【コラム】
ボーナスシーズンも到来し、いくつかのメーカーを除けば目玉も出揃ってきたので、ここのところ週末の秋葉原は結構な混雑ぶりだ。秋葉原駅を降りて街に踏み出す一歩目のニオイに(?)、夏の到来を感じる。もっとも秋葉原も(筆者はたかだか15年程度しか知らないが)変わってきた。電子部品の街から、なんというか欲望渦巻く街に。せめてあっち系とこっち系は区画分けしてくれよとは思うが、雑多なトコロもまた秋葉原の魅力なんだろうか? 古き良き時代を懐かしむようになるとは……30歳を超えると少し価値観が変わるのを実感する。
さて今回はハイエンド向けケースでは老舗のソルダムから登場した「ALTIUM ALCADIA X-1」がテーマだ。電源未搭載で59,800円(税抜き:ソルダムオンラインでの価格)という高級ケースであり、同時にアルミニウムPCケースを作り続ける同社のこだわりが詰め込まれた製品でもある。
さっそく届いたALCADIA X-1。以前アビーの「AS Enclosure M2」を試した時も同様だったが、この手の高級ケースは基本的にハイタワー~フルタワーが多い。しかも梱包も製品を傷つけないよう巨大になっており、中身はアルミ製で軽いのに、その大きさが故に店頭お持ち帰りには相当な根性が必要となっている。ここは配送が無難といった印象だ。ちょうどひとまわり小さなミドルタワーケース「ALCADIA X-2」もリリースされたので、余るほどの拡張性を望まないのであればそちらを選んでも良いだろう。
中身はというと、PCケースとしては珍しく発泡スチロール無しの段ボールのみによる梱包。前後左右+上下の各面にも十分なスペースを用意している。無駄の無い適度な梱包。梱包を解いた時から、何か違いを感じさせてくれるのが国内メーカーの証だろうか。
ケースを取り出して外観を見てみると、まず気付くのは上下に分割された構造だろう。上の部分は5インチベイが3段用意されており、こちらが5インチベイと電源のためのスペース。5インチベイは最近の海外製ケースと比べると少なく感じるが、まず大丈夫とは思う。そして下の部分はマザーボードその他が入るメインのスペース。側板後部に吸気用のスロットが用意されているだけで、そのほか側面・前面は密閉された構造だ。これがALCADIA独自の特徴でもあるリアインテーク・リアエギゾースト(R-I/Eシステム)機構というワケだ。このALCADIAでは前面と側面の外板は2層構造をとっており、リアから取り込まれた空気は側板の隙間をフロントへと抜け、あらためてメインの内部をフロントからリアに風が吹き抜けるという構造だ。これにより、理論的には前面からのノイズの漏洩を防止し、静音効果が得られるという。
そのほか、金属加工技術ではフロントの曲面加工なども見所。トップならともかくサイドにアールが付いているため、筆者の好みでは若干締まりがないようにも感じてしまうが、内部に空気が流れることを考えれば、このようなアールを持たせたデザインの方がより効果的なのだろう。
内部を見ていこう。側板を開けるとまず第2の側板が現れる。この2つ目の側板を開けてはじめて内部にアクセスできるのが、先にも紹介したR-I/Eシステムの特徴だ。こうしてケースを開けてみると、吸気用のファンが前面に搭載されていることがわかる。前面の吸気ファンは14×14cmが2基。フロントも2層になっており、その両サイドからファンへと吸気が行われる仕組みだ。そしてトップカバーを開けることで5インチベイへのアクセスが可能となる。ここまでの行程に要するネジの数は12個(外板:4個/内板:4個/トップカバー:4個)。通常のケースと比べ工程が多いのは言うまでもない。数字の上ではあまり多くはないが、なにせ密閉性が高いようで、カバーの取り外しには若干力が要る印象だ。部分部分にはゴムが使用されており、これがパーツ同士の密着性を高めている。気になるところでは、同社はこれまでローレットスクリュー(手回しネジ)を用い、ケースの開閉の手間を減らすといった努力をしていたのだが、今回はこのローレットスクリューが若干少なく感じる。あと数カ所ローレットスクリューであれば便利だなあと感じる箇所があったので、これは別売のパーツで補うのも手だろう。また、スライド式のマザーボードベースもALCADIAでは廃止されている。
なお、冷却用ファンは前面14cm×2基に加え、背面に9.2cm×2基(1基は別売オプション)、そして側板のCPU用インテークにも8cmが1基搭載されており初期で計4基だ。これにCPUファン、電源ファンにGPUファン、チップファンが付くとなるとかなり多くなるが、ハイエンドPCには必要な個数なのだろう。
