【コラム】

週刊こむぎ

86 自分の好みは争いのタネ?

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古典落語に、「宗論」という演目があります。代々、浄土真宗を信仰している家の旦那が、キリスト教に熱心な息子と口論になるのを、権助という飯炊きが仲裁するという内容のお話です。

「宗論」とは、仏教の教えの解釈を巡って起こる、異なる宗派間での論争のこと。このお話も元々は仏教の宗派同士の対立を描いていたのを、片方をキリスト教にアレンジしたものと言われています。

旦那とその息子、自分の信じるものを巡っての争いですから、お互いに一歩も譲りません。浄土真宗の家に生まれたのだから仏壇を拝むようにと説教する旦那と、教会の牧師を真似して聖書の教えを語り讃美歌を歌い出す息子。話がかみ合うこともなく、怒った旦那はついに息子を叩いてしまいます。

見かねた権助が「勘弁してやってください」と仲裁に入るのですが、その時にこんな川柳を引用するのです。

「宗論は どちら負けても(勝っても) 釈迦の恥」

仏教の哲学をはじめ、世の中に伝わっている様々な教えは人々が心穏やかに生きられるように考えられたものであって、争いを起こしてほしくて説かれたものではありません。それなのに、その解釈やそれぞれの信念を巡って人々が争っていたら、教えを作った人の思いが浮かばれない、という意味が込められた川柳です。

現代でも、好みや信念がもとでの争い事が絶えません。ともすれば同じものを好む人々の間でも、その中でのスタンスの違いにより争いが生まれています。

好きなもの、支持するもの、仕事のやり方、道具、作品の解釈などなど、思い入れが強いほど「これが一番、他はダメだ!」という極端な考え方に陥ったりするもの。また、それぞれの主義や信念をぶつけ合っているだけでは話が進まず、まともな議論にならないということもこのお話から学べそうです。

好きなものなどを巡って極端な思考に陥りそうになったり争い事が生じたら、「それは我々に争ってほしくて作られたものだろうか?」「それぞれの信ずるところをぶつけ合うだけのやり取りになっていないだろうか?」と考えてみると、冷静になれるかもしれません。

■こむぎこをこねたもの、とは?

■著者紹介

Jecy
イラストレーター。LINE Creators Marketにてオリジナルキャラクター「こむぎこをこねたもの」のLINEスタンプを発売し、人気を博す。その後、「こむぎこをこねたもの その2」、「こむぎこをこねたもの その3」、「こむぎこをこねたもの その4」をリリース。そのほか、メルヘン・ファンタジーから科学・哲学まで様々な題材を描き、個人サイトにて発表中。

「週刊こむぎ」は毎週水曜更新予定です。

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インデックス

連載目次
第87回 1日を生きる
第86回 自分の好みは争いのタネ?
第85回 自分の思考をしっかりと眺める
第84回 枠の中で過ごす時間
第83回 直感にとらわれない目線
第82回 認識を変える
第81回 こころを洗う
第80回 価値観のかごの外側
第79回 真の強さ
第78回 変わらぬもののちから
第77回 もやもやを変えるきっかけ
第76回 かわらぬ日常
第75回 夢うつつ
第74回 おだやかなことば
第73回 花は咲いたら落ちるもの
第72回 ひとりで歩くことも時には大切
第71回 あるがままに生きる
第70回 強い執着心が苦しみを生む
第69回 「やりきった」達成感に 要注意
第68回 大きなものは 切り分けたべる
第67回 鳥が鳴くから 静けさがきわだつ
第66回 雑念を 雪のように溶かす
第65回 心身のこわばりから 自由になる
第64回 辛いとわかっているのなら
第63回 目は横に、鼻は縦に
第62回 心を空っぽにできることは 何?
第61回 目をさませ!
第60回 ひとも こむぎも あるがままが一番
第59回 一年のおわりに 「心の癖」をさがす
第58回 寒さのしのぎかたは 人それぞれ
第57回 さとりとは 苦しさから抜け出すこと
第56回 もともと そこには 何もない
第55回 考えるより まず お食べなさい
第54回 言葉にしばられず 「月」をながめる
第53回 「自分だけのもの」は 本当にある?
第52回 言葉がなくても つたわるきもち
第51回 ままならない体で パンをもとめる
第50回 どこから行っても たどりつく月
第49回 良いも 悪いも 心しだい
第48回 自分の足元を しっかりと見る
第47回 夜空の月は ほんとうに浮かんでいるか?
第46回 じぶんに適した「立ち位置」を見つける
第45回 パンだけに頼らず 多くの選択肢を持つ
第44回 どんなにちいさくても 「活きる」場所がある
第43回 「今あるもの」を あらためて知る
第42回 つよく求めるほど こころはさわぐ
第41回 口コミにはない じぶんの体験
第40回 心しだいで 火もまた 涼し
第39回 雲のように 水のように 流れてみる
第38回 すべての不安は 現実をこねたもの
第37回 ことばにできない 感覚を大事に
第36回 食べてみなければ わからない
第35回 七夕の夜に かの人を思う
第34回 すべては さだめ
第33回 居場所に合わせて 心はうつろう
第32回 相手にあわせて 語り方をかえる
第31回 雨もまた ひとつの試練
第30回 しぜんのままに ゆるやかに
第29回 そこにいるだけで 助けになる
第28回 雨が降るから こむぎがそだつ
第27回 答えのありかは 「どちらか」ではない
第26回 うちかつべきは おのれのみ
第25回 片手ではくしゅして 枠を見つめる
第24回 語るべきことだけを ていねいに伝える
第23回 たいせつな日は いつですか?
第22回 さくらの季節と 一期一会
第21回 不安をとりだし こねて焼く
第20回 「正しさ」の向きを 観察する
第19回 目の前のご飯に しっかり向き合う
第18回 待つことも ひつようです
第17回 やすむことも 大切なしごと
第16回 身近なやさしさを たいせつに
第15回 分けへだてなく お茶をもてなす
第14回 かわらぬものなど ないのです
第13回 おいしいとわかる しあわせ
第12回 みえるものだけに とらわれない
第11回 まいにちが 「なにかびより」
第10回 この"まる"は 何にみえる?
第9回 こころもすっきり おおそうじ
第8回 "へいじょうしん"にこそ みちはあり
第7回 こだわりを すててみる
第6回 じぶんにあった「しょうじん」を
第5回 そなたのみちを ゆくのです
第4回 あらゆるものが、われわれの師
第3回 すべてはひとつにつながっている
第2回 かまどにとびこむ勇気
第1回 いつでもおいで

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