連載コラム『あなたの家計簿見せて! "給料減少時代"の家計診断』では、相談者のプロフィールと実際の家計簿をもとに、5人のFPが順番に、相談者の家計に関する悩みについての解決策をアドバイスします。


【相談内容】
現在は会社の寮で暮らしていますが、近々寮を出て一人暮らしを始めます。給与はなかなか上がらず、住居費は今の約6倍増に。これからの生活費について、どのあたりを見直し、どう対応していけばいいですか?

相談者プロフィール

相談者の家計状況


【プロからの回答です】

  • 食費と日用品費で7万円超というのも少し多いので(平均は5万円弱)、リッチに飲んだ次の日はスーパーで栄養バランスのとれた弁当を安く買う、外でばかり飲まず、鍋をつつきながら家飲みするなど、内食、中食を取り入れて2万円を目標に減らしてみましょう。

  • 家賃についても再考の余地があります。住居費の割合について収入の3割が目安という人もいますが、実際は2.5割程度でないと厳しいと思います。給与から計算すると岡本さんの場合6万円が妥当ではないでしょうか。東京での住まいさがしという点や、契約後の変更と難易度が高いリクエストかもしれませんが、変更できれば、家賃補助も含めて月3万円の余裕が生まれます。

(※詳細は以下をご覧ください)


確かに現在の生活では赤字ですね。しかし、家賃以外を家計調査の平均値にあてはめると、月給で2万円ほど余裕ができる計算になりますから、赤字にならず生活していくことは可能です。

まず、譲れないことの優先順位を付けてみましょう。「なんでも我慢」や「なんでも節約」では、生活に楽しみがなくなってしまいますし、長く続きません。優先順位が低いものは平均以下を目指し、浮いたお金で優先順位の高いものに使いましょう。貯蓄するお金に名前を付ければ、効率よく貯蓄していくことができます。

支出の見直し方…支出に優先順位をつけよう

目安として総務省の家計調査(23年度)を参照しました。かい離の大きいところから見てみましょう。

趣味娯楽費の平均は23,270円。岡本さんは月5万円+ボーナスで30万円使っていますから、平均に合わせるだけで年間60万程度余裕が生まれる計算になります。

被服費の平均は9,784円。岡本さんは月18,000円+ボーナスで10万円使っていますから、これも平均にするだけで年間20万円のプラスになります。

食費と日用品費で7万円超というのも少し多いので(平均は5万円弱)、リッチに飲んだ次の日はスーパーで栄養バランスのとれた弁当を安く買う、外でばかり飲まず、鍋をつつきながら家飲みするなど、内食、中食を取り入れて2万円を目標に減らしてみましょう。自炊というのはリズムに乗ってしまえば割安ですが、独り暮らしでたまにしか作らない場合は割高になってしまいます。

車両費はガソリン代を月1万円、あらたに加わる水光熱費を1万円以内と仮定すると、今までの試算で2万4千円の余裕が生まれます。優先順位の高いものにお金を使うのは、この範囲でということになります。

ボーナスはご褒美で使う金額を決めておき、それ以外は貯蓄していきましょう。ボーナス時の車両費がローンだとしたら、金利が高いはず。生活費半年分程度の貯蓄を手元に残して一括返済できるなら、してしまいましょう。

家賃についても再考の余地があります。住居費の割合について収入の3割が目安という人もいますが、実際は2.5割程度でないと厳しいと思います。給与から計算すると岡本さんの場合6万円が妥当ではないでしょうか。東京での住まいさがしという点や、契約後の変更と難易度が高いリクエストかもしれませんが、変更できれば、家賃補助も含めて月3万円の余裕が生まれます。

目的が漠然としていると貯めにくいものです

貯蓄は、万が一の時の貯蓄と目的を持った貯蓄に分かれます。

万が一とは、急な病気やけがで入院などをしたときに、生活に困らないようにするための費用です。一般的に、生活費の半年分+医療保険に加入していれば安心でしょう。岡本さんの場合、現在の支出の半年分は賄える貯蓄がありますし共済に加入されているので、これはクリアされているのではないでしょうか。

目的を持った貯蓄とは?

身近なものとして、旅行代や車購入、結婚費用などがあげられるかと思いますが、これらは数十万~数百万円単位のもの。人生における三大出費として「住宅購入」、「子の教育資金」、「退職後の生活資金」があり、これらは数千万円単位でお金の準備が必要になります。

まだあまりピンと来ないかもしれませんが、低金利の今、退職した後のことも考えて貯蓄をすることが必要になっています。

概算ですが、岡本さんの給与が退職時までずっと変わらなかったとして、65才から受け取れる年金は約160万円(月13万円程度)です。

65歳から20年間、月7万円収入を増やそうとすると、65歳時点で約1600万円貯めておかなければなりません。将来にわたり0.5%でしか運用できなかったとしたら、今から60歳まで、年44万円貯蓄していく必要があります。10年後に始めたら貯蓄額は65万円になります。退職金があったり、65歳まで働けるなら目標金額は下げられますが、今後、年金のための保険料は上がり、支給額は減らす方向に向かっていますので、厳しめに見積もる法がよいでしょう。景気が上がり3%で運用できたら貯蓄額は29万円に下がります。景気の回復を願いたいですね。

貯蓄は計画的に、効率的に

よく言われることですが、収入から貯蓄の分を差し引いた残りで生活するのが貯める生活の第一歩です。給与が入ったら、口座から自動的に引き落としてくれるサービスを利用しましょう。

財形があれば申し込むのでもいいですし、銀行などでやっている自動振替のサービスでもよいでしょう。投資信託も積立購入できますが、株や投資にまったく知識がない場合、いきなり始めるのはお勧めしません。お金をためている間に少しずつ勉強をしていきましょう。

岡本さんの場合、まだ保険料控除の枠にまだ空きがありますから、始めるとやめにくいといわれる保険に加入するというのも手です。終身保険や個人年金保険に加入すれば、働いている間は控除で税金も安くなります。この時、余計なオプションは付けないことがポイントです。また、貯蓄できる金額全てを充てるのではなく、貯蓄額の半分程度を限度とし、途中でやめることのないよう、無理ない金額で設定しましょう。払込途中で解約しない限り、解約返戻金が払込金額より大きく増えるタイプの保険が出てきていますので、検討してみましょう。

自分にも投資を!

収入を増やすために自分自身に投資をするという方法もあります。何かしたいと思った時に、お金がないだけの理由であきらめることがないように、貯蓄する癖をつけていきましょう。

<著者プロフィール>

(株)プラチナ・コンシェルジュ ファイナンシャルプランナー 内田まどか

「万が一」のためだけではない、生きていくための保険の入り方から、住宅取得、転職、早期退職など、夢や希望を叶えるためのライフプランニングなど、シュミレーションを活用してアドバイス。個人相談を中心に活動している。