連載コラム『あなたの家計簿見せて! "給料減少時代"の家計診断』では、相談者のプロフィールと実際の家計簿をもとに、5人のFPが順番に、相談者の家計に関する悩みについての解決策をアドバイスします。


【相談内容】
今年の4月から高校3年生の息子がいます。高校2年生の夏にニュージーランドへホームステイに行き、興味を持ったらしく、大学は本人が海外の大学へ行きたいと言いはじめています。できれば自宅から通える大学へ行ってもらいたいと思っていたのですが、子どもがやりたいことを応援してあげたい気持ちもあります。ですが、次男も今年の4月から私立高校の1年生になるため、費用の面でどのようにやりくりしていったらいいのかが心配です。アドバイスをよろしくお願いします。

相談者プロフィール

相談者の家計状況


【プロからの回答です】

  • 子が希望する道へ応援したいという気持ちは、親なら誰しも抱くもの。子の夢が叶うなら、必要な資金を工面することも苦ではなく喜びです。ただ、何をするにも家計のサイズに合った内容であることが重要ではないでしょうか。大竹様も費用面でのやりくりについて心配されている通り、家計の収支・資産状況を見ながら、どこまでの資金的な支援が可能かを見ていきましょう。

(※詳細は以下をご覧ください)


我家の家計から考える「教育費」

「自宅から通える大学へ行ってもらいたかった」という大竹様は、自宅から通える大学へ進学することを想定して、それぞれ400万円程度の大学費用を用意されていました。ところが、ご本人の希望で海外の大学という選択肢が出てきました。では、ここで、自宅通いで私立大学へ進学した場合の費用と、海外の大学へ進学した場合の費用を比較してみましょう。

  • 自宅通いで私立大学へ進学:5,187,387円(理系)、3,856,737円(文系)(※1)

  • 米国の大学へ進学:年間200~350万円が目安(200万円×4年=800万円)

海外の大学へ進学する場合には、大学費用の他に海外での生活費がかかります。留学費用は、授業料のほか、滞在費、食費、交通費、教材費、通信費も含めて考えます。年間200万円から350万円が目安と言われています。授業料は進学先により大きく異なりますが、州立総合大学で13,000ドルから24,000ドル、私立大学ではそれ以上かかります。年間200万円と少なめに想定しても、自宅通いで私立大学文系へ進学の場合との差額は、およそ415万円です。予定していた金額を大幅に超えてしまうことになります。

※1 文部科学省「私立大学等の入学者に係る学生納付金等調査結果について(2013年度)」

家計の1カ月の支出状況を見ると、家賃(14万円)が手取り額の32%も占めています。これを25%くらいに抑えるのが理想ですが、その他の支出で特に節約を要するところは見当たりません。教育費について、高校の学費だけではなく、高校3年生では塾へ通うことも想定され、受講する科目数によって金額は異なりますが、90万円から200万円ほど必要になることもあり得ます。大竹様は、2人のお子さんの教育費を計画的に学資保険と定期預金により、それぞれ400~450万円ずつ準備しています。その金額が「我家の家計から考える進学プラン」と捉えることができるのではないでしょうか。

「制度」を利用する

家計のやりくりでは、足りない金額を捻出することが難しい場合には、資金の出し手を他に頼るという方法もあります。

教育費が足りない場合、「奨学金制度」や「国の教育ローン」の利用を検討する方も少なくありません。国の教育ローンを利用する場合、固定金利2.25%、最長15年の返済期間で返済が可能です。海外留学資金の場合は450万円までが一人当たりの融資限度額になっています。ただし、ローンであるため、借りる金額の他に利子の支払いが必要になります。

例えば、海外留学資金として、400万円を10年返済で借りた場合、月々の返済額は37,600円となり、総支払額は4,466,600円に。利子の支払いは約47万円になります。

また、「教育資金の一括贈与に係る贈与税の非課税制度」により、教育費を祖父母から支援してもらうという方法はどうでしょう。この制度は、銀行等に専用口座を開設し、30歳未満の孫等に教育資金を贈与した場合に非課税となるものです。この資金は、子・孫ごとに1,500万円までを非課税としています。(※2)教育資金の使用目的を明確にするため、金融機関に領収書を提出する必要がありますが、30歳までに使い切れなかった分については、その時点で贈与税がかかります。

まとまった金額ではなく、その都度教育費の支援を受ける方法もあります。扶養義務者と子の間でその都度支払われる教育資金は、贈与税がかかりません。扶養義務者とは両親だけではなく、祖父母も含まれます。祖父母が孫の大学の入学金や大学費用を支払っても贈与税はかからないということです。その都度必要な教育費の支払いを頼れる祖父母がいるなら、甘えてもいいかもしれません。

※2 適用期間を平成25年4月1日から平成27年12月31日(現行)までを平成31年3月31日まで延長とすること、教育資金の範囲に通学定期代、留学渡航費等を加えることなどが、15年税制改正大綱に盛り込まれています。

家計サイズにあった教育費プラン

このような選択肢を並べた上で、我家はここまでは支援できるという範囲をお子さんに示し、話し合ってみてはどうでしょうか。教育費は計画通りに準備できたものの、大幅に想定額を超えてしまうとなると、夫婦の将来の老後資金の備えにも影響してきてしまいます。借りる選択も一つですが、家計サイズにあったプランの大きさを見つめ直すことも必要かもしれません。どうしても夢を実現するという強い思いがあれば、就職後に自分のお金をつくってから、海外の大学院へ留学するという選択肢もあります。

(※写真画像は本文とは関係ありません)

<著者プロフィール>

(株)プラチナ・コンシェルジュ ファイナンシャルプランナー 村松祐子

大学卒業後、大手証券会社に勤務。外国株式部、投資コンサルティング部、調査部を経て、資産運用コンサルタントからFPへ転身。子どもから大人へ投資と学習の普及を中心に、ライフ&マネープランの相談・執筆・セミナーなどで活動中。