新しい物好きのこねり。なにやらロボットを動かしています。
ロボットを操縦するとき、その振舞いは(技術もそうですが)
操縦する人の意思によって決まるものです。

道具自体に善悪はなく、
人が善意を持って使えば役に立つ使い方ができますし、
悪意を持って使えば人を傷つけたりする事にもなるでしょう。
今週は、そんな人の心がもたらす変化についてのお話です。

「一切唯心造」という禅の言葉があり、
「全ては心(のはたらき)が作り出したものにすぎない」
という意味に解釈されます。

「善・悪」「好き・嫌い」「快・不快」「美・醜」などの感覚も
実体を持って現実に存在するものではなく、
心の中に生じる感覚や分別に名前を付けて
そう呼んでいるものなのですが、
人はこれらに影響され、時に振り回されながら生きています。
江戸時代の有名な和尚さん、
臨済宗・白隠禅師のエピソードに、こんなものがあります。

ある武士が白隠のもとへやってきて、
「極楽や地獄は本当にあるのだろうか?」と訪ねました。
それを聞いた白隠は、あろうことか
「そんなこともわからないとは、とんだまぬけがいたものだ!」
などと散々に罵ります。

怒り狂った武士は刀を抜いて斬り掛かろうとするのですが、
白隠はすかさず「これが地獄だ!」と叫びました。
武士はなるほどと落ち着きを取り戻して
「地獄の在処がよくわかりました」と頭を下げ、
それに対し白隠も「いま極楽の門が開かれましたよ」と笑ったと言います。

心の状態ひとつで、世界の見え方はがらりと変わってしまいます。
満足していたり余裕のあるときは寛容になれても、
切羽詰まっていると周りの物事に批判的になったり、
人のマイナスな部分を見てしまいがちだったり…
といった経験をしている人も多いのではないでしょうか。

その時々で、ありのままの出来事に様々な味付けがされているようなもの。
物事の見方の変化は、自分の心の状態をつかむひとつのカギになるはずです。



■今回登場したのは、禅のぼさつが宿った「こねり」

■著者紹介

Jecy
イラストレーター。LINE Creators Marketにてオリジナルキャラクター「こむぎこをこねたもの」のLINEスタンプを発売し、人気を博す。「こむぎこをこねたもの その2」「こむぎこをこねたもの その3」もリリース。そのほか、メルヘン・ファンタジーから科学・哲学まで様々な題材を描き、個人サイトにて発表中。

「週刊こむぎ」は毎週水曜更新予定です。