前々回より、この春からワンルームまたは1K程度の部屋で初めて一人暮らしをする人を対象に、最低限必要な新生活家電製品について取り上げている。前回までで、冷蔵庫と洗濯機について取り上げてきたが、今回は調理家電について取り上げて行きたい。

外食中心の生活は健康によくないという意見がある。栄養に気を使って自炊を行うべきというものだ。それはそれで正論なのだが、料理の得意な人、あるいは料理が趣味だという人の言い分でもある。そうでない人にとっては、食事の準備は面倒で、なるべく手間を掛けたくないというのが本音ではなかろうか。調理に掛かる手間を減らすのは調理家電の大きな役割のひとつだ。

重視すべきは「調理の手間を減らしたい」よりシンプルさ

なるべく手間を減らしたいという人が陥りがちなのが、多機能で何でもオートできそうな機器を選んでしまうというケースだ。そういった機器を使いこなせるのは結局のところ、料理の得意な人、あるいは料理が趣味という人が多かったりするのが現実である。例えば、複数の調理を一度に行える多機能オーブンレンジは、複数の調理の下準備を手際よく行えて初めて使いこなせる機器といえるだろう。

調理家電を初めて使うのならばシンプルな機器を選んだほうがよい。最低限必要になるのはおそらく、米を主食にするのならば炊飯器、朝食にパンを食べるのならオーブントースターだ。これらの機能を他の機器で代用することは可能だが、時間や手間を考えると実用的とはいえない。

シンプルな電子ジャー炊飯器。パナソニックの「SR-ML051」

炊飯器は、信頼できるメーカーのエントリーモデルを選んでおけば問題ない。IHのほうが火力はあるのだが、マイコン炊飯ジャーでも十分だ。最近はエントリーモデルでも、厚釜の採用などにより、十分おいしく炊き上げることができる。オーブントースターは、技術的には確立された分野の製品だ。細かな温度調節がしたいとか、コンベクションオーブンを使いたいなどと考え出すと選択肢は増えてくるのだが、単に焼くという機能がほしいのであれば、普通はごく低価格なモデルを選んでも何の問題もないはずだ。

電子レンジやオーブンレンジは、用意しておけば使う機会が多い機器だ。コンビニ弁当を温めたり、オーブンレンジで冷凍食品を解凍したりと、積極的に自炊しない場合でも応用範囲は広い。また、電子レンジやオーブンレンジの取扱説明書には、手軽に作れるいくつかのレシピが掲載されている。料理の経験が少ない人にとっては、レパートリーを何品か増やす機会になるだろう。ただし、製品によっては、前述したように上級者向けのモデルもある。取扱説明書はWebサイトで確認できることが多い。自信のない人は、レシピの内容を見て理解できる製品を選択しよう。

シンプルなターンテーブル式のオーブンレンジ。パナソニックの「NE-T156」

オーブンレンジをオーブントースターの代わりに使おうと考える人もいるかもしれない。たしかに代用は可能だが、トーストの焼き上げには時間が掛かる。これは、庫内の容積がオーブントースターに比べて大きく、さらにヒーターまでの距離も離れているためだ。ターンテーブル式の場合、5分程度で焼き上げる製品が多いようだ。庫内がフラットなタイプでは、途中でパンをひっくり返す必要があり、それよりも時間がかかる。また、製品によっては、余熱が必要なものもあるので注意が必要だ。設置スペースの関係で1台しか置けないというのならば、オーブンレンジにオーブントースターの役割を兼用させてもよいだろうが、その場合はなるべく庫内容積が小さいターンテーブル式を選んだほうがよいだろう。

さて、このほかにも、世の中にはさまざまな調理家電が存在する。スロージューサーや、ノンフライヤー、フードプロセッサー、エスプレッソマシンなどは、あれば生活を豊かにしてくれる機器だ。しかし、これらはなくても暮らしていける。これらだけでなく、電子レンジやオーブンレンジがなくても、自炊中心で暮らしていくことはできる。とりあえずは、シンプルに必要最低限のものでスタートして、その他のものは必要になった時点でそろえて行くのがよいのではないだろうか。

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