Flashアニメ作家・青池良輔がクリエイターになる方法を熱く伝授する連載「創作番長クリエイタ」。連載第12回では、キャラクターを紙からデジタルデータ化する手法を、さらに深く突き詰めていく。

紙からデジタルアニメーションへ(手法を決定する)

作画の手法を決めたら、あとはどんどん絵を描いていけば良いのですが、そう簡単にはいきません。デジタルアニメーションと言ってもその手法は多岐に渡ります。前回でも説明した「表現したいテイスト」「作画のし易さ」についてもうちょっと掘り下げ、「Adobe Flash」を用いた場合、どのような方法論があるかを、考えてみましょう。

1.モーショントゥイーンを主に用いる

モーショントゥイーンを主に用いた場合

Flashの特徴的なアニメーションとして、「モーショントゥイーン」があります。これはタイムライン上で、図形を移動、拡大、縮小する指定をし、それで動きを表現する方法です。図形が右から左に動くだけではアニメーションとは言えないのではないかと思われるかもしれませんが、その組み合わせに寄り多彩な表現の可能性があると思います。この方法を最も効果的に使うには「関節アニメ」とも言われるような、キャラクターの体の描く部分を分割し、それをインドの影絵人形のように、関節ごとに動かす方法があります。Flash CS4からは、「ボーンツール」という、パーツ毎の関連性をつけるツールによってよりこの作業がやりやすくなっています。

この方法の利点としては、作画枚数が少なく、滑らかな動きを表現できる所にあります。作画に手間がかかっても、一度描いてしまえばいいのです。しかし、「デジタルに部品を動かしている」というフィーリングを視聴者に意識させてしまうところも多く、ロボット的な印象を与えてしまいます。

2.タイムラインでコマアニメを描く

タイムラインでコマアニメを描いた場合

タイムラインでパラパラ漫画の様にひとコマずつ連続して再生し、動いて見える様に作画する方法です。PC上Flash内では、オニオンスキンという機能を使い、前後のフレームを半透明に表示させながら作画してゆきます。手法としてはわかりやすく、表現の可能性も無限大にありますが、それなりの結果を得る為にはアニメーションの知識、作画する技術を必要とすること、また紙で描いたものをスキャンしながら作画したりする場合、それなりの作業量を覚悟しなければいけません。

この方法では、繊細なキャラクターの作画や多い配色は、もろに作業の手間として跳ね返ってきます。そこを地道にやるのも素晴らしいですが、心が折れない見積もりを立ててから作業に入る事をお勧めします。

この他に、「swift 3D」等を用いた、3Dアプリケーションからの作成もありますが、それはアニメーションとして、3Dアプリケーションをメインとして使いますので、ココでは割愛します。

さて、僕の場合、実際には1と2をミックスしながら、「モーショントゥイーンを主体に、アクセントとしてコマアニメを使う」とか、「モーショントゥイーンを控えめに、コマアニメを多く」というふうに、手法のミックスのバランスを考えます。ここを決めておくと、コンテを起こす段階で「この部分はトゥイーンで表現できるな」とか「ここはあえてコマアニで」という作業配分が出来る様になり、平面上でキャラクターを動かすだけでよいレイアウトを組むのか、作画が必要になるけれど動きを丁寧に表現するのかという、見極めができるようになります。

またFlashの場合には、主な発表形式のフォーマットが、ウェブ上のswfであるか、ムービー書き出しであるのかなどによっても、あらかじめ考えておく必要があります。例えば、ウェブ上swfであれば、フレームレートは12fps(1秒間に12コマ)程度が良いと言われています。多少コマアニメを入れていっても、最高12枚の作画で1秒のアニメができます。これがビデオ書き出しであれば、1秒に約30フレームとなりますので、トゥイーンが大変滑らかに行われますが、コマアニメは一秒に30枚書くのか、15枚の絵を2フレームづつ表示するのかなど、工夫を必要とします。初めて作品を作ってみようと思われている方には、swfにもビデオにも移行しやすいフレームレートとして15fpsがお勧めです。

「コマアニメこそアニメだ!」、「トゥイーンが効率的!」など、いろいろな意見があり一概にどちらが良いとは言えません。個人的には「面白くて話の内容が伝われば手法はどっちでもいい」と思っています。次回は、絵コンテを作成しながら、これらの手法をどう落とし込んでゆくかを実践的に考えてゆければと思っています。

青池良輔


1972年、山口県出身。大阪芸術大学映像学科卒業後、カナダに渡り映像ディレクター、プロデューサーとして活動。その後、Flashアニメで様々な作品を発表。短編アニメやCFを多数手がける。最新作はDVD『CATMAN』(2008年)、『ペレストロイカ ハラペコトリオの満腹革命』(2008年)。『藤子・F・不二雄のパラレル・スペース DVD-BOX』(2009年)では、 谷村美月主演の実写作品「征地球論」の監督と脚本を担当。森永アロエヨーグルトのWebサイトで、最新Flashアニメ『BABY&GIRLS アロ恵』公開中。全国のTOHOシネマズで本編前に上映されている短編『紙兎ロペ』では、アニメーション制作を担当。