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  4. Flashアニメ作家・青池良輔の「創作番長クリエイタ」


「アンドレ・ザ・パンダベア--」脚本サンプル

シーン1 町外れ

 メキシコ。遠くに街がみえる荒涼とした丘の上、寂しそうに立つ熊。
熊(ナレーション)「友達が欲しい。」


シーン2 町中

 町中の広場。サッカーボールをパスで回しながら楽しく話している兎、犬、豚。
 何かに気がつき驚いて逃げてゆく。驚いた視線の先には、しょんぼりとした熊。
 足下に転がるサッカーボールを拾い微笑むが、建物の影に隠れて震えている他の動物達。
 熊がボールを差し出すと、悲鳴を上げて逃げる。落ち込む熊。
熊(ナレーション)「みんなが僕をこわがった。」


シーン3 プロレスのリング

 リング上で、スポットライトの下、輝く銀色のマスクの猫。大歓声。
 反対のコーナー、手をあげる熊。ブーイング。飲み物の瓶など飛んでくる。
 猫マスクのチョップ、キック。大歓声。パンチの嵐に、猫マスクを持ち上げる熊。
 とたんにブーイング。観客席から、瓶や食べ物等が投げ込まれる。
 ブーイングに戸惑う熊。抱え上げられたまま、冷たい目で熊をみる猫マスク。
 察したように、猫マスクに押しつぶされるように仰向けに倒れる熊。
 そのままスリーカウント。勝者の名乗りをあげる猫マスク。
 倒れたままの熊の目に涙がたまり、見上げたライトがにじんでゆく。
熊(ナレーション)「それは、僕が熊だから。僕は嫌われ者の熊。」


シーン4 プロレス会場控え室廊下

 とぼとぼと歩く熊。目の前に、白いマスクが落ちている。
 悲しい顔のまま、マスクをかぶる熊。
熊(ナレーション)「ある日、ひろった不思議なマスク。」
 熊目線、目の前を歩いている兎。振り返ると顔が明るく輝き、かけよってくる。
 ふと横をみると壁にかかっている鏡の中に、白いマスクをかぶった自分の姿。
熊(ナレーション)「みんな、パンダと間違えた。」


シーン5 町中

 マスクをかぶった熊は、兎、犬、豚などに囲まれている。
 みな楽しそうな顔で笑いかける。
熊(ナレーション)「マスクがあれば、ボクはみんなの人気者。」
 熊マスクのほっぺたにキスをする兎。
熊(ナレーション)「世界が突然、やさしくなる。」


シーン6 プロレスリング

 大歓声の中、悪者レスラーを持ち上げている熊マスク。
熊(ナレーション)「みんな僕を見て微笑んでいる。初めての感じ。」
 笑顔。笑顔。それを見ている熊。

シーン7 町外れ

熊(ナレーション)「ぼくはみんなが怖くなる。」
 夕方、街が遠くに見える丘。マスクを叩き付ける熊。