仏内務省の発表では、23日実施の仏大統領選の第1回投票結果は、1位マクロン氏、2位ルペン氏、3位フィヨン氏、4位メランション氏となった。マクロン氏とルペン氏が5月7日の決戦投票に進む。

敗れた3位のフィヨン氏は決戦投票でマクロン氏を支持すると表明、マクロン氏が決戦投票で勝利するとの見方が優勢となり、金融市場に安心感が広がった。24日の日経平均は前週末比255円高の18,875円に上昇し、為替は24日16時30分時点で、1ドル110.10円の円安になった。

事前の世論調査では、4候補が大接戦となっており、極右ルペン氏と極左メランション氏が躍進するリスクが心配されていた。

<仏大統領選の結果:上位4候補の得票率> (出所:得票率は仏内務省)

上の表で、中道のマクロン氏とフィヨン氏が金融市場に安心感を与える候補で、極右ルペン氏と、極左メランション氏は、金融市場に不安を与える候補である。

反EU(欧州連合)を唱える極右ルペン氏と、極左メランション氏の得票が予想以上に伸びて、両者で決戦投票ということになっていれば、フレグジット(フランスのEU離脱:FranceとExitを組み合わせた造語)が意識される可能性があった。英国に次いでフランスもEU離脱に向かうと、EU崩壊も現実味を帯びてくることになる。

投票結果が明らかになるまでは、悪材料の連鎖によって、円高・株安が進む可能性も意識されていた。マクロン氏がトップを決めると、金融市場に安心感が広がった。

ただし、これで世界の政治不安が一気に解消に向かうわけではない。たくさんある世界の政治不安の1つが緩和しただけで、まださまざまな政治リスクが残っている。フランス大統領選も、決選投票までに極右ルペン氏が巻き返す可能性もないわけではない。さらに、(1)-(7)のリスクも意識される。

(1) 北朝鮮の暴走による東アジアの地政学リスクの高まり

(2) 中国の海洋進出に対し米国が強硬策を取り、米中対立が先鋭化