連載コラム『あなたの家計簿見せて! "給料減少時代"の家計診断』では、相談者のプロフィールと実際の家計簿をもとに、5人のFPが順番に、相談者の家計に関する悩みについての解決策をアドバイスします。


【相談内容】
今年の4月から夫の残業代がつかなくなり、毎月の手取り額が8万円~10万円ほど減ってしまいました。昨年第2子が生まれたばかりで、子どもも小さいので私は専業主婦です。これからのマイホーム購入や子どもの教育費のことを考えると不安になります。5年以内にマイホームを買うためにはどうしたらいいでしょうか?

相談者プロフィール

相談者の家計状況


【プロからの回答です】

  • 現在、野田様は毎月2万円を教育費として普通預金で別口座に貯蓄されています。普通預金で貯める場合、生活費が不足したり、臨時の出費があったりした時に使ってしまわないよう、お子様それぞれの口座に分け、簡単には引き出せないようにする工夫が必要です。また、現在健次さんは生命保険には加入されていないので、学資保険を利用するのも一つの方法です

  • マイホームの頭金を貯めるためにも、家計を見直してみましょう。お子さんがまだ小さいので食費を少し節約できるかもしれません。また旅行代や車にかかる費用もかなり大きいので、もう少し減らせないか検討してみましょう

(※詳細は以下をご覧ください)


教育費、「かかる時期」と「金額」を把握する

教育費については何年後に、どれくらいのお金がかかるのかをあらかじめ知った上で、資金計画を立てることが大切です。野田様の場合、近所の私立の幼稚園にお子さんを通わせる予定とのことなので、幼稚園は私立、小・中・高校は公立、大学は私立(文系)として教育費を試算してみました。

(データ出典:文部科学省 平成22年度子どもの学習費調査 私立大学等の平成24年度入学者に係る学生納付金等調査)

第2子が幼稚園に入園し二人分の費用がかかる3年後の1年間と第1子が大学に入学する16年後からの4年間は特に教育費がかかる期間となります。

高校を卒業するまでにかかる教育費は生活費の中からやりくりをするようにし、大学の費用を積み立てで準備していきます。大学の4年間でかかる学費は、私立文系で約420万円、私立理系で540万円、国公立なら240万円程度。その他、学費以外の課外活動費や通学費などもかかります。現在は奨学金を利用する方も多くいますが、お子さんの将来の負担を少しでも軽くできるよう、大学入学までに少なくても一人あたり200万円は準備しておきたいですね。

教育費を貯めるには?

では、どのように貯めていったらいいでしょう。現在、野田様は毎月2万円を教育費として普通預金で別口座に貯蓄されています。普通預金で貯める場合、生活費が不足したり、臨時の出費があったりした時に使ってしまわないよう、お子様それぞれの口座に分け、簡単には引き出せないようにする工夫が必要です。

また、現在健次さんは生命保険には加入されていないので、学資保険を利用するのも一つの方法です。契約者に万が一のことがあった場合は、保険料の支払いが免除になり、満期がくれば当初予定の満期金を受け取ることができます。学資保険は多くの保険会社で扱っていますが、加入時の契約者やこどもの年齢により月々の保険料も変わってきます。満期金を200万円とした場合の保険料の目安は、保険会社にもよりますが、0歳時加入で月9千~1万円、3歳時加入で月1万~1万2千円程度です。

満期金は一括で受け取るタイプと分割で受け取るタイプがあります。AO入試や推薦入試で合格すると一般入試よりも早い時期に初年度納入額を収めなければならないため、満期金を一括で受け取るタイプの場合は、18歳ではなく17歳にしたほうが使い勝手がいいかもしれません。

マイホームを購入するためには

野田様は5年以内にマイホームを購入したいとのご希望をお持ちです。仮に3000万円の物件を、固定金利2.5%、30年(ボーナス返済なし)で返済する場合、

(1)頭金なしで購入…毎月の返済額11.9万円(総返済額4,268万円)

(2)頭金300万円(物件価格の10%)、借入額2,700万円で購入…毎月の返済額10.7万円(総返済額3,841万円)

(3)頭金600万円(物件価格の20%)、借入額2,400万円で購入…毎月の返済額9.5万円(総返済額3,414万円)

となります。頭金を多く準備できれば、それだけ毎月の返済額を減らすことができますね。

ただ、現在お持ちの定期預金500万円全額を頭金に充てられるわけではありません。いざというときの予備費として200万円、またローンを組んだ場合の登記費用や保証料など諸費用、新居の家具や引っ越し代として200万円程度は手元に残しておく必要があります。ですから、現時点で頭金に充てられるのは、それらを引いた後の100万円となります。マイホーム購入のためには、これから3~4年のうちにできるだけ多く頭金を貯めていくようにしましょう。

頭金を貯めるためにも家計の見直しを!

野田様の家計の内訳をみると、今のところ月々の収支は黒字になっていますが、来年から上のお子さんが幼稚園に通い始めると、教育費がかかるようになるため、年50万円できていた貯蓄も難しくなってきます。マイホームの頭金を貯めるためにも、家計を見直してみましょう。お子さんがまだ小さいので食費を少し節約できるかもしれません。また旅行代や車にかかる費用もかなり大きいので、もう少し減らせないか検討してみましょう。

無理のない返済額を見極める

頭金がある程度準備出来て、いざマイホームを購入しようとした場合、いくらの物件なら月々無理なく返済していけるのでしょう。住宅ローンを組むと、月々の支払いのほかにマンションの管理費や修繕積立金などが月約2万円、固定資産税や都市計画税が年間約20万円程度かかってきます。

仮に野田様が頭金300万円、借入額2,700万円(固定金利2.5%)で3,000万円の物件を購入されたとすると、毎月の住居費10.7万円と管理費2万円を合わせて約12.7万円になり、現在の住居費月7.5万円と比べると月約5.2万円のアップとなります。さらに固定資産税等もかかりますので、現在の家計のままでは、かなり苦しくなってしまいそうです。その場合は購入する物件価格を下げることで、毎月の返済額を減らすことが出来ます。築浅の中古物件を検討するのもいいでしょう。お子さんが小学生くらいになったら亮子さんも仕事を再開する予定とのことなので、どれくらいの収入が得られるのかを見極めたうえで、月々無理なく返済できる金額を計算し、物件を選ぶようにすることをおすすめします。

<著者プロフィール>

(株)プラチナ・コンシェルジュ ファイナンシャルプランナー 白子里美

大学卒業後、大手総合商社に勤務。退職後、FP資格を取得。現在webにてコラムの執筆の他、教育費や生命保険、老後資金などに関するセミナーなども行っている。(株)プラチナ・コンシェルジュ所属