前回に引き続き、新生活にマッチしたオーブンレンジについての話だ。

新生活に必要な電子レンジは?(2)

まず、本格的に料理を行うという人は、豊富な機能を持つオーブンレンジを選んだ方が良い。同じことを行うのでも、オート機能が手間を減らしてくれるし、レパートリーも増える。また、エントリークラスのモデルが備えていない、過熱水蒸気による調理や、各種センサーによる温度管理なども大きな魅力だ。ただし、あまり本格的に料理を行うつもりはないという場合、オーブンレンジを選ぶうえで押さえておかなければならないポイントは、別のところにある。それは、オーブンレンジにおいて、必ずしも「多機能オーブンレンジの機能」が「べーシックなオーブンレンジの機能」を全て包含するわけではないという点だ。例えば、自動メニューに「お弁当温め」が入っているのは、基本的に庫内容量22L以下の単身者向けのモデルが中心だ。

ミニマムサイズなオーブンレンジのうちの1つ「NE-T154」

パナソニックを例にすると、同社の販売するオーブンレンジの中でもベーシックなモデルである「NE-T154」(庫内容量15L)は、当然のようにお弁当の温めコースを搭載している。しかし、最上位機種の「NE-R3400」(庫内容量30L)は 豊富な自動メニューを持ってはいるが、コンビニの弁当を温めるためのメニューに関しては装備していない。温める場合には、手動で時間を設定して加熱を行うことになる。こういった多機能なオーブンレンジは、自分で料理を行う人のためのツールであり、単身者が利便性を追求するためのツールとは別のジャンルの製品だ。同社のオーブンレンジでは、「NE-M264」(庫内容量26L)以下のモデルがお弁当温めメニューを搭載しているが、それより上のクラス、具体的には「NE-S264」(庫内容量26L)以上の機種には非搭載だ。ちなみに、ここから上がスチームオーブンレンジになる。これは他社のオーブンレンジでも似たような状況で、多機能モデル、あるいは庫内容量30L以上の製品には、弁当の温めコースが搭載されていないケースが多い。そういった中で、日立アプライアンスのオーブンレンジ「MRO-JS7」は、過熱水蒸気機能を搭載する高機能タイプだが(庫内容量は22Lと控えめ)、弁当温めコースを搭載している。MRO-JS7の過熱水蒸気機能は、角皿に水を入れてスチームを発生させる簡易タイプではなく、専用の水タンクが用意されたものだ。利便性と機能の両方を追求したいという人には面白い製品だろう。

単身者向けのオーブンレンジで重要な機能は、コンビニ弁当の温めだけではない。トーストを焼くという機能も、人によっては使用頻度が高くなるかもしれない。「トーストなら、トースターで焼けば良いじゃないか」というのは、非常にもっともな意見だ。トーストを、トースターで焼いた場合と、オーブンレンジで焼いた場合の最大の違いは、所要時間だ。トースターは、加熱のためのヒーターからパンまでの距離がオーブンレンジに比べると短い。そのため、焼き上がるまでの時間も短くて済む。ヒーターと食パンの表面との距離が最短になるのはポップアップトースターだが、ポップアップトースターを使用した場合には、表面にほのかに焼き色が付いて、中はしっとりといった出来上がりにもなる。オーブンレンジではそういったバランスを実現することは難しい。特に薄切りの食パンの場合、その傾向が顕著に現われる。8枚切りの食パンを焼いた場合、表面が焼ける頃には中も十分に固くなってしまっているのだ。これに関してはオーブントースターも同様なのだが、だからといってラッセルホブスなどの製品に目移りしてしまうのは、新生活家電というカテゴリーからは外れてしまうことになるだろう。それらは、いわば半分趣味の世界の製品なのだ。

トーストの焼き上がりや食感をメインに考えると、トースター、中でもポップアップトースターということになるのだが、オーブンレンジで焼いたほうがよいケースもまったくないわけではない。それが、冷凍した食パンをダイレクトにトーストにするというケースだ。こういったケースでは、焼き上がりに時間が掛かることが逆にメリットとして働く。中まで熱が通るので、特に厚切りの食パンの場合に、「表面は焼けているが中は冷えている」「中はちょうど良いが表面が焼けすぎ」といった失敗が少なくなるのだ。もっとも、これもオーブントースターで代用が効く話ではある。ではなぜ、オーブンレンジでトーストを焼こうとするのか。それは、設置スペースなどの面からできることなら1台で済ませたいという、ただそれだけの話である。

オーブンレンジでも価格の安いベーシックモデルは、ターンテーブル式を採用した製品が多く、ミドルクラス以上のモデルは庫内がフラットなタイプが多い。ターンテーブル式は、食材を回転させることで温めムラをなくす方式だ。それに対して、庫内がフラットなモデルでは、マイクロ波を発生させるアンテナ部分を回転させることで、温めムラをなくしている。この2タイプには、オーブンレンジでトーストを焼く場合の手間に、大きな違いがある。ターンテーブル式は、丸皿を外すと下が網状になっていて、直接トーストを焼くことができる製品が多い。こういったモデルでは、ちょっと時間は掛かるが、基本的にはオーブントースターと同じように使うことができる。それに対して、庫内がフラットなタイプでは、角皿の上にパンを乗せて焼くことになるのだが、熱は上からしか加わらない。そのため、途中でパンをひっくり返す必要がある。残念ながら、オートリバース機能を搭載したオーブンレンジは存在しないので、ことトーストを焼くという目的に関しては、ターンテーブル式の方が楽だ。トースターを焼くという機能をオーブンレンジに求めるのならば、ターンテーブル式を選んだ方がよいだろう。

さて、ここで話がコンビニ弁当に戻る。コンビニ弁当をターンテーブル式のレンジで温めると、弁当箱の角が当たって回転せずに温めムラができてしまうことがある、だから庫内がフラットなタイプを選ぶべきだ……そんな話が、レンジの選び方について述べられているサイトなどでよく出てくる。しかし、これは特別に大きいサイズの弁当に関しての話だ。現在販売されている一番ありふれたサイズのコンビニ弁当のサイズを計ってみた。角が丸められているが、約225×165mmのほぼ長方形で、対角線の長さは265mmといったところだ。このサイズの弁当をターンテーブル式のオーブンレンジで温める場合、庫内の奥行きか幅のどちらかが265mm以下だと、角が引っかかるということになる。各社のオーブンレンジのもっともサイズの小さいものを見てみると、パナソニックの製品がNE-T154(庫内容量15L)で庫内サイズはW269×D288×H165mmだ。日立アプライアンスが「MRO-GT5」(庫内容量18L)で庫内サイズがW295×D307×H165mm、東芝が「ER-J3A」(庫内容量17L)で庫内サイズがW270×D330×H172mm、シャープが「RE-S15E」(庫内容量15L)で庫内サイズがW285×D295×H150mm、ツインバード工業がDR-D917W(庫内容量15L)で庫内サイズは約W305×D280×H150mmだ。三菱電機は、こういった小さいサイズのオーブンレンジを発売していない。庫内容量15Lのオーブンレンジ NE-T154やRE-S15E、DR-D917Wでも、それぞれ短い方の辺が269mm、285mm、280mmだ。いずれも、標準的なサイズの弁当の対角線の長さよりも長い。もちろん、これよりも大きなコンビニ弁当もあるのだが、標準的なサイズならば、15Lのタイプでも多分、引っかかることはないだろう。

標準的なサイズのコンビニ弁当。幅は約225mmで、対角線の長さは約265mmだ

これらのことを踏まえて、次回は、各社の代表的なシングル向けオーブンレンジについて見ていこうと思う。

--以降、次回に続く--