてみる事でアニメーションの楽しさを感じられるのではないかと思います。

この作業を行う事によって、楽しさと合わせて、「あー、やっぱり何枚も絵を描くのって結構大変だなぁ」と思われる方もいると思います。しかし、このような手間を経験する事で、「動かしたいキャラは、きちんと動かせるように多少のデフォルメや色の整理を考えたデザインをしておいた方がいいということも、感じて頂けるのではないかと思います。

青池良輔


1972年、山口県出身。大阪芸術大学映像学科卒業後、カナダに渡り映像ディレクター、プロデューサーとして活動。その後、Flashアニメで様々な作品を発表。短編アニメやCFを多数手がける。最新作はDVD『CATMAN』(2008年)、『ペレストロイカ ハラペコトリオの満腹革命』(2008年)。『藤子・F・不二雄のパラレル・スペース DVD-BOX』(2009年)では、 谷村美月主演の実写作品「征地球論」の監督と脚本を担当。森永アロエヨーグルトのWebサイトで、最新Flashアニメ『BABY&GIRLS アロ恵』公開中。全国のTOHOシネマズで本編前に上映されている短編『紙兎ロペ』では、アニメーション制作を担当。