音楽コンテンツで他社をリードし続けるauが、"次の一手"を繰り出した。「LISMO」がソニーとタッグを組むことで、ケータイで完結していた音楽が、外の世界へと広がっていこうとしているのだ。新プラットフォーム「KCP+」を導入した3機種から始まる新たなLIMSOとは、どのようなものなのか。新端末の登場を間近に控えるなか、サービスの全体像を改めてKDDIに聞いた。

LISMOでケータイの音楽サービスをリードするau

"音楽のau"と呼ばれるほど、auは音楽関連のサービスに強い。着うたフルをいち早く導入したり、PCとケータイでの統合環境・LISMOを提供したりと、音楽サービスに関しては常に他社を一歩リードしている。

事実、着うたフルの伸びも順調で、2007年10月には累計1億5,000万ダウンロードを突破した。auの音楽への取り組みを振り返り、KDDI コンテンツ・メディア本部 メディア推進部 LISMO統括グループの千葉好信氏はこう話す。

「ケータイ単独で音楽を聴けるのが着うたフルでしたが、ハードの制限などで、やれることに限りもあります。そこで、PCを組み合わせたLISMOを始めました。LISMOはauの音楽サービスの総称で、PCに音楽を保存しておいたり、『au Music Port』で音楽を聴けたり、『うたとも』というSNSを提供したりと、音楽を切り口にサービスの幅を広げてきました」

「LISMO」はauの音楽サービスの総称。KDDIでは、LISMOの一環として、着うたフルやリッピングしたHE-AACの楽曲、ケータイのアドレス帳などを管理する「au Music Port」(上画像)を提供している

今回の話を伺った、KDDI コンテンツ・メディア本部 メディア推進部 LISMO統括グループの千葉好信氏

夏モデルとして投入された「ウォークマンケータイ W52S」。2GBの大容量メモリを内蔵し、音質も良好。このような音楽ケータイを使うユーザーは、着うたフルのダウンロード数も平均以上だという

着うたフルのダウンロード数も、「LISMOが始まってから、伸びている」(千葉氏)というように、LISMOの取り組みが功を奏し、ケータイで音楽を聴くのは、もはや当たり前になりつつある。ウォークマンケータイのように、音楽を聴きやすいケータイを積極的に投入している。

「HDD搭載ケータイやウォークマンケータイを投入してきましたが、このような機種を利用するユーザーは、着うたフルのダウンロード数も平均より高くなっています。特に、夏モデルのW52Sでは、その傾向が顕著ですね」(千葉氏)

一方で、「ホームオーディオや、携帯音楽プレイヤーで音楽を聴いている人たちもまだまだいます」(千葉氏)と、着うたフルが取りこぼしているユーザーも、依然として多い。また、KDDI側が想定していたよりもPC初心者も多かった。

「ソフトのインストール方法がよく分からないという声も予想以上にいただきました」(千葉氏)。

そのような状況のなか、新プラットフォームの「KCP+」に対応した冬モデル3機種から、新たな音楽サービスが始まる。それが、ソニーとの提携だ。

ソニーとの提携で実現した機器を問わないシームレスな楽曲再生環境

KDDIは、冬モデルと同時に、音楽サービスでのソニーとの提携を発表した。新たに「LISMO Port」と呼ばれるソフトを投入する。

LISMO Portは複数のソフトで構成され、楽曲管理には、ソニーの音楽ソフト「SonicStage」の技術を取り入れた「SonicStage for LISMO」を使用する。このソフトはソニーのウォークマンやネットジュークといった音楽製品とも連動が可能。つまり、ケータイでダウンロードした着うたフルを、これらの機器に転送して再生できるようになるのだ。

「ソフトウェアの面ではソニーさんのノウハウをいただきつつ、機器で連携していく、という形です。今までは、ケータイとPCでしか聴けなかった着うたフルを、環境に合った製品で再生できるようにしていきます。シングルトラックをケータイでダウンロードする人は増えていますから、その面ではソニーさんにもメリットのある提携といえるのではないでしょうか」(千葉氏)

KCP+を投入した3機種(左からW54SA、W56T、W54S)

上の3機種では、ソニーのウォークマンやネットジュークと連動した「LISMO Port」を利用できる

auの新プラットフォームに対応した3機種では、ソニー製品で使用されるATARC形式の楽曲が再生可能になる。家で聴くために、PCやネットジュークに保存した楽曲を、ケータイで外に持ち出すことができるのだ。

では、実際、どのような点が進化したのか。次回は、LISMO Portの詳細や、LISMOの今後の展開をお伝えしていく。