庭に出て雪だるまを作っているこねり。
今日も自由に過ごしています。

しかし遊んでいるように見えて、
何か大切なことを伝えようとしているみたいですよ。

「眼横鼻直(がんのうびちょく:目は横に、鼻は縦に)」と
言っていますが、雪だるまの顔の作り方でしょうか。
実はこれ、道元禅師が真理について語った言葉なのです。

中国で修行をし、悟りを開いた道元禅師は、
経典などを何も持ち帰らず日本へ戻ってきました。
どうしてかと尋ねられると、
「私は、目は横に、鼻は縦についていること
(眼横鼻直)をはっきりと悟りました。
これがわかれば何にも惑わされることはない。
だから手ぶらで帰ってきたのです。」
と語ったと言われています。

当たり前のことがありのままにある
日常の光景こそが真実であって、
答えは常に目の前に広がっているのだから、
経典を持ち帰る必要がなかったというわけです。

また、「一休さん」として有名な
臨済宗の一休宗純禅師のエピソードに、こんなものがあります。

ある日、一休禅師は曲がりくねった松の木の前に
「この松をまっすぐに見ることができた人には、褒美を与えます」
と札を立てました。
人々はあれこれと松の木がまっすぐに見える方法を考えましたが、
どうにもこうにも思いつきません。
そこへ、通りすがりの旅人が
「この松の木は、よく曲がっているなあ」とつぶやきました。
それを聞いた一休は、
それこそがまっすぐに見るということだ、と
旅人に褒美を与えたといいます。

「流行とは違う手法で描かれているからこの絵はいいものじゃない」
「点数が低いからこのお店の料理はおいしくないに違いない」
「仲良くしたいあの人の立場に賛同しよう」

周囲の人によってタグ付けされた情報や、
思い込みに流されていないでしょうか?
褒美欲しさに松の木をまっすぐ見ようとした人々のように、
自分の都合や一時の見栄のために
考え方を無理やり変えようとしていないでしょうか?

他人の意見やその時の都合は置いておいて、
まずは目の前にあるもののあるがままと向き合う。
自分の考えを縛っているものに気付いたら、そのように心がけることで
思いもよらなかったものがあなたの心を豊かにすることに気付くかもしれません。


■今回登場したのは、禅のぼさつが宿った「こねり」

■著者紹介

Jecy
イラストレーター。LINE Creators Marketにてオリジナルキャラクター「こむぎこをこねたもの」のLINEスタンプを発売し、人気を博す。「こむぎこをこねたもの その2」「こむぎこをこねたもの その3」もリリース。そのほか、メルヘン・ファンタジーから科学・哲学まで様々な題材を描き、個人サイトにて発表中。

「週刊こむぎ」は毎週水曜更新予定です。