手軽で美味しい「からあげ」を考える

揚げないからあげ、その味やいかに

筆者には、年に幾度か"独身"に戻る期間がある。福岡出身の妻が子供を連れて帰省するからだ。約2週間の帰省が少ないときでも年に2度、都合1年のうち11カ月は独りで過ごすことになる。その間の炊事洗濯はもちろん自力で行うが、これがバカにならない。洗濯はともかく、日に3度の献立を考えるのが面倒なことこのうえない。

そんなときつい選んでしまうのが「からあげ」。主菜によし副菜によし、ビールのつまみにもよし。スーパーでもコンビニでも、食品を扱う店ならばほぼ確実に入手できる。厳密にはからあげとは分けて考えるべきだが、OSのコアの如き名前の爺さんが看板キャラを勤めるチェーン店もある。味付けや価格はそれぞれだが、どの店でどの商品を購入しても大きく外すことがない、無難さも兼ね備えた"独身男定番の一品"といえる。

一見するとからあげだが、実は……

だが、しかし。冷めたからあげは扱いが難しい。下手に電子レンジで温め直すと、ジューシーさが損なわれるうえ、皿に接する部分が油でベットリしてしまう。かといって冷めたままでは美味しさが半減。せっかくの冷たいビールも台無しだ。

やはりからあげは揚げたてにかぎるが、さすがに自力で揚げるほどの根性はない。できればオーブンもしくはレンジ、譲歩してもフライパン。KOMONO探しは一休み、今回は"漢でもラクにつくれる美味しいからあげ"を追求してみたい。

"揚げずに焼くからあげ"を試す

近所のスーパーでまず目指したのは、小麦粉など粉製品が置かれたコーナー。鶏肉にまぶして使うからあげ粉の棚を発見、いくつか製品を手に取るが、どれも油で揚げるものばかり……と思いきや、ありました。ヒガシマル醤油が製造する、その名も「揚げずにカリッとサクサクからあげ」。パッケージを見るかぎりでは、かなりからあげチックな外観。フライパンでかんたん! というコピーと、クリスピーな歯ごたえを期待させるパッケージ写真を信じ、買い物カゴへ投入。

その隣にも、同じ会社の製品で「まぶして焼くだけ手羽焼調味料」が。こちらはからあげではないが、花山椒と焼塩でうま味引き立つというコピーに惹かれ、あわせて購入することにした。

作り方だが、パッケージ裏の説明に従い、ビニール袋に切った鶏肉とからあげ粉(もも肉1/2枚につき1袋)を投入、しばらく揉んだあと5分ほど放置。フライパンに薄くサラダ油をひき、粉になじんだ鶏肉を焼けば一丁あがりだ。

このようにビニール袋で揉んだあと、5分以上置く

料理に不慣れの独身男が陥りそうな注意点をいくつか挙げておこう。1つめは、フライパンにかぶせるフタ。鶏肉は弱火で10分ほどかけて焼くのだが、フタがなければ鶏肉内部に熱がまわらず生焼けになる。2つめは、火力。強火にすると表面が先に焼けてしまい、中に火がとおる時分には黒こげ確実だ。3つめが、鶏肉の部位。スーパーで販売されている骨なしの鶏肉は、もも肉とむね肉の2種類あるので、ケチらずにもも肉を購入すべし。この3点さえ守れば、失敗することはないだろう。

フライパンで焼くときには必ずフタをかぶせること

肝心の風味だが、にんにくとしょう油がほどよくマッチ、内部までしっかり染みている。味については合格点といっていいだろう。しかし食感は……米の粉でできた粒々がサクサク感を演出してくれることは確かだが、油で揚げた場合に比べるとベットリ感は否めない。台所のスペック上(PC誌的表現ですな)揚げ物が難しい、だがどうしても熱々のからあげを食べたい、という強い動機がなければリピートするかどうかは微妙なところ。

焼き上がりはこんな感じ。サクっとしたからあげの食感にはかなわないが、この粒々がアクセントになる

それよりもお勧めなのが、あわせて購入した「まぶして焼くだけ手羽焼調味料」。こちらはクリスピー感こそないものの、ピリッと効いた山椒がアクセントになり、ビールによく合う。衣が薄いぶん、油ベットリ感も少ない。手羽先を使えば包丁を使わずに済む、というメリットも。独身男にはこちらがお勧めだ。

こちらは「まぶして焼くだけ~」を使った手羽焼。スパイシーでビールによく合う

冷凍からあげに一工夫

上記2製品は時間に余裕があるときはいいが、ちょっと小腹が空いたときにはヘビーすぎる。酒の肴にもう一品という場合に備え、冷凍のからあげを用意しておくのも悪くない。

しかし、侮れないのが冷凍食品。ただやみくもにチンした場合と一工夫加えた場合では、味も見た目も変わってくるのだ。特に食感がモノをいうからあげの場合、いかにサラッと油っぽさなく仕上げるかが重要なポイントになる。

普通の皿でチンした冷凍からあげ(左)と竜田揚げ(左)。油が滲み出ているうえ、衣もベットリしている

そこで取り出しましたるは、楽天のショップで購入した「ふしぎなお皿」(同じ製品が別名で販売されていることも)。電子レンジのマイクロ波分子で遠赤外線効果を発生させ素材の旨味を封じ込めるという話だが、事の真偽はさておき、冷凍のからあげを普通の皿に載せてチンしただけの場合と、ふしぎなお皿を使った場合の差は歴然。見た目もからっと油っぽさなく仕上がるのだ。

噂の「ふしぎなお皿」。1枚あたり3,000円以上するが、それなりの効果はある

その秘密は、おそらく波打った皿の表面。からあげを温めると吹き出す蒸気が皿との間にこもらず、外へ抜け出すため、カラっとするのだ。しかも油は波の凹みに落ちるので、油のベタっとした感じは確実に減る。この皿でなくてもいいような気はするが、ただの波打った皿ではないことはからあげ好きならば1枚持っておきたいアイテムといえるだろう。

この写真では分かりにくいが、皿と接した部分の衣にベットリ感は少ない。保温効果もあり、数分経ってもアツアツのまま

今回は、グラフはお休みです