連載コラム『あなたの家計簿見せて! "給料減少時代"の家計診断』では、相談者のプロフィールと実際の家計簿をもとに、5人のFPが順番に、相談者の家計に関する悩みについての解決策をアドバイスします。


【相談内容】
4月から晴れて社会人となります。今までずっと実家暮らしだったので、これからの一人暮らしがちょっと心配です。やりくり上手になるためには、どのようにしたらいいのでしょうか? また、お金を貯めるにあたり、今後を見据えて社会人になってやるべきことはあれば教えてください。

相談者プロフィール

相談者の家計状況


【プロからの回答です】

  • 4月から社会人となり、実家を離れてひとり暮らしを始められた森下さん。今までご両親がしてくださっていたことを、これからはすべて自分でやっていかなければならず、不安もあることと思います。家計管理のコツを知り、やりくり上手になるためにはどうすればいいのか考えていきましょう。

(※詳細は以下をご覧ください)


ひとり暮らしで増える支出は?

これからどの程度支出が増えるのか心配とのことですが、まずは現在の森下さんの家計を見てみましょう。

支出には、生活に欠かすことが出来ない支出(固定費)と使い道が特に決まっていない支出(変動費)があります。家賃、水道光熱費、通信費(金額が決まっている分)などは固定費で、毎月必ず出ていくお金です。水道光熱費については、どれくらいかかるかまだはっきりしていないようですが、ひとり暮らしでは1万円程度見ておけばいいでしょう。これらを合計すると、森下さんの場合は、約7万3千円が毎月必ず出ていくお金ということになります。

変動費には、食費、日用品代、美容代、被服代、趣味やレジャー代、実家に帰る時などにかかる交通費などがあります。学生時代はとても堅実に生活されていたようですが、ひとり暮らしでは家族と暮らしていた時と比べて、食費、日用品代などは増えてしまいそうです。

支出をしっかり把握する

「必要だから」「欲しいから」と何となくお金を使っていると、月末になってお財布がピンチということにもなりかねません。お金が貯まらないという人の多くに共通しているのが「何にいくら使ったのかわからない」ということです。ひとり暮らしを始めてまだ日が浅いため、臨時の支出も多いこととは思いますが、まずは「出ていくお金」をしっかり把握するようにしましょう。

そのためにも、ぜひ家計簿をつけてみて下さい。市販の家計簿でも、普通のノートでもかまいません。レシートを取っておいて、週末など時間があるときに食費、日用品代、被服代など項目別に金額を書き込んでいき、月末に合計を出すようにします。スマートフォンをお使いなら、レシートを読み込むだけで毎月の収支を自動で計算してくれるアプリなどもあり、気軽に家計の管理が出来ます。どのような方法でもいいので、自分に合ったやり方でまずは2~3カ月続けてみましょう。

先取り貯蓄で確実にお金を貯める

大学時代は、アルバイト代のうち残った金額を貯蓄に回されていたようですが、確実にお金を貯めるためには、先取りで貯蓄することをおすすめします。貯蓄額については、一般的には手取りの20~30%が理想と言われていて、森下さんの場合は手取りが18万円なので3~5万円を目指したいところです。ただ、社会人生活が始まったばかりですから、1万円でも2万円でもいいので、無理のない金額から始めるようにしましょう。

先取り貯蓄の方法ですが、会社に財形貯蓄制度があればぜひ利用するようにしましょう。給料から天引きされる上、引き出すのが大変なため、確実にお金が貯まっていきます。その他には、銀行の自動積立口座に毎月決まった金額を積み立てていく方法、普段使う口座とは別の口座を作って毎月入金していく方法などがあります。

ボーナスも余った分を貯蓄にまわすのではなく、最初に貯蓄分を取り分けて、残った分を使うようにします。森下さんはすでに、旅行代と貯蓄にする予定とのことなので、確実にお金を貯めていけそうですね。

貯め方も工夫しよう

普通口座においたお金は、必要な時にすぐに引き出せるので安心な反面、つい使ってしまいがちです。ただ、財形貯蓄などは、確実にお金が貯まっていくものの、必要な時にすぐに使えないというデメリットもあります。そこでおすすめなのが、貯蓄を「もしもの時のお金」と「将来のためのお金」に分けて貯めていく方法です。「もしもの時のお金」は必要な時にすぐに引き出せるようにし、「将来のためのお金」は簡単には引き出せないようにして確実に貯めていくようにします。

毎月2万円貯蓄する場合なら、1万円を財形貯蓄や自動積立にし、残りの1万円を別の銀行の普通口座に入れていきます。ボーナスから貯蓄する分も、同様に分けて入れるようにします。または、毎月2万円を財形や自動積立にし、ボーナス分を別の銀行の普通口座に入れるという方法でもいいでしょう。

「もしもの時のお金」は、いざという時でも当面の生活に困らないように、手取り月収の6カ月分程度を目標に貯めていくようにしましょう。また、「将来のためのお金」は将来の備えや夢、目標のためのお金です。森下さんは「将来車を買いたい」と考えていらっしゃるので、まずは車の購入を目標にするのもいいですね。

自分への投資も大切!

給料から先取りで貯蓄をし、残った分が「使うお金」になります。そこから固定費を差し引いた金額が、自由に使うことができるお金です。社会人になったばかりの森下さんにとっては、友人や会社の同僚との付き合いもあると思います。またスキルアップのための勉強や視野を広げるための旅行などにお金を使うことも必要でしょう。将来やもしもの時の備えがしっかりできれば、不安のない生活が送れます。ぜひ貯め上手・使い上手を目指してがんばってください。

<著者プロフィール>

(株)プラチナ・コンシェルジュ ファイナンシャルプランナー 白子里美

大学卒業後、大手総合商社に勤務。退職後、FP資格を取得。現在webにてコラムの執筆の他、教育費や生命保険、老後資金などに関するセミナーなども行っている。(株)プラチナ・コンシェルジュ所属