連載コラム『あなたの家計簿見せて! "給料減少時代"の家計診断』では、相談者のプロフィールと実際の家計簿をもとに、5人のFPが順番に、相談者の家計に関する悩みについての解決策をアドバイスします。


【相談内容】
今まで好き勝手に過ごしてきましたが、最近になって多分このまま一生独身なんだろうなと思い始め、ふと自分の将来のことが不安になってきました。今は実家で年老いた両親と猫と一緒に暮らしていますが、もし父が亡くなったら相続税は払えるのかも心配です。貯蓄もあまりありませんが、今後の人生を豊かに過ごすためにも、老後の資金づくりは今から何をしておくべきでしょうか?

相談者プロフィール

相談者の家計状況


【プロからの回答です】

  • 秋葉様が両親と同居されているご実家は、小規模宅地の特例が適用され、相続税評価額が最大80%減額されると思われますが、他にお父様がマンションやアパートを所有されているため注意が必要です。それらの相続税評価額や現金資産などを合計して、相続税が発生するかどうか確認しましょう。相続税がかかるようでしたら、生前贈与を含めた節税対策と、納税資金準備を行いましょう。

  • 家計に関しましては、ご自身でも自覚されている通り、趣味にかけるお金や、外食中心の生活などから貯蓄ができなくなっているようです。特に気になるのはボーナスの使い道です。旅行代とボーナス払いでの支出が7割程度を占めており、全く貯蓄ができていないのは問題です。生活費は給料で賄い、ボーナス払いの支出はやめましょう。ボーナスは、やむを得ない支出以外は全額貯蓄するのが理想です。

(※詳細は以下をご覧ください)


相続税は平成27年1月1日相続分からは基礎控除額が縮小されることが見込まれています。財産に相続税がかかる可能性があるようでしたら、早めに対策を立てましょう。老後の資金づくりは、これからの住まいをどうするのか、老後はどのように過ごしたいのかのイメージづくりから。そして、そのためにはどのくらいの資金が必要なのかを見積もり、計画的に積立を始めるといいでしょう。

相続税改正で払わなければならない人が増える?!

40歳を過ぎて、ふと将来のことを不安に感じ始めた秋葉様。これからご結婚される可能性もあるでしょうが、相続の問題はいずれにしても発生します。

1月に発表された2013年度税制改正大綱に、現在「5,000万円+1,000万円×法定相続人数」である相続税の基礎控除額が、平成27年の1月1日から「3,000万円+600万円×法定相続人数」へ縮小されることが盛り込まれました。具体例を挙げますと、法定相続人が2人の場合、基礎控除額がこれまでは7,000万円だったのが、4,200万円になりますので、相続税課税対象財産が4,200万円を超えると税金を払わなければならないことになります。これまでは相続税を払っていた人は全国平均で4%程度でしたが、都市部、特に23区内などで土地や建物を相続した場合、相続税を払わなければならないケースが増えると予想されます。

早めに相続税対策を立てることで不安は解消する

秋葉様が両親と同居されているご実家は、小規模宅地の特例が適用され、相続税評価額が最大80%減額されると思われますが、他にお父様がマンションやアパートを所有されているため注意が必要です。それらの相続税評価額や現金資産などを合計して、相続税が発生するかどうか確認しましょう。相続税がかかるようでしたら、生前贈与を含めた節税対策と、納税資金準備を行いましょう。早めに対策を立てることで現在の不安は解消しますので、さっそく取り掛かってみましょう。

生活費は月給から。ボーナスは全額貯蓄が理想

家計に関しましては、ご自身でも自覚されている通り、趣味にかけるお金や、外食中心の生活などから貯蓄ができなくなっているようです。特に気になるのはボーナスの使い道です。旅行代とボーナス払いでの支出が7割程度を占めており、全く貯蓄ができていないのは問題です。生活費は給料で賄い、ボーナス払いの支出はやめましょう。ボーナスは、やむを得ない支出以外は全額貯蓄するのが理想です。

「お金が余ったら貯金する」という生活スタイルでは、いつまでたっても貯蓄はできません。これから先、いつ、いくらのお金が必要になるのかライフプランを立て、「貯蓄をした後のお金で生活する」ようにしましょう。

まず、現在の築40年のご実家ですが、ご両親の年齢を考えますとバリアフリーへのリフォームを含めた、なんらかの対策が必要だと思われます。将来相続されたときにそのまま住み続けるのか、もし独身ならマンションなどへ住み替えるのか、ある程度の方針を決めて必要なお金を見積もり、貯蓄を始めましょう。

例えば、5年後に500万円程度のリフォームをしたいのなら、年間100万円の貯蓄が必要ですね。月に8万円以上の貯蓄は無理だと感じられるでしょうが、決して無理ではありません。ご両親のためにもリフォーム資金を貯めたいということであれば10万円の住居費を5万円に減額してもらえるのではないでしょうか。また、なるべく家で食事をするようにして食費を1万円減らし、レジャー費も月2万円減らせれば、8万円を捻出できます。建て替えやマンション購入なら必要な資金はまた変わってきますので、いろいろなケースを想定して必要な資金と実現可能な目標を立てましょう。ご両親には家賃収入もありますので、将来に向けてお金が必要ということであれば住居費を全額建て替え資金に回すという選択もあるかと思います。

将来に向けて先取り貯蓄の仕組みを

秋葉様は毎月2万円を金の購入に充てていらっしゃいますが、現在、金価格は高値が続いていますので利益も出ているのではないでしょうか。このような「投資」は貯蓄と違って値下がりリスクもありますが、長期間続けることでリスクは軽減し、利益を得ることも可能です。老後資金作りにこのまま続けていくとよいでしょう。その他、秋葉様は投資経験がおありですので、投資信託を毎月一定額買い付ける方法もよいかもしれません。国内、海外の債券や株式に幅広く分散投資することで値下がりリスクを軽減できます。

10年以内に使うお金を積み立てるには、元本保証の商品を利用します。会社に財形制度があるなら、給与天引きで「先取り貯蓄」を行うとよいでしょう。銀行の自動積立商品もオススメです。

将来必要なお金を知り、計画的に準備することで不安は解消します。ご両親へのプレゼントも行う親孝行の秋葉様ですので、住まいや相続の話合いもスムーズに行き、貯蓄できる家計になっていくでしょう。また、頑張りすぎると長続きしませんので、予算を決めて息抜き程度に趣味にもお金を使ってもいいと思います。

<著者プロフィール>

(株)プラチナ・コンシェルジュ ファイナンシャルプランナー 福島佳奈美

金融系SE(システムエンジニア)からファイナンシャルプランナーに転身。Webサイト中心にマネーコラム執筆を行うほか、教育費やライフプランニング、保険、家計見直しなどのセミナー講師、個人相談などの活動を行っている。