連載コラム『あなたの家計簿見せて! "給料減少時代"の家計診断』では、相談者のプロフィールと実際の家計簿をもとに、5人のFPが順番に、相談者の家計に関する悩みについての解決策をアドバイスします。


【相談内容】
今年念願だった自宅を建てましたが、家計は毎月トントン。今は貯蓄もなく今後が不安です。家計をどのように見直せばいいでしょうか?

相談者プロフィール

相談者の家計状況


【プロからの回答です】

  • 今後どれくらいの資金が必要かの目安を知り、貯蓄の目標を立てましょう。まずは、病気や怪我、収入減などの緊急事態にそなえ、マイホーム取得で減ってしまった貯蓄を増やします。緊急事態のリスクに対しては保険だけでは対応できないケースや不足するケースもあります。緊急生活資金として毎月の生活費の半年分ほどを目安に貯蓄しましょう。現在の貯蓄額は100万円ですので、あと100万円程度をなるべく早く確保できれば安心です。
  • 教育資金については、進学先が公立か私立かによって必要な金額は大きく違います。小学校から高校まで公立に進学するのでしたら、その間の教育費は毎月の家計から賄うのが基本です。その後の大学進学では、国公立でも250万円、私立大学でしたら学部にもよりますが450万程度(どちらも4年間合計金額)が必要になります。このような大金は事前に準備しておかなくてはなりません。お子様が小学生の時が「貯め時」です。

(※詳細は以下をご覧ください)


いざという時の生活資金、教育資金、老後資金などの今後の生活に必要なお金は、優先順位を付けて計画的に準備しましょう。無駄な支出を削り、貯蓄のペースを上げることができれば安心できる家計になっていくでしょう。

まずは緊急事態にそなえる貯蓄を

念願のマイホームを購入されたうれしさの反面、貯蓄がほとんどなくなってしまった不安を抱えていらっしゃる今野様。今後、住宅ローンの支払いをしながら、お子様の教育資金や老後の生活資金などを準備していくためには、家計の見直しが必要です。今後どれくらいの資金が必要かの目安を知り、貯蓄の目標を立てましょう。

まずは、病気や怪我、収入減などの緊急事態にそなえ、マイホーム取得で減ってしまった貯蓄を増やします。緊急事態のリスクに対しては保険だけでは対応できないケースや不足するケースもあります。緊急生活資金として毎月の生活費の半年分ほどを目安に貯蓄しましょう。現在の貯蓄額は100万円ですので、あと100万円程度をなるべく早く確保できれば安心です。

貯蓄は家族の「これからの生活」を支えるためにも必要

貯蓄には、緊急事態にそなえるだけでなく、教育資金や住宅資金、老後資金など、毎月の収入では賄えない、まとまったお金を事前に準備するという役割もあります。ですから、どのくらい貯蓄すればいいかは、「子どもにどのような教育を受けさせたいのか、今後どのような生活を送りたいのか」によって決まるともいえます。自分たちのこれからの生活をイメージしながら、理想の生活が実現できるかどうか、資金計画を立てましょう。

教育資金については、進学先が公立か私立かによって必要な金額は大きく違います。小学校から高校まで公立に進学するのでしたら、その間の教育費は毎月の家計から賄うのが基本です。その後の大学進学では、国公立でも250万円、私立大学でしたら学部にもよりますが450万程度(どちらも4年間合計金額)が必要になります。このような大金は事前に準備しておかなくてはなりません。今野様のように、子どもが小さいうちから学資保険などを活用し、最低300万円を目標に貯めましょう。

お子様が小学生の時が「貯め時」です。幼稚園にかかっていたお金は教育資金に回すことで月3万円を6年間貯蓄できれば、216万円になりますので、現在加入している学資保険と合わせて目標の300万円をクリアできます。

中学以降、私立に進学するとなるとどのくらいのお金がかかるのでしょうか。文部科学省の子どもの学習費調査(平成22年度)によりますと、私立中学校に進学した場合の教育費は約380万円、私立高校では約280万円です(どちらも3年間合計金額)。小学校高学年からの中学受験費用もかなりの金額になります。これらのお金を家計から準備・捻出できるかどうか、慎重に判断しましょう。その際、老後の生活資金が不足しないかどうかといった長期的な視野も必要です。

貯蓄を増やすために不可欠な家計見直しの方法は?

家計を見直す際は、住宅費、保険料など、毎月出ていく金額が決まっている固定費から見直します。現在、生命保険料に27000円かかっていますが、団体信用保険に加入していれば、死亡保障3000万円というのは保障が多すぎます。一概には言えませんが、死亡保障を1500万円まで減らし、掛け捨ての収入保障保険や医療保険に加入し直せば、現在より月1万円程度支払いを減額することも可能だと思われます。ボーナス払いの車両保険も、もっと安い物がないか探してみましょう。

スマートフォンの普及で、通信費の支払いが年々増えており、家計を圧迫しているケースが見られます。セット割引や契約プランの見直しで、負担を減らすことができないか検討しましょう。

光熱費が少し高めですので、無駄な使い方をしていないか、チェックして、少しずつでも節約するようにしましょう。電気の契約アンペアを少なくするだけで、基本料金を数百円減らすことができます。電気代は値上げが続いていますので、可能ならば検討しましょう。

固定費の見直しが済んだら、食費やレジャー費などの変動費に取り掛かります。今野様の家計データを見ると、支出もそう多くないようですので、このペースで頑張りましょう。お子様が成長するにつれて食費や被服費も増えていきますが、外食費などで調整して、なるべく増やさないように気をつけましょう。

このような見直しで当面は月4万円の貯蓄を目標にしましょう。お子様が小学生になれば、今野様も働く時間を増やすなどして収入アップに取り組み、住宅ローンの繰り上げ返済に回しましょう。

住宅ローンの繰り上げ返済が必要な理由

今野様は35年の住宅ローンを組まれていますが、定年後の年金生活は大幅に収入が減り、返済が困難になることも予想されます。できれば、定年までにローンを完済できるよう、繰り上げ返済をしていきましょう。

退職金でローンを完済しようと考えている方もいらっしゃいますが、年金だけでは老後の生活費が不足することもあります。また、住宅のリフォームやお子様の結婚資金などのまとまったお金が必要になる場合もありますので、退職金はなるべく手を付けないようにしたいものです。

また、現在のローンは変動金利型のものですので、金利上昇のリスクがあります。金利情勢によっては、固定金利に借り換えた方がよい場合もあることを考慮に入れておきましょう。その際、借り換え手数料や金利変更による返済額の増加もありますので、ある程度の余裕資金を残しておく必要があります。金利の低い今のうちに、一部でも固定金利への借り換えを行うことも金利上昇のリスクを抑える効果があります。

まずは、緊急生活資金、お子様の教育資金を優先して確保し、さらにある程度の貯蓄ができた時点で、住宅ローンの繰り上げ返済を検討すると良いでしょう。

<著者プロフィール>

(株)プラチナ・コンシェルジュ ファイナンシャルプランナー 福島佳奈美

金融系SE(システムエンジニア)からファイナンシャルプランナーに転身。Webサイト中心にマネーコラム執筆を行うほか、教育費やライフプランニング、保険、家計見直しなどのセミナー講師、個人相談などの活動を行っている。