上の部分に用意された5インチベイは、蓋付きの光学ドライブ用フロントカバーに加えて3.5インチFDD用のマウンタも付属する。3.5インチHDDベイは下の部分の高さいっぱいのベイが用意されており、10基まで搭載可能となっている。テラバイト単位のファイルサーバも簡単に作れることだろう。このHDDマウンタ自体も横方向にネジ4つで取り外しが可能で取り付けは容易。マウンタのレールには防振用とみられるゴムも取り付けられている。
実際にシステムを搭載した際の性能も確認しておきたい。本来ならばウルトラハイエンドでも余裕の静音&冷却性能が特徴なALCADIAだが、筆者の環境はせいぜいミドルクラス。普段ベンチマーク等に使用している機材を流用した。
主要なパーツ構成
| CPU | AMD Athlon 64 3200+ |
|---|---|
| M/B | GIGABYTE GA-K8NXP-SLI |
| VGA | ASUSTeK製GeForce 6800搭載カード |
| DVD-ROM | MITSUMI製DVD-ROMドライブ |
| HDD | WesternDigital Raptor 74GB |
| 電源 | Top Silent GUP-470 |
まずマザーボードスペースはかなり広い。ケーブルを束ねる等に利用ができるクランパーというフレームが取り付けられているが位置は調節できる。奥行き330mmまで搭載できるのでExtendedATXサイズのサーバマザーボードも搭載可能だ。また、ケース自体の奥行きも大きいため、電源スペースも広い。奥行きの長いEPS電源や光学ドライブを搭載しても余裕だ。デュアルコアプロセッサやサーバ/ワークステーション向けプロセッサを用いるならば、なおさら大容量でサイズも大きな電源が必要で、これからのケース選びには電源スペースも重要になってくるだろう。ただし電源取り付けにはちょっとひと手間、後部のサイレンサーを外す必要がある。
内部に目を移すと、意外と困るのがサイドダクトファンだ。若干の高さの調節は可能なものの、背の高い巨大なCPUクーラーとは干渉してしまうだろう。仕方ないとリテールファンを取り付けては静音性が損なわれるし、丁度良い高さのCPUクーラーを探すか、あるいは標準で付いてくるサイドダクトファンを取り外して高さを調節するか、静音と性能が絡むとても難しい選択だ。とりあえず今回はリテールファンを取り付けてみた。
全てのパーツを搭載し電源を投入しての感想は、通常のベンチマークの様にむき出しでテストすることと比べれば幾分か静かではあるから、ハイエンドシステムで構成した場合ならばそこそこの静音効果が得られることだろう、といったところ。風量はかなりのもので、冷却面では万全。逆に静音を目指すミドルクラスシステムには前面の14cmファン×2基、そして背面の9cmファンはやや過剰ではないかといった印象だ。最大の特徴のR-I/Eシステムも、搭載・非搭載の比較ができないことと、背面の9cmファンのファンコントロールが効かなかったため、評価は難しい。確かに1枚目の側板を外した場合と比べればノイズは減る気がするし、実際にノイズ源は耳から遠いところになるわけで、デスク下などに置くことでその効果はより高くなるだろう。
ALCADIAの作り込みは確かに凄い。今までのケースとは一線を画すR-I/Eシステムのメカニズムと、要所要所でゴムを用いた密閉構造など、よくもここまで考え作ったものだと感心することは間違いない。反面、組み立てが少々面倒と感じることもある。どちらかというとカッチリ組み立てて滅多なことではケース内をいじらないようなPCが向いているのではないだろうか。その意味でサーバ/ワークステーションに向くケースだろう。
静音に関してはこのケース1台だけで何とかなるものではない。当たり前だが静音を突き詰めるには各パーツ毎に対策が必要なのだ。ケースはそのなかの1要素にすぎない。まず同社F-COM4のようなファンコントローラで14cmファン×2基、背面9cmファンの回転数をコントロールしたり、より低騒音のファンに交換したりといった静音パーツで固める作業はどのケースでも必須だろう。そうしたシステムトータルで突き詰めた後、通常のケースとALCADIA X-1でどちらがどこまで静かになるのか、そこで差が出るというものだと思う。
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