小麦粉値上がりに備える

原油価格高騰の煽りを受け、いろいろなモノが値上がりしている。ガソリンは言うに及ばず、電機・ガスなどの公共料金、パンやパスタ類などの食料品、トイレットペーパーやコピー用紙などの紙製品などなど。一方では円高・ドル安が進み、PCなど一部の輸入品 (iMacの新価格も円高の影響か?) は値下げされているが、家計全体の支出は2~3年前に比べ確実に増えているはずだ。

外はカリッ、中はトロッのたこ焼きをつくる

この諸物価高騰の波が、大阪の「粉モノ文化」を直撃しているらしい。先日訪阪した折には意識していなかったが、お好み焼きやたこ焼きなど、小麦粉を大量に使う食べ物は値上げ必至との報道も。たこ焼きの美味しさに味を占めた筆者、これを機会に自分で焼けるようになろうと、大阪では一家に一台といわれる「たこ焼き器」を物色し始めた。

だが、しかし。近所の家電量販店で見かけるたのは、ニクロム線ヒーターで鉄板を熱するタイプのものばかり。しかも台が大きく、収納スペースが臨界点に近づきつつある我が家では、近々持て余すことは必定。かさばらず卓上で焼けるものを……と物色したところ、ありましたよ、ナショナルのIH調理器兼用たこ焼きプレート「KZ-TK1」。IH調理器用というところに惹かれ、早速購入を決めた次第。

たこ焼き器? IH専用の南部鉄器です

プレートの上には小さな紙片が

このKZ-TK1、ナショナルから発売されてはいるが、電気は一切使用しない。箱を開けると目に飛び込むのは、プレートと取り外し型の柄、油引きに千枚通し、そして「南部鉄器検査証」の紙片のみ。IH専用の、純粋な調理器具だ。

IH専用というだけあって、プレートの底は平らに仕上げられている。平らとはいっても、14個ぶんある穴にムラなく熱を回らせるためか、ムラサキツユクサの気孔のような形となっている。

IH専用だけあって底は平らになっている

千枚通しと油引きも付属してます

実際の熱の回り具合だが、非接触放射温度計のYOKOGAWA PM112で電源投入後約3分の時点で測定したところ、やはり平らな底面に近い部分は温度が高く(200度前後) 、IHと接触しない中心部分は温度が低め (140度前後)となった。これでは焼きムラが出るかも知れないが、焼いてみなければわからぬことも確か、それっと生地を投入し実地試験に臨む仕儀となった。

IHに電源を投入し3分後にプレート表面の温度を測定。中央と周縁部では温度差があるようだ

温度管理と油引きの念入りさがコツ

使用したレシピは、NHKの人気テレビ番組「ためしてガッテン」2007年4月18日放送の「ごっつウマ! たこ焼き大革命」で紹介していたもの。放送直後に試したとき、それまで自宅で食べていたものとの出来上がりの差があまりに大きいことに仰天、以来我が家で定番化しているレシピなのだ。小麦粉の分量など詳細については、当番組のWebサイトを参照いただきたい。

この番組で紹介していた"極意"は、生地を溶くとき氷水を用いることと、焼きの過程で火加減を調整することの2点。前者は食感を損なうグルテンの生成を防ぐために、後者はたこ焼き内部に空洞をつくる (内部を蒸した状態にして効率よく「糊化」を起こす) ために重要なテクニックなのだ。

肝心の"焼き"だが、一度目は失敗に終わった。IHの温度設定は「強」、プレートの表面が200度以上となるまで熱してから臨んだのだが、油のひき方が甘かったらしい。生地が鉄板についてしまい、回転させるとき内側の"トロッ"とした部分が流出してしまった。

油をひく作業は念入りに、かつ分量多めに行うことが吉。さもないと、回転に失敗すること必至

2度目以降は失敗することもなく、うまく回転できた

二度目以降は油を多めにひいたためか、ほどほどに成功。レシピの生地はサラサラに近い状態なため、うまく回転させるのには苦労したが、3度目・4度目ともなるとプレートに油が馴染んできたのか、あまり苦ではなくなった。出来もバッチリ、外はカリッ、中はトロッのたこ焼きができあがった。

心配していた焼きムラだが、結果はオーライ。1.9kgという重量 (同じ松下から発売されているIH用焼き肉プレート「KZ-FY1」は1.5kgだ) からもわかるとおり、プレートの厚みにより熱が均等に伝わるようなのだ。さすがは熱伝導率がウリの南部鉄器、IHの時代にも生き残ることは確実とみた。岩手の技術に感心しながら大阪に思いを馳せ、横浜の地でたこ焼きを食す。ううむ、いい感じだ。タコはモロッコ産ということに、少々引っかかりを覚えるのだが。

内部がほどよく"トロッ"としたたこ焼きのできあがり

今回は、グラフはお休みです