連載コラム『あなたの家計簿見せて! "給料減少時代"の家計診断』では、相談者のプロフィールと実際の家計簿をもとに、5人のFPが順番に、相談者の家計に関する悩みについての解決策をアドバイスします。


【相談内容】
今結婚3年目で自分の実家で同居していますが、その家が老朽化しているため、10年以内を目処に建替えしたいと思っています。その資金や、子どもの教育費、自分たちの老後の資金作りが心配です。どうしたらいいでしょうか?

相談者プロフィール

相談者の家計状況


【プロからの回答です】

  • ライフイベントのスタート地点に立ち、人生の三大資金である教育・住宅・老後資金の準備を、何からどう始めればよいか迷われる方は多くいらっしゃいます。山本様の理想の暮らし方をご家族皆さんで話合い、ライフプランを共有することから始めてみましょう。ライフプランの実現には、経済的な裏付けとなるマネープランをしっかり考えていくことが大切です。

(※詳細は以下をご覧ください)


ライフプランから目標額を設定しよう

10年以内を目途に同居中のご実家の建て替えを視野に入れながらも、3年以内にはご主人の転勤が予想される状況。この状況からは具体的な建て替え実行の時期を決めることは難しいですが、仮に、2,000万円の資金をご両親と折半し1,000万円ずつ出し合って建てた場合の資金計画を想定してみましょう。

住宅ローンを組む場合、返済額は収入の2割以下、頭金は価格の2割以上が理想です。山本様の世帯収入は現在30万円のため、ローン返済額は月額6万円を目安とします。1,000万円のうち200万円を頭金とし残りの800万円を借り入れるとしましょう。仮に住宅ローン金利1.68%(フラット35)で返済期間を15年として試算すると月額約5万円(現在、ご両親に払っている住居費と同額)で返済していくことが可能です。金利を含めた総返済金額は、9,453,267円(内 諸経費は397,500円)となります。更には、家屋の解体費、建て替え中の仮住まい費用と2回の引越費用を含めて見積もっておく必要があります。

教育費は、幼稚園から高校までの進学先により大きく費用が分かれるところですが、一般的に高校まで公立に通った場合は約500万円、その後私立の大学へ進学した場合には、約500~600万円相当の費用がかかると言われています。ただこの金額が一度に必要になるわけではないため、高校までの教育費は日々の生活費のやりくりから捻出することが可能です。今から積立で準備したいのは大学の費用です。進学時までに大学で必要になる学費の約6割程度(約330万円)を目標にコツコツ貯めていきましょう。

老後資金として、自分で用意しなければならない自分年金はいくらか。老後には、最低日常生活費(月額22万円)で生活するなら、現行の制度により試算すると、退職金(大卒平均2,000万円)と年金受給額5,040万円、老後の生活費5,940万円と考えれば自分年金は必要ないという計算になります。

ところが、ゆとりある老後生活費(月額36万円)で生活するなら、自分年金は2,680万円必要。さらに長生きした場合を想定すると、公的年金以外に月7万円を100歳まで35年間、預金から取り崩した場合(7万円×12カ月×35年=2,940万円)と試算され、自分年金は約3,000万円用意すべきとなります。一方、老後資金は、今から30年先に使うお金です。年金受給開始年齢が更に引き上げられ、受給金額も現行通りにはいかないということも想定しておかなければなりません。

先取り貯蓄、積立投資、継続は力なり

さて、それではそれぞれの資金づくり、どのように進めていくのがよいのでしょうか。如何なる場合にも、お金は強制的に先取り分別しなければ決して貯まりません。収入から余った分を預金しようと思っていたら全部使ってしまったということはよくあることです。 10年以内に使う予定のある住宅建設資金については、頭金を定期預金から用意すると考えてよいでしょう。その他の準備資金については、使う時期までたっぷり時間があります。大学の準備資金は15年先、老後資金については30年先です。

山本様は株式投資を金融資産の16%ほど保有されています。証券知識と経験をある程度お持ちなのであれば、証券投資等の積立てで長期にお金を育てていく方法を考えられてはいかがでしょうか。積立を始めたら、途中で止めずに続けることです。続けることで値段の下落期には安い値段で沢山の数量が買え、上昇期には高い値段で少量を買いつけることができ、長期的には買付単価を平均化させお金を安定的に育てることに繋がります。

現在月々10万円貯金しているうちの5万円を用途別に「積立て投資」を活用して増やしていきましょう。例えば、老後資金は毎月35,000円(42万円/年)ずつ3%で運用すると、30年後の65歳には1,998万円に。教育資金は、毎月15,000円(18万円/年)3%で運用すると15年後には335万円に。

このように教育資金も証券投資の積立で備えることもできますが、より安心して保有できる商品が好ましいという場合には、学資保険などの商品を選ぶ方法もあります。保険商品は解約がしにくいため、別の用途に使ってしまう心配には及びません。なお、学資保険を選ぶ際には、払い込む保険料の総額より受取額の総額が多い貯蓄性の高い商品を選ぶとよいでしょう。

自分に合った資金準備の方法と学習を

これからの時代には、このように資金準備の方法として、預貯金以外の方法も取り入れながらお金を上手に育てていくことも必要です。ただ、その商品選びには、金融商品をよく調べ、株式・投資信託・ETFなどの証券投資商品の金融情報サイトおよび比較サイトなどで成長するよい商品を厳選することが大切です。

<著者プロフィール>

(株)プラチナ・コンシェルジュ ファイナンシャルプランナー 村松祐子

大学卒業後、大手証券会社に勤務。外国株式部、投資コンサルティング部、調査部を経て、資産運用コンサルタントからFPへ転身。子どもから大人へ投資と学習の普及を中心に、ライフ&マネープランの相談・執筆・セミナーなどで活動中。