あのアナログ盤をいま聴きたい!

USB対応のレコードプレーヤー「SONY PS-LX300USB」をMacで使う

筆者がいわゆる洋楽に手を染めたのは、忘れもしない小学6年のとき。当時千葉テレビというUHF局に「テレジオ7」なる音楽情報番組があり、そこでたまたま流れたKing Crimsonの「Frame by Frame」に心を奪われ、以降四半世紀にわたりプログレッシブ・ロックばかり聴いている。

当時は好みのバンドの音楽を聴こうとすると、当然買うのも借りるのもアナログ盤。CDのタイトルが出揃い始めたのは80年代後半のことなので、ムーブメントが衰退しつつあったプログレは基本的にアナログ盤オンリー。やがてCDで再発されるようになり、愛聴盤はすべて買い直したが、それでもアナログ盤は捨てるに忍びない。

高校生時代になけなしの小遣いで買ったP.F.M. (伊) のアルバム。後に買い増したCDには、変形ジャケの楽しさがない

なぜか。再発されたCDも"紙ジャケ仕様"を好むリスナーが多いことからわかるように、雰囲気があるから。いまだ再発されないレア盤があるから。「Atom Heart Mother」が「原子心母」、「Look at yourself」が「対自核」といった具合に、味わい深い邦題が掲載されたライナーが付属しているから。デジタルでは再現困難なノイズなど、独特の味わい深さも忘れがたい。

先日押し入れを整理していたとき見つけた、フランスのプログレバンドPulsarのアルバム「Haloween」。手元にレコードプレイヤーはなく、CD再発盤も買い損ねてしまい、ここ10年ほど聴く術がなかったが、先日SONYからUSB端子を備えたレコードプレイヤー「PS-LX300USB」が発売。早速これを拝借、喜び勇んでテストするという次第。

名盤の誉れ高いPulsar (仏) の「Haloween」。CD再発盤を買い損ねたので、今はアナログ盤が頼り

USBでもPHONOでもAUXでもOK

PS-LX300USBは、見た目も機能もごくオーソドックスなレコードプレイヤー。ターンテーブルもアームも、針を上げ下げするボタン類も、懐かしいアナログテイストにあふれているが、背面にはUSB端子×1基が配置されている。

このUSB端子が、PS-LX300USBの存在理由だ。アナログ盤をPCに取り込もうとすると、レコードプレーヤーのほかフォノイコライザーやサウンドカードが必要だが、このデバイスにはすべて揃っている。PCにUSBケーブルで接続し、入力機能を備えたサウンド編集ソフトでキャプチャすればいいのだ。なお、RCAケーブルを使えばステレオへの接続もOK、スイッチを「LINE」にすれば一般的なAUX端子に接続できるので、近頃のPHONO端子を持たないオーディオ機器でも楽しめる。

背面のUSB端子を使いPCとつなぐ

駆動方式はベルトドライブ、カートリッジはMM型

留意すべきは、駆動方式がベルトドライブだというところ。モーター軸にターンテーブルのプラッター (レコードを乗せる台座) を直結させるダイレクトドライブ方式とは異なり、モーターの振動をターンテーブルに伝えにくいという長所はあるが、ベルトの経年劣化に伴い回転ムラが発生しやすいという短所がある。筆者の如きプログレ野郎には関係ないが、アナログ盤をキュッキュッキュと前後させる"DJプレイ"も不可。

カートリッジがMM型という点にも注意。かつてのオーディオ少年・現中年には言わずもがなだが、カートリッジにはMM型やMC型、VM型など種類があり、基本的に互換性がない。PS-LX300USBでは、カートリッジ交換の楽しみはないので念のため。

Macでも聴ける、録れる!

このPS-LX300USB、音のキャプチャに必要なサウンド編集ソフトは、Windows用の「Sound Forge Audio Studio LE」しかバンドルされておらず、ともするとWindows専用か? と思いがちだが、さにあらず。それなりに準備すれば、Macでも利用可能だ。

PS-LX300USBをMacのUSBポートに接続し、システム環境設定の「サウンド」ペインで「入力」タブを開くと、「USB Audio CODEC」なるデバイスとして現れる。下準備はこれだけでOK、あとはサウンド編集ソフトを入手すればいい。ただし、Mac OS X 10.5.2にはUSBオーディオ入力の不具合があるらしく、キャプチャ時にノイズが混入することがある。そのため筆者は、テストにMac OS X 10.4.9を使用した。

Macでは「USB Audio CODEC」として認識される (画面はMac OS X 10.5.2)

Mac OS X 10.4.9でフリーソフトの「Audacity」を使いキャプチャに成功

筆者が利用したサウンド編集ソフトは、フリーソフトの「Audacity」。利用したバージョンは1.3.3β、ユニバーサルバイナリ化された最新版だ。キャプチャした音はWAVやAIFFで録音できるほか、プラグインを追加すればMP3に書き出せる。編集機能も装備されているので、針を下ろした直後のズズッという音を取り除いたり、フェードイン / アウトさせたりなどの処理もOK。なお、事前にAudacityの環境設定パネルで「オーディオI/O」を開き、レコーディングデバイスに「Core Audio: USB Audio CODEC」を選択しておくこと。

Audacity側の設定も忘れずに

肝心のPS-LX300USBの音質だが、正直なところよくわからない。20年前プリメインアンプ経由で聴いていた頃に比べると、おそらく格段によくなっているのだろうが、アナログ盤特有のノイズはあるし、CDに比べると透明感に欠ける。とはいえ、音質がCDに大きく劣るわけでもなく、なによりアナログ盤を気軽に楽しむことができる。この気軽さに惹かれるのであれば、購入して損はないKOMONOといえるだろう。

○SONY
PS-LX300USB
機能 ★★★
価格 ★★★
楽しさ ★★★★
怪しさ ★★
衝動買い ★★★★
TOTAL ★★★★