紙ベースの個人情報流出を防ぐべし

個人情報防衛のためハンドシュレッダーを吟味する

家庭における個人情報流出の経路は2とおりある。その1つはいうまでもなく「インターネット」。住所や氏名、電話番号といった情報がオンラインを通じて処理されるうち、よからぬ筋へ情報が流出してしまう。SSLや各種暗号化処理など、第三者による傍受を遮断する技術は普及しているが、情報を渡した企業の内部に不心得者が潜む場合には、我々エンドユーザに防ぐ手だてはない。

もう1つは「紙」だ。日々ポストに投げ込まれる郵便物には、住所と名前という個人情報が必ず記載されているはず。クレジットカードの請求書に至っては、どこでどのような買い物をしたかまでバッチリ書かれている。紙を適切に処分しなければ、なにかの拍子で誰かに見られるともかぎらない。

その2つのどちらが我々の手を煩わすかというと、圧倒的に後者だろう。オンラインショッピングそれ自体は、入力した住所を抹消するなどの事後処理は必要ないが、紙はなにもしないかぎりそのまま残る。デジタル情報はボタン1つで消去できるが、紙は手を動かさなければならない。シュレッダーという便利な機械もあるが、生じるシュレッダー屑は元の紙より膨張するので後始末が面倒。かといってそのまま他のゴミと混ぜて出せば、カラスがゴミ袋を食い破り、自分の"ちょっとアレ"な個人情報がご近所さんの目にとまる……かもしれない。

というわけで、シュレッダー屑を発生させずに個人を特定する情報を消し去るKOMONOを探したところ、形状の異なる手動シュレッダー2つを発見。早速購入、ここに使い心地等を紹介する次第。

一刀両断ならぬ"一刀みじん切り"

最初に試したのは、サンスター文具が販売する「シュレッダーはさみ」。いわゆる洋鋏は、まっすぐな2本の刃がX状に交差するデザインだが、この鋏は本来交差すべき部分から少しずれた位置に支点があり、そこから約90度曲がった刃が取り付けられている。

最初にためした「シュレッダーはさみ」

このような3層構造の刃で個人情報を裁断する

使い方は、普通の洋鋏と同様。個人を特定される情報がプリントされた部分に向け、ジョキジョキと切り込みを入れればOK。紙全体を裁断するシュレッダーとは異なり、隠蔽したい部分だけ狙い撃ちできるわけだ。

この「シュレッダーはさみ」、なかなかうまくできている。"上あご"に相当する上部の刃は2枚構造で、下からせり上がってくる"下あご"と擦れることにより、幅2mmほどの細長い紙片を切り取る。"下あご"には波形の刃が複数取り付けられているので、"上下のあご"が擦れる際に(ほんのわずかだが)張力で縦長の紙片を横方向に切断、いちど鋏で切るだけで約2mm四方のシュレッダー屑ができあがるのだ。

ギザギザの刃で縦長の紙片をマス目状に切る

約2mm四方に裁断されるので、何度も刻みなおす必要はない

光学メディアを破壊するためのツメも備えている

切れ味だが、波形の刃で横方向に切断するための張力が必要なためか、少し引っかかるような印象。勢いをつけてジョキン、と鋏を入れなければ、"上下のあご"が紙を噛んでしまうことも。横方向に切断するには若干の張力が必要なため、紙の端を切りにくいという弱点もある。

光学メディアを破壊するためのツメが装備されていることは、PCユーザにとって高ポイント。支点付近から突き出たツメを対象物にあてがい、缶切りを使うような気持ちで力を入れると、バリッと割れる。これで安心してCD-RやDVD-Rを廃棄できるというものだ。

デザイン重視ならばコレもおすすめ

刃の切れ味は良好、力を入れなくてもスパッと切れる「Gav」

もう1つ試したのは、長谷川刃物の「Gav」。レシートや請求書をガブガブと食べるように裁断することから命名されたらしく、POPなデザインとともに愛着を感じさせてくれる。

裏面にあるロックを外すと目に入るのは、"上下のあご"内側に取り付けられた3枚刃。イメージとしては、2~3本の鋏を同時に扱う美容師といったところ。これをホチキスのようにパチッとやるか、机の上に置いた状態で"上あご"を手で軽く押し下げるかすれば、紙を切断できる。

裏面のロックを外してから利用する

しかし、気になることが……刃と刃の間が広いのだ。刃の支点には回転軸のような部品があり、どうしても一定の厚みが生じてしまうことは理解できるが、刃を入れる箇所を慎重に選ばないと、「東京都中央区日本橋」などの文字列がそのまま切り出されてしまうことも。タマネギのみじん切りの要領で、紙を90度回転させ、短冊状になった紙片に刃を入れればさいの目状に刻むこともできるが、今度はシュレッダー屑が"下あご"に入り込む、という面倒が待っている。

一度刃を入れるだけでは不足、何度か"GavGav"する必要あり

タマネギのみじん切りの要領で切ればいい

とはいえど、このスタイリングが気に入る向きも多いはず。完全に判読不能な状態になるまで刻みたい、徹底して個人情報秘匿を、という用途には若干物足りない部分もあるが、見た目で選ぶのもまた一興だろう。

今回は、グラフはお休みです