ブッダが教えを説いた言葉を集めた経典「法句経(ダンマパダ)」に、こんな言葉があります。「心に煩悩がなく、思いが乱れず、善悪も捨てて、目覚めている人には何も恐れるものはない」

また、中国禅の第六祖、慧能禅師は「善を思わず悪をも思わず(不思善 不思悪)、本来の自己を自覚せよ」と言っていたりと、仏教の哲学には「善悪の価値観を捨てよ」という教えがたびたび見られます。

これは、「良いことをするな」とか「悪いこともしていい」という意味ではなく(仏教の教えの中には、きちんと守らなければならない戒律もあります)「社会が決めた、既存の価値観の枠の中から自由であれ」「二つの要素を対立させて考える物の見方に巻き込まれないように」という教えです。

なぜなら、「良い」とか「悪い」といった価値基準や、二項対立の考え方も、煩悩の中で生み出された(苦しみや執着の元となる)物の見方に過ぎないからです。

「男性はこうである、女性はこうである」「日本人はこうである、外国人はこうである」「Aのファンはこうである、Bのファンはこうである」と言った決めつけに、「良い・悪い」とか「どちらが偉い・偉くない」といったような価値判断が混ざっていたり。

確かに身の周りには2つの要素にこだわって対立させるような考え方があふれていて、ついついその枠の中に巻き込まれて物事をとらえてしまいがちになります。

しかし、このように物事を分けることにこだわりすぎると、「どちらか一方が正しい答えである」という錯覚に陥ってしまったり、良いか悪いかという視点で論ずるあまり一向に問題そのものが解決しなかったりといったことも生じてしまいます。

考えることに行き詰まったら、こうした価値観の枠や対立の考え方の中に巻き込まれていないかどうかをチェックしてみると、突破口が開けるかもしれません。

■こむぎこをこねたもの、とは?

■著者紹介

Jecy
イラストレーター。LINE Creators Marketにてオリジナルキャラクター「こむぎこをこねたもの」のLINEスタンプを発売し、人気を博す。その後、「こむぎこをこねたもの その2」、「こむぎこをこねたもの その3」、「こむぎこをこねたもの その4」をリリース。そのほか、メルヘン・ファンタジーから科学・哲学まで様々な題材を描き、個人サイトにて発表中。

「週刊こむぎ」は毎週水曜更新予定です。