以前に比べ、おサイフケータイを利用する場所は飛躍的に増加している。それに伴い、おサイフケータイで決済している人を見かけることも多くなった。そのような状況の中、会員数や対応レジを急速に増やしているサービスがある。それが、NTTドコモの提供する「DCMX」だ。今回は、「おサイフケータイ初心者」に向け、「DCMX」の仕組みや特徴を解説する。

DCMXはiDと書かれた店舗で利用する

DCMXはiDというプラットフォーム上で展開されるクレジットカード。このマークがあるお店で利用できる

コンビニや居酒屋などで「iD」のロゴを見かけたことがある方は多いのではないだろうか。だが、「iDとあなたのケータイに搭載されているDCMXの関係は?」と聞かれると、とたんに答えられる人は少なくなる。

iDとDCMXの関係を既存のクレジットカードで例えると、前者は「VISA」、後者は「三井住友カード」のようなもの。つまり、iDという共通のプラットフォームの上でドコモが展開する、クレジットサービスがDCMXなのだ。

iDには、DCMXのほかにも「三井住友カードiD」や「イオンiD」など、ドコモ以外が発行するカードも存在する。これは、VISAのプラットフォーム上で「三井住友VISAカード」や「イオンカードVISA」が発行されているのと、同じだと考えると分かりやすいだろう。

筆者も一般のユーザーに「自分のケータイでiDが使えるのか」と質問されることがある。おサイフケータイ初心者にとって、iDとDCMXの区分はなじみのないものだ。実際、ドコモでも「『DCMX iD』というように広告などの表記も改め、(ユーザーにとっては)両者が同じものであることを訴求しています」(NTTドコモ プロダクト&サービス本部 DCMX部 販売促進担当 藤巻宏司氏)と、より両者の関係を分かりやすくするよう工夫を行っている。

DCMXはiDというロゴが書かれた店舗で利用する。まずは、これを覚えておきたい。

今回の話を伺った、(上段左より)NTTドコモ プロダクト&サービス本部 DCMX部 販売促進担当部長 相沢そのみ氏、同本部 DCMX部 サービスデザイン担当部長 森山浩幹氏、(下段左より)同本部 DCMX部 販売促進担当 藤巻宏司氏、同本部 マルチメディアサービス部 クレジット事業iDサービス企画担当課長 横内禎明氏

利用できる店舗は続々と拡大中

では、なぜ、ドコモがクレジットカードなのか。その狙いを改めて聞いた。

「おサイフケータイを始めた際には、ケータイの世界には、クレジットカードのプラットフォームがありませんでした。そこで、イシュア(カードを発行する会社)間でやり取りが可能なiDを作りました。言い換えると、ビジネスができる環境を作ってきた、ということになります。ただ、環境を作っただけではビジネスになりません。そこで始めたのが、クレジットサービスのDCMXです」(同本部 DCMX部 サービスデザイン担当部長 森山浩幹氏)

まずは、クレジット決済のプラットフォーム(iD)を作り、その上で展開するカード(DCMX)を自らも発行する、というのがドコモの戦略だ。結果、iDの会員、利用シーン共には大きく広がった。

6月30日時点でのDCMX/DCMX miniの会員数は、約285万人。iD全体の会員数も、8月末で399万人と、利用者は急増中だ。利用シーンの拡大も著しい。

「現在では、iDのリーダー/ライター(読み取り機)は約20万台設置されています。導入を内定したところまで含めると合計で35万台の設置の見通しがあり、今後も拡大していく予定です」(同本部 マルチメディアサービス部 クレジット事業iDサービス企画担当課長 横内禎明氏)

8月には、ネットショップでの決済も行えるようになったため、iモードでの買い物に利用することも可能だ。また、中小の飲食店などで導入可能な、iD対応のネットレジも既に開発されている。今後は、利用できる店舗もさらに増えていくはずだ。

カシオ計算機が開発したネットレジ(「TE-2500」)。中小の飲食店でも導入可能な格安価格のため、iDが利用可能な店舗は今後も増えていくだろう

申し込みも簡単で支払いもスピーディ

DCMXは、一般に「ポストペイ」と呼ばれる後払い方式で、SuicaやEdy、nanacoといった、事前にチャージが必要な「プリペイド」方式と区別される。「事前にチェックしてお金がない、というのはいやですよね。チャージがいらないからこそ、気軽に使えるのです」(同本部 DCMX部 販売促進担当部長 相沢そのみ氏)と、手軽に利用できるのが特徴だ。

DCMX miniから通常のDCMXへのアップグレードも簡単。あらかじめネットワークにつながったケータイならではのメリットといえるだろう

手軽さは申し込み時から一貫している。ドコモでは902iSシリーズ以降、すべてのおサイフケータイに「DCMXアプリ」を内蔵しているため、ネットワーク暗証番号だけで、簡単にDCMX mini(1万円まで使えるDCMXの簡易版)を申し込めるのだ。DCMX miniから通常のDCMXへのアップグレードもアプリ上から簡単に行える。

申し込みさえ終われば、あとは使うだけ。先に述べたように、チャージがいらないので、残高を気にせず、気軽に決済を行えるはずだ。また、「通常のカード決済では、小額のものも一回センターに照会をかけますが、iDではそれを読み取り機側で行えるようにしています」(横内氏)という理由から、支払いもスピーディ。急いで支払いたいときには、現金以上に便利だといえる。もちろん「高額のものはパスワードが必要など、セキュリティ面にも配慮しています」(横内氏)というように、安全面でも抜かりはない。

支払いは、ケータイをリーダー/ライターにかざすだけ。小額であれば、パスワードもいらず、現金より素早く支払いが可能となる

では、あえてケータイでクレジットを利用するメリットはどこにあるのか。次回は「DCMXならではのメリット」に焦点を絞って解説していきたい。