連載コラム『あなたの家計簿見せて! "給料減少時代"の家計診断』では、相談者のプロフィールと実際の家計簿をもとに、5人のFPが順番に、相談者の家計に関する悩みについての解決策をアドバイスします。


【相談内容】
長女が今3歳です。長女が小学校入学までにマイホームを購入したいと思っています。子供もできればあと2人、第2子、第3子も欲しいです。でも、そうなると教育費がかなり大変なのでは? と心配。大丈夫でしょうか?

相談者プロフィール

相談者の家計状況


【プロからの回答です】

  • 大学まで全て公立でも教育費は1人750万円ほどかかります。マイホームとお子様の教育費にかけるお金のバランスを取りながら、できるだけ支出を減らし、収入も増やすことが必要です。

(※詳細は以下をご覧ください)


消費税増税前にマイホームを買った方がいい?

2014年4月の消費税増税を前に、マイホームの購入に動いている方も増えているようです。アベノミクスの影響で住宅ローン金利も上昇していくのではないか? という思惑から、買うなら今! という意見も一理あります。ですが、今買ってもいいのは、頭金もしっかり準備できていて、資金計画に問題がない場合です。

上口様の場合、お子様の学校のことを考え、5年以内に購入したいとのこと。3,000万円前後の新築一戸建てをご希望ですので、頭金は物件価格の2割、600万円程度が理想です。現在の貯蓄残高は600万円ありますが、緊急予備資金として200万円は残しておきたいですし、購入時の諸費用や引っ越し代、家具の新規購入費用も必要です。今購入するより、あと300万円~400万円の資金が貯まるまで待つか、物件の希望価格を下げるかのどちらかを選ぶのが賢明と言えます。頭金を少なくし、ローン返済額を増やしてまで希望価格の物件を購入することはおすすめしません。また、お子様をできればあと2人欲しいということですので、教育費の心配もあります。住宅ローンを払いながら、教育費を貯めることができるのか、見ていきましょう。

大学まで全て公立でも教育費は1人750万円

少子化のこの時代、お子様を3人欲しいという上口様。一番心配なのは、やはり教育費ですね。文部科学省の子どもの学習費調査(平成22年度)によると、幼稚園から高校まで、すべて公立に通ったとしても約500万円の教育費がかかります。さらに大学に進むとなると国立で約250万、私立文系で450万程度の金額が必要になります。高校まででしたら、ざっくり言って月平均3万円程度の支出ですので(公立の場合)、毎月の収入をやりくりして捻出しましょう。とはいえ、お子様が3人となると、毎月10万円程度の支出になります。さらに大学や専門学校などへの進学資金も並行して準備しておくとなると、現在の家計状況では、難しいと言わざるを得ません。

ですが、教育費は「子供にどのような教育を受けさせたいのか」によってかなり違いますし、兄弟が多い分、公立の学校に進み、塾や習い事を絞り込むことである程度は減らすことができます。

教育資金が不足する部分は奨学金の利用でもカバーできます。奨学金を借りることは「自分でお金を払って学ぶ」ということですので、真剣に学業に取り組むのではないでしょうか。ただし、あまりたくさん借りすぎると、社会人になってから負担が大きく、返済が滞ることにもなりかねませんので注意しましょう。また、奨学金の受け取りは大学入学後です。入学金や最初の授業料は奨学金で賄うことはできませんので、大学に進学させたいならお子様1人当たり200万円を目標に準備しておきましょう。

希望のライフイベントを実現させるためには?

上口様が希望されている3,000万円の物件を頭金600万円、残りの2,400万円を全期間固定金利のフラット35を利用して金利2.03%(2013年6月10日現在の最低金利)、35年ローンで借りたとすると、毎月の返済額は8万円(ボーナス月の増額無し・元利均等方式の場合)になります。返済額だけを見ると実現可能のように思えますが、他に固定資産税も発生しますし、将来の修繕費も見込んでおく必要があります。

また、現在の生活費を見ると堅実な家計と言えますが、お子様があと2人増えると生活費、教育費も増えますし、このままの収入では40代には貯蓄も底をつきそうです。

新築一戸建て、お子様は3人といった希望通りライフイベントを実現させるためには、上口様が働き、収入を増やすことが不可欠です。お子様が小さいうちは難しいかもしれませんが、年収150万程度を目安に働き厚生年金保険料を負担すると、世帯収入が増えるだけでなく、将来受け取る年金も増えますので老後資金対策にも有効です。他に、親や祖父母からの住宅資金援助を受けられないか、住宅は中古にできないかなどを検討し、住宅にかけるお金を減らしましょう。

教育資金準備として現在検討されている学資保険は、契約者が万一の場合にも学費が確保されるように設計できます。現在、死亡保障のついた保険に加入されていないので、お子様1人当たり毎月1万円程度を目安に学資保険で確実に教育費を準備するのもよいでしょう。その際元本割れしない、払い込み保険料の総額よりも満期時に受け取る保険金額が多い学資保険を選ぶようにしましょう。他に、給与振込口座から自動で定期預金を積み立てて、ある程度貯まったところで金利の良い金融商品に預け替えるというのも、金利上昇時にはおすすめです。

投資に関しましては、余裕資金で行うことが原則ですので周りの雰囲気にのまれて始めることには賛成しませんが、今のうちにしっかり投資について勉強しておくことはいずれ役に立つはずです。まずは元本保証の商品で、住宅資金、教育資金を準備していきましょう。

<著者プロフィール>

(株)プラチナ・コンシェルジュ ファイナンシャルプランナー 福島佳奈美

金融系SE(システムエンジニア)からファイナンシャルプランナーに転身。Webサイト中心にマネーコラム執筆を行うほか、教育費やライフプランニング、保険、家計見直しなどのセミナー講師、個人相談などの活動を行っている。