連載コラム『あなたの家計簿見せて! "給料減少時代"の家計診断』では、相談者のプロフィールと実際の家計簿をもとに、5人のFPが順番に、相談者の家計に関する悩みについての解決策をアドバイスします。


【相談内容】
現在、共働きですが、夫婦ともに正社員ではないため、将来の収入や老後が心配です。老後を安心して暮らしていくにはどうしたらよいでしょうか。また、投資を始めようと思っていますが、投資に関してはまったくの無知なため、何から始めたらよいのかわからず、投資に関するアドバイスをお願いします。

相談者プロフィール

相談者の家計状況


【プロからの回答です】

  • 金融機関の窓口で販売される「人気の商品」が、必ずしも運用実績がよい商品ではないという現状があります。また、商品のしくみがよく理解できないものをとりあえず買ってみるという行動は禁物です。仕組みや内容について理解できる商品を納得した上、ご自身の判断で選ぶことです。

  • 投資商品に代表される株式、債券などいずれをも分析するには、相応の知識と経験が必要になります。個人では、株式や債券などについての幅広い情報や投資手法を身につけるにはなかなか難しいといえます。株式などへ投資をする場合、金融機関などの運用のプロと一緒に市場に参加することになり、プロの投資家に対抗するためには手段が必要です。例えば、運用を専門家に任せる、すなわち、プロの投資家が運用する投資信託を購入するのもそのひとつです。

(※詳細は以下をご覧ください)


これから予定されている増税や社会保険料の引き上げなどによる生活への影響が懸念され、どの家庭でも、将来の資産状況を心配する声が聞かれます。将来の資産形成のため、若い方ほど投資を学ぼうという積極的な方が多く見られます。

投資の効果とルールづくり

投資には、2つの効果があります。一つは、預貯金では得られない運用の成果が期待できるということ。もう一つは投資を始めることにより、経済が身近になり、国内外の経済状況や景気の行方を判断する指標にも敏感になるということです。投資は、よく勉強し習得してから始めた方が安全と考える方もいらっしゃいますが、経験をしてみないと、わからないことも多くあります。値段が上がり下がりするブレ幅への許容度についても、実際にお金を投じて、その値段が動いて初めてわかるということがあります。

ただ、それを始めるにあたっては、いくつかのルールを定めておくことをお勧めします。

  1. 金融機関の人に勧められるままに商品を購入しない

  2. よくわからない仕組み、商品には手を出さない

  3. 市場が下がったときにとるべき行動(何%下がったら売るなど)を決めておく。

金融機関の窓口で販売される「人気の商品」が、必ずしも運用実績がよい商品ではないという現状があります。また、商品のしくみがよく理解できないものをとりあえず買ってみるという行動は禁物です。仕組みや内容について理解できる商品を納得した上、ご自身の判断で選ぶことです。さらには、市場が大きく下がったときの対応として、一定水準を下回ったら売却するなど、自分でルールを予め定めておくことも大切です。下がり続けるのをじっと待つのではなく、下がったときにある一定の水準で売ることを決めておくことで安心感も得られます。  

マネープランに投資を組み入れる

ライフプランを実現すべく資金計画を立て、目標額へ近づけるため投資による運用を考えるとき、何から始めたらよいか迷う方は少なくありません。

投資商品に代表される株式、債券などいずれをも分析するには、相応の知識と経験が必要になります。個人では、株式や債券などについての幅広い情報や投資手法を身につけるにはなかなか難しいといえます。株式などへ投資をする場合、金融機関などの運用のプロと一緒に市場に参加することになり、プロの投資家に対抗するためには手段が必要です。

例えば、運用を専門家に任せる、すなわち、プロの投資家が運用する投資信託を購入するのもそのひとつです。

投資信託は、(1)小口投資 (2)分散投資 (3)専門家による運用 というように、株式、債券、不動産などさまざまな資産を投資先として、経済・金融に関する高度な知識を持った専門家が投資家に代わって運用します。

中でも、投資対象を複数の資産へ分散するのに一番簡易な方法は、バランス型ファンドへの投資です。日本および海外の債券と株式また不動産など複数の資産に投資することで、それぞれの資産に及ぶ影響が緩和され、値段のブレ幅をコントロールすることができます。資産配分は運用者が管理してくれます。個人が、個別銘柄を選び株式投資をする場合と比べ、国内外の地域分散と資産の分散が可能となります。

では、どのバランス型ファンドを選べばよいのでしょうか。それには、投資信情報サイト(モーニングスター、投信まとなびなど)により内容を確認し、投資信託を総合的に評価するレーティング履歴などもチェックしておきましょう。モーニングスターでは、3年以上の運用実績がある投資信託を対象に、総合的な運用成績について投資対象を同一とする分類別に相対評価しています。評価は★の数1つから5つまでで優劣を表わし、★の数が多いほど、運用実績がよかったことを示します。4つ★以上のものを選ぶのが理想と言えるでしょう。

また、いくつか検討したいファンドを絞り込んだら、それぞれの運用会社のHPから月次レポートを取得し目を通しておくことも欠かせません。月ごとの運用の経過が記された報告書です。そのファンドを保有している間ずっと継続して読んでおくことをお勧めします。市場で大きな変化が起きたときなど、運用者からのメッセージの変化にも気付く事ができます。

「先取り+積立+継続」が大きな資産を育てる

中村様は、家計データによると月間収支額が75,000円となり、上手にやりくりをされていることがわかります。毎月一定額先取り、貯蓄へまわしており、しっかりとした貯蓄体質ができあがっています。生活費の6カ月分くらいは、現預金としていつでも引き出せる資金として備えておきたいため、200万円はそのまま普通預金として置いておくとします。

定期預金の500万円をひとまとめに投資に回すのではなく、200万円など一部を投資商品へ、仮に年利3%とし1年複利で運用すると10年後には約269万円に。また毎月、定期預金に積立てている5万円を7.5万円に上げ、投資商品へ振り向けてはいかがでしょうか。1年ごと90万円(7.5万円×12カ月)ずつ積立投資をすると、仮に年4%の1年複利運用で5年後には、約487.4万円に。月々、積立投資をすることで、買付けるタイミングを分けることができ、時間の分散と資金の分散により、1回の買付金額を平均化することができます。積立期間を開始してから数年間は、積立額に対する運用の影響はあまりありませんが、長期になればなるほど影響が大きくなっていきます。

自分に合った商品を見つける

投資を長続きさせるには、自分に合った投資商品ならびに方法を見つけることです。自分に合った商品とは一体どのようなものでしょうか。それは「安心していられる」ということです。どれくらいの値動きにご自分は耐えられるでしょうか。その値段のブレ幅を低減させる「分散」と「継続」そして「投資のルール」、それが不安のない投資を可能にしてくれます。そして、忘れてはならないのが、中村様をはじめ多くの人の投資行動は社会と繋がっているということです。そのお金は経済を支え、社会全体を豊かにしていきます。その恩恵を受けるのは生活者みんなということ。お金の増減だけに目を奪われるのではなく、経済活動に参加するという認識を持つことが投資を「継続」させるには大切といえるのではないでしょうか。

<著者プロフィール>

(株)プラチナ・コンシェルジュ ファイナンシャルプランナー 村松祐子

大学卒業後、大手証券会社に勤務。外国株式部、投資コンサルティング部、調査部を経て、資産運用コンサルタントからFPへ転身。子どもから大人へ投資と学習の普及を中心に、ライフ&マネープランの相談・執筆・セミナーなどで活動中。