おなかの暗号が重いけど

これなら手が出るMac用指紋認証装置「@SECURE/fs」

指をかざすだけで特定個人か否かを検証できる「指紋認証装置」。数年前からUSBで接続するパッド型の周辺機器が出回り始め、ふと気付けば指紋認証装置を標準装備したノートPCも珍しくない。暗号によるファイルの保護、ユーザIDにパスワードが暗黙の了解となっていたPCにおけるユーザ認証も、指紋認証技術の確立と装置の低価格、すなわち"KOMONO化"により急速に変わるに違いない。

調べてみると、指紋認証装置の読み取り方式はいろいろ。たとえば、静電容量の幅をとらえる「静電容量方式」、電界強度の変化を測る「電界強度測定方式」、圧力の違いを調べる「感圧式」は、指紋の凹凸が生み出す微妙な情報を頼りに指紋を見分ける。LEDなどの光を照射して指紋を読み取る「光学式」、指先の表面温度と室温の違いにより指紋を見分ける「感熱式」もある。光学式には、表皮の奥底を見透かす「真皮読取型」もあるらしい。なんと神秘的な(以下略)

読み取った指紋が保有するデータと一致するかどうか確認する照合方式にも、いくつかの種類がある。指紋の分岐点など特異な部分を見る「特徴点抽出」、指紋が隆起している部分(隆線)の太さ/間隔で判断する「周波数解析」、全体を画像データとして比較する「パターンマッチング」などがそれだ。

さておき、原稿の執筆など日常の作業にMac OS Xを使う筆者、"KOMONO価格帯"に属すMac対応の指紋認証装置がない、という理由で常用する環境を構築できずにいた。そこへMac用KOMONOの販売で著名なアクト・ツーが「@SECURE/fs」を発売するとの報あり、ソレッとばかりに暫時の借用を願い出た次第。

初めて押したUSBのソコ、とっても気持ちがいいもんだ

この@SECURE/fs、SONYのストレージ付指紋認証トークン「FIU-850-N03」をベースにした製品。早い話が個人認証機能付きのUSBメモリであり、税込みの標準小売価格は19,800円。対応システムはMac OS X 10.4.4以降、Windows用ソフトは同梱されないため認証機能はMacのみ対応だが、Windowsでも一般的なUSBメモリとして動作する。Vistaの目玉機能「Windows ReadyBoost」にも対応しないため、あくまでMacユーザを対象とした製品と考えて差し支えないだろう。

SONYの「FIU-850-N03」をベースにした製品

Windowsでも利用できるが、あくまで普通のUSBメモリとして。Windows ReadyBoostにも対応しない

前述した指紋センサーには、静電容量方式を採用。パターンマッチングにより照合が行われ、本人認証の精度を示す他人受入率と本人拒否率は、それぞれ0.001%以下と1.0%以下(照合レベル4、SONY調べ)とのこと。静電容量方式は適度な湿度が必要で、大汗かき野郎のベトベトな指はもちろん、乾いて荒れた指、傷のある指の認証は苦手な傾向があるが、その他人受入率と本人拒否率の低さからすると、実用上問題になることはなさそう。

白いカバーをスライドさせると、センサー部が現れる

利用できる機能の1つは、指紋認証を経なければ保護領域にアクセスできない、というセキュアなUSBメモリとしての機能。1GBある容量は保護領域と非保護領域に二分割、付属の管理ソフト「fs設定ユーティリティ」の機能を使うと、自由にサイズ変更できる。@SECURE/fsが1つあれば、ファイルの重要度に応じてUSBメモリを使い分ける必要はなくなる。

「fs設定ユーティリティ」を利用し、指紋の登録や保護領域のサイズ変更を行う

このように3回指紋を取り込み、照合テストをクリアすれば登録は完了

指紋で認証されれば、通常は現れないボリューム(FIU-850 SS)が現れる

ログイン時のユーザ認証に利用できることも魅力の1つ。3,980円で別売のソフト「@SECURE/fs Login」が必要になるが、ユーザ名やパスワードを入力することなく、指をセンサー部に載せればログインは完了。ファストユーザスイッチにも利用でき、USBポートから取り外せば強制ログアウトすることも可能。管理者の認証パネルにも使えるので、管理者権限を行使するときにも便利なこと請け合いだ。

別売の「@SECURE/fs Login」を利用すれば、指紋認証でログインもOK

管理者としての認証にも利用できる

どんなにどんなにもがいても

@SECURE/fsの使用感は、当たり前の話だが、指紋の検知がスムーズに運べば特に言うことはなし。「fs設定ユーティリティ」では、10本の指すべての指紋を登録できるため、利き手やUSBポートへの差し込み位置に気兼ねすることもない。「練習」パネルで経験を積み、ちょっとしたコツさえ体得すれば、安全性を確保しつつパスワード入力という手間から解放されること確実だ。

計10本の指をどれでも登録できる

だが、しかし。指先が発汗している様子はないものの、食事の直後は指紋認証にたびたび失敗。普段は80点以上が当たり前、優等生のはずの「練習」パネルも40点前後を連発してしまう有様。@SECURE/fsに採用されている静電容量方式には、適度な湿り気が必要とのことだが、食後は指先から発汗するのか? サーモグラフィーで指先の温度変化を調べれば、認証成功率との間になんらかの因果関係がありそうだが、今回は断念した。

ともあれ、ログイン時に利用するための機能は別売ながら、20,000円を切るKOMONO価格帯でMacにおける指紋認証を実現するこのUSBトークン。安全性と利便性の両方を重視する向きにとっては、さほど高い買い物ではないはずだ。

○アクト・ツー @SECURE/fs
機能 ★★★★
価格 ★★★
楽しさ ★★★
怪しさ ★★
衝動買い ★★★
TOTAL ★★★