地域によっても違うだろうが、首都圏ではそろそろ暖房が必要な季節が近づいてきている。

暖房器具には、部屋全体を暖めるものと、ユーザーのそばの一部分だけを温める、いわゆる"スポット暖房器具"と呼ばれるものがある。暖房に使われるエネルギーは、灯油、ガス、電気といったところがポピュラーだ。薪や炭、石炭なども一部では使われているが、やはりそれはレアなケースだろう。

なお、今年の冬は、電気を使用しない石油ストーブが売れているという。いざというときのことを考えると、確かに安心感はある。

トヨトミの石油ストーブ「RS-G30C」。一般的な石油ストーブでは、点火に電池が必要だが、RS-G30Cでは、本体前面にあるハンドルを回すことで点火を行うことができる。暖房出力は3.01kW~2.56kWで、コンクリート住宅では11畳まで、木造住宅では8畳までの広さに対応。希望小売価格は29,190円だ

今冬の電力供給は大丈夫?

とはいえ、ここは家電チャンネルなので、電気を使った暖房について考えていきたい。電気を使う暖房器具で気になるのが、今年の冬の電力需給はどうなるのかという点だ。筆者の現在の住居は東京電力管内なので、東京電力のWebサイトにある「でんき予報」のページを見てみた。

すると、11月7日現在で電力需給は86%。「安定的」となっていた。また、「今冬の電力需給について」というページによると、それほど危機的な状況ではなさそうではある。北海道電力、東北電力、中部電力など、他の電力会社のWebサイトを見ても、多少の供給予備力はあるようだ。

もちろん、だからと言って、ムダに電力を浪費して良いというわけではない。2013年モデルのルームエアコンは各社からそろそろ出揃った感があるが、どのモデルも省エネ性能の高さを大きな特徴に挙げている。震災以降、どうしても「省電力」というポイントは避けて通れないところだろう。

電力効率は何を基準に決めている?

現在、エアコンの運転効率を示す指標として「APF」が使用されている。APF値は、年間を通してそのエアコンがどのくらいの能力を発揮したかを表す数値(kWh)を、1年間に使用した電力量(kWh)で割ることで、1kWhあたりの能力を示すものだ。

以前に使われていた基準「COP」は、単純に定格冷房能力、定格暖房能力を定格消費電力で割ったものだ。冷房能力2.8kWのエアコンで消費電力810Wならば3.45ということになる。

しかし、インバーター方式のエアコンでは、気温に合わせて柔軟なパワーコントロールが可能だ。そのため、例えば気温が摂氏30度の場合と35度の場合では、エアコン側の仕事量も異なるし、消費電力も異なることになる。

そこで、実際の運転状況に近いモデルが決められている。それが期間消費電力量で、これが先ほどのAPF値の計算の基になっている「1年間に使用した電力量」だ。東京都内で6月2日~9月21日の期間に摂氏27度の設定で冷房を行い、10月28日~4月14日の期間に摂氏20度の設定で暖房を行った場合の消費電力量を基準としている(運転時間は6:00~24:00)。

さて、各社のエアコンのカタログやWebサイトには、そのエアコンのAPF値や期間消費電力量は記載されているが、その期間に発揮した能力については記載されていない。これは定格能力×動作時間よりもかなり少ない数値になるはずなのだが、実際のところその数値は分からないし、そこまでユーザーが知る必要はないということなのだろう。

パナソニックのルームエアコン「Fシリーズ」(CS-F282C)。スタンダードクラスのなかではAPF値が僅かながら高い

さて、エアコンのAPF値は、どのくらいなのだろうか。各メーカーのスタンダードモデルの冷房能力2.8kWで機(10畳用)で比べてみると、パナソニックの「CS-F282C」が5.9で、日立アプライアンスの「RAS-AS28B」が5.8、東芝の「RAS-281ND」では5.8、三菱電機の「MSZ-GM282」では5.8、シャープの「AY-B28SD」で5.8、富士通ゼネラルの「AS-J28B」で5.8、三菱重工の「SRK28TM」で5.8、ダイキン工業の「S28NTES」が5.8となっている。

だいたい6弱ということになっているようだ。

各メーカーの上級機で比べてみると、パナソニックの「CS-X283C」が7、日立アプライアンスの「RAS-S28B」が6.7(新モデルの「RAS-S28C」は、現時点ではAPF値未公開)、東芝の「RAS-281EDR」で6.7、三菱電機の「MSZ-ZW283」で6.8、シャープの「AY-B28SX」で6.7、富士通ゼネラルの「AS-Z28B」で6.8、三菱重工の「SRK28RSN」で6.3、ダイキン工業の「S28PTRXS」で6.8だ。確かにハイグレード機のほうが、APF値は高く、省エネ性能は優れているといえるだろう。

このクラス唯一のAPF値「7」。パナソニックの「Xシリーズ」(CS-X283C)

オイルヒーターの電力効率は良い?

さて、スタンダードクラスのエアコンの暖房時のCOP値の方を見てみると、パナソニックのCS-F282Cは4.14で、日立アプライアンスのRAS-AS28Bは4.29、三菱電機のMSZ-GM282が4.07、シャープのAY-B28SDで4.29、富士通ゼネラルのAS-J28Bで4.44、三菱重工のSRK28TMで4.21、ダイキン工業のS28NTESが4.26だ。各モデルの暖房時の定格消費電力は800W前後だ。

COPは、定格冷房能力、定格暖房能力を定格消費電力で割ったものだ。ヒートポンプを使用していない電気暖房器具、つまりヒーターによって温める暖房器具の場合、この値は「1」になる。オイルヒーターの場合ももちろん「1」だ。同じ電力でも4倍以上も効率が違うことになる。

筆者は、暖房器具のなかではオイルヒーターが一番好みに合っていて、震災の前までは、冬の暖房は全てオイルヒーターで賄っていた。果たしてこの冬の暖房を、オイルヒーターに任せてしまってよいものなのだろうか。まだ結論は出せていない。