iTunesに頼りきり、それでいいのか?

独占・寡占は技術的停滞をもたらす。この仮定は、Webブラウザ「Internet Explorer」が約5年にわたりメジャーバージョンアップしなかった(IE6のリリースは2001年、IE7は2006年)ことからも、ある程度の真実味を帯びてくるはず。FirefoxやSafariの台頭という刺激がなければ、IEの進化はさらに遅れていたのではないだろうか。

話は変わって、ジュークボックスソフト「iTunes」。登場するや否やMacユーザを中心にブレイク、Windows版もリリースされ、いまや押しも押されぬ存在感を誇る。オフラインで動作可能なアプリケーションであり、Webブラウザほど正確には測れないだろうが、おそらくは断トツのシェアを有しているはず。

つまり、iTunesそのものも"IE化"する可能性がある、と考えたほうが妥当だ。iPodとiTunes Storeという存在は、確かにiTunesを使い続ける理由にはなるだろうが、プレイヤー本来としての機能はどうだろう? AAC / MP3エンコーダの性能が飛躍的に向上したという話も聞かなければ、技術的なブレイクスルーを感じさせる新機能も目にしていない。ひょっとすると、iTunesはすでにIEと同じ轍を踏んでいるのかもしれないのだ。

ではiTunesに好敵手がいるかどうかというと……Firefoxと同じMozillaの技術を活用した「Songbird」は、なかなかイイ線を行っているのではなかろうか。洗練の度合いという観点からすると、まだまだ同列に論じるのは難しいが、0.5RC1はかなり実用的に仕上がっている。そこで今回は趣向を変え、オーディオ系KOMONOには必須のジュークボックスソフトとして、このSongbirdを検証してみよう。

ジュークボックスソフト界のFirefoxになれるのか?

ポイントは「拡張性」

ジュークボックスソフトに必須の機能としては、音楽CDからのリッピングとエンコード、サウンドライブラリの構築、ポータブルオーディオへの転送 / 同期が挙げられる。なかでも音楽CDからのリッピングとエンコードは最重要だが、Songbirdはこれに未対応なのだ。しかし、それでも魅力的と言えるのには理由がある。

プラグインで機能を拡張できるところがポイント

1つは、プラグインによる機能の拡張。Songbird 0.5RC1では、MP3 / AACはもちろんWMAやOgg Vorbisといったコーデックに標準対応しているのだが、「QuickTime Playback」プラグインをインストールすると、iTunes Storeで購入したDRM (Fairplay) 付きの楽曲も再生できてしまう。Windows限定だが、「Windows Media Playback」プラグインの力を借りれば、WMAの再生も可能だ。

リッピング / エンコード機能が未実装でも用が足りてしまうのは、iTunesで構築したサウンドライブラリをインポートする「iTunes Library Importer」プラグインの力によるもの。それ以外にも、iTunesに次ぐ規模のオンライン音楽配信サービスへ直接アクセスする「eMusic Music Store」プラグインなど、サウンドライブラリを拡充するためのプラグインが用意されている。

「iTunes Library Importer」でiTunesライブラリをインポートできる

iPodなどポータブルオーディオのサポートも、プラグインの機能により実現されている。iPodならば「iPod Device Support」、Creative ZenなどのMTP対応デバイスであれば「MTP Device Support」を利用できる。Windowsユーザならば、もっとシンプルに「USB mass-storage device」を使うという手もアリだろう。

「iPod Device Support」プラグインでiPodに曲を転送 / 同期することもOK

なんだこりゃ? なプラグインたち

もう1つのSongbirdの魅力は、種類豊富なスキン……と書くべきなのかもしれないが、筆者個人の興味対象はやはりプラグイン。前述したiTunesやiPod用プラグインといった"ごく普通"なものから、これをジュークボックスソフトに入れてどうするのか? と尋ねたくなるような"変なモノ"まで、すでに品揃えは十分だ。

なかでも「SQLite Manager」は、興味深い一品。メニューバーから[ツール]→[SQLite Manager]を実行すると、Songbirdのウインドウなど一顧だにせず自前のウインドウを表示、そこは単なるデータベースビューアという代物。Apple Mailで受信したメッセージの見出しを表示するなどしてみたが、この機能をジュークボックスソフトで使う必要があるのかは、甚だ疑問だ (そこがステキ!)。

Apple Mailのメールボックスを分析できる「SQLite Manager」

「SongTapper」もイイ感じ。同名の楽曲専用検索サイトにアクセスするためのプラグインなのだが、その検索方法というのがユニークで、スペースキーを叩いて入力した曲のリズムをもとに、一致する曲名 / アーティストを表示するというものなのだ。筆者のリズム感に問題があるのか、King Crimsonの「21st Century Schizoid Man」を思い出しながらスペースキーを叩いたところ、何故かZZ TOPの「Bad To The Bone」がヒットしたが……iTunesでは体験できない感覚にとらわれること確実だ。

リズムで曲を検索する「Song Tapper」

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