「壺中日月長(こちゅうじつげつながし/こちゅうにちげつながし)」という禅の言葉があります。

壺の中のような狭い所にいてもそこには理想の世界が広がっており、窮屈に感じず充実した時間を過ごしている様子を描いた言葉で、悟りを開いた人の境地を表した言葉と解釈されています。

壺中は人が認識している世界のようなもの。職場や学校であったり、家であったり、はたまたSNSなどのネット上の世界であったり、生活の中で人はさまざまな枠の中にくくられ、その中で生活し、物事を見ています。人が今存在し認識している世界は、広い世界のほんの一部というわけです。

しかし時には、その場所が世界のすべて、人生のすべてであるかのように思えてきてしまうものです。

「自分の居場所はこの仕事しかない、だからここで評価されなければならない」「このつながりの中で自分は評価されていない、だから自分はダメなのだ」といったように、仕事や勉強での評価や、自分の近くの人間関係、登録しているSNSでのつながりがすべてであるというように、認識に思い込みの「ルール」を作り、今の居場所や自分の世界観を窮屈なものにしてしまうのです。

あることがうまくいかない時はそれがすべてと思わず、その外へ目を向け、別のことをやってみるとそちらがうまく進んだり、AというSNSに疲れたらBというSNSに行ったり、リアルの人間関係の中で過ごしてみたりすると、そちらでは楽しめたり、ということもあるはずです。

今この瞬間を生きられるのは一つ一つの狭い枠の中だけですが、自分の世界観を狭める余計なルールから自由であれば、どのような枠の中にいても、充実した時間を過ごすことができるようになってくるのではないでしょうか。

■今回登場したのは、禅のぼさつが宿った「こねり」

■著者紹介

Jecy
イラストレーター。LINE Creators Marketにてオリジナルキャラクター「こむぎこをこねたもの」のLINEスタンプを発売し、人気を博す。その後、「こむぎこをこねたもの その2」、「こむぎこをこねたもの その3」、「こむぎこをこねたもの その4」をリリース。そのほか、メルヘン・ファンタジーから科学・哲学まで様々な題材を描き、個人サイトにて発表中。

「週刊こむぎ」は毎週水曜更新予定です。