今年の冬も徹底的な省エネが叫ばれている。多くの電力を消費する機器というと、エアコンや電子レンジなどがすぐに思いつくと思うが、個人的な感覚では、照明器具もかなり多くの電力を消費している。家庭向けの蛍光灯を使用したペンダントの場合、6畳用だと30W形+32W形、8畳用だと40W形+32W形といったところが一般的だ。30W形のサークライン(輪形の蛍光灯)の消費電力は28W、32型が30W、40W型が38Wなので、6畳だと58W、8畳だと68Wの電力を「常時」消費していることになる。これはランプが露出しているペンダント型の場合で、シーリングライトの場合、さらにもう1サイズ上の明るさのものが使用されることが多い。各種統計によると、照明器具が使用している電力は、家庭での消費電力の約16%に達するらしい(2次資料しか見つからなかったので、「らしい」ということにしておきたい)。……ということもあり、LED照明の普及に期待を寄せる向きもあるようだ。今回から数回にわたり、LED照明時代の家庭向け照明について、その入り口部分のごく基礎的な話をしていきたい。

まずは、定格から見る各種ランプの違いについて抑えておきたい。東芝ライテックのウェブサイトには商品データベースが置かれており、そこで、各種ランプの定格を見ることができる。これを基に、さまざまなランプの発光効率を比べてみよう。

まずは、白熱電球だ。同社は2008年4月に、家庭用の一般白熱電球の製造や販売からの撤退を業界で先駆けて発表している。そのため、既に白熱電球は生産完了品となっているのだが、データベースには、ホワイトランプ「ワットブライター」が載せられている(できれば、基準あるいは記念碑として今後も残しておいてもらいたいものだと、個人的には思う)。それによると、ポピュラーな60W形の場合、定格消費電力は54Wで全光束は810lmだ。発光効率は15lm/Wということになる。

既に製造/販売が終了している、東芝ライテックの「ワットブライター」

いくつかの用語が出てきたので簡単に説明しよう。全光束は、そのランプが周囲に発する光を全部合計した値だ。この値が同じならば、基本的にランプの総合的な明るさは同じということになる。発光効率のlm/Wは、電力1Wあたり何lm(ルーメン)の光を発しているかを表したものだ(もちろん、そのランプが1Wしか消費しない状態で点灯した場合の明るさではない)。

ただし、ランプの種類によっては、特定の方向に光を強く発するタイプのものもあるので注意が必要だ。例えば、上に挙げたような白熱電球では、ソケットの部分を除けば全ての方向に光が拡がる(レフランプなどを除けば)。それに対して電球型蛍光灯やLED電球では、ランプの根元に近い部分には電源回路がある。その部分は不透明な素材で覆われており光を発しない。さらにLED電球では、LEDそのものが単一の方向に光が向かう性質を持っているため、特別な工夫をしない限りLEDチップの向けられている方向の光のみが強くなることになる。つまり同じ全光束ならば、その電球が向けられている方向(直下という言い方をする)では、LED電球の方が白熱電球より明るくなり、角度の離れた場所では白熱電球よりも暗くなることになる。電球型蛍光灯はその中間だ。ただし、ランプを照明器具に組み込んだ場合には話が変わってくる。白熱電球を使用することを前提とした照明器具、なかでもスタンドやダウンライトなど一方向に光を向けて使うものでは、器具内に反射板が入れられているケースが多い。そのような場合、ランプの裏側に発せられた光も直下の方向に向けられることになる。そのような器具では、同じ白熱電球でも直下の明るさはアップすることになる。それに対して、一方向にしか光を出さないLED電球をこういった器具に使用しても、素で使用した場合から明るさはさほど変化しないことになる。そのせいもあって以前は、LED電球の明るさを示す際に直下での明るさを使用して「何W相当」といった言い方をしていたのだが、現在では全光束が使用されている。また、照明器具に組み込んだ場合の明るさを、「器具光束」と呼ぶ。LED照明器具と、その他の光源を使用した照明器具との比較では、器具光束のlm数が使用されることが多い。

続いて、最近はLED電球に押され気味ではあるが、白熱電球の省電力は置き換え用としては先輩に当たる電球型蛍光灯だ。同じく東芝ライテックのデータベースで「ネオボールZリアルPRIDE」を検索してみた。電球色の「EFA15EL/10-PD」の場合、全光束は810lmで、60W形のワットブライターと同じだ。しかし定格消費電力は10Wと、ワットブライターの1/5以下で、発光効率は81lm/Wとなる。

電球の形状をリアルに追求したネオボールZリアルのプレミアムモデルが「ネオボールZリアルPRIDE」

LED電球では、同社のラインナップの中で最も全光束が高い「一般電球形9.4W」を検索してみた。一般電球形9.4Wには電球色の「LDA9L」もあるが、このモデルの全光束は650lmで白熱電球の40W形相当だ。それに対して、昼白色(色は変わってしまうが)の「LDA9N」ならば全光束が850lmで、白熱電球の60W形を上回る。直下の明るさは白熱電球の100W形相当だ。LDA9Nの場合、発光効率は90.4lm/Wだ。白熱電球に比べれば非常に高効率ではあるが、電球型蛍光灯との開きがそれほど大きいというわけではない。

850lmという、全光束を持つLED電球「一般電球形9.4W」

3種類のランプの定格寿命についても確認してみよう。これに関しては、4万時間というLED電球のLDA9Nが圧倒的だ。ワットブライターは、通常の白熱電球の2倍となる定格寿命2,000時間を達成しているが、それでもLED電球とは20倍の開きがある。一方、電球型蛍光灯のネオボールZリアルPRIDEは、1万2,000時間の定格寿命を持つ。ただし、これは特殊な例ではある。ネオボールZリアルPRIDEは、一般の電球型蛍光灯の2倍の定格寿命を持つプレミアムタイプのモデルだからだ。一般的な電球型蛍光灯の定格寿命は、6,000時間といったところだ。

発光効率と定格寿命だけを比べてみると、白熱電球はLED電球などへの置き換えを行った方が明らかに効率的に見える。一方、既にハイグレードな電球型蛍光灯を使用している場合、無理にLED電球に置き換える必要はないようにも思える。

ところが、話はそう簡単ではない。次回は、配光について話を進めてみよう。