旅するこねたものたち、今日は大きな雲が浮かぶ空の下で、真夏の広々とした景色の中を進みます。

夏雲多奇峯(かうんきほうおおし)という言葉があります。中国の詩人、陶淵明が残した詩の一節で、夏の空に山(峰)に似た大きな入道雲が浮かんでいる、雄大な景色を表した言葉です。日本では夏の茶席の掛軸などに好んで使われています。

夕立の原因にもなる入道雲(積乱雲)。「入道」とは「悟りを開いた人」「仏道に入り修行する人」という、僧侶を表す言葉で、そこから派生して「坊主頭の人や妖怪」という意味も持っています。山のように巨大な出で立ちや、突然現れて大雨や雷を起こして去っていく姿に、屈強で厳しい和尚さんや妖怪の姿をイメージしたのかもしれません。

陶淵明は夏の雲を山に見立て、日本の人々は僧侶(の妖怪)に見立てました。意味や由来を知ることで、人々がどんな風に世界を見ていたか、その一端を知ることができます。

第74回で紹介した「挨拶」をはじめ、仏教の世界観に由来する言葉も、学んでみると日常の中にたくさん散りばめられているということがわかるはずです。

お盆も近いこの季節、日常の中に仏教由来のものを探してみたり、色々な物事や世界観の由来を学んでみたりするのも面白そうです。思いがけないもの同士のつながりを発見できるかもしれませんよ。

■こむぎこをこねたもの、とは?

■著者紹介

Jecy
イラストレーター。LINE Creators Marketにてオリジナルキャラクター「こむぎこをこねたもの」のLINEスタンプを発売し、人気を博す。その後、「こむぎこをこねたもの その2」、「こむぎこをこねたもの その3」、「こむぎこをこねたもの その4」をリリース。そのほか、メルヘン・ファンタジーから科学・哲学まで様々な題材を描き、個人サイトにて発表中。

「週刊こむぎ」は毎週水曜更新予定です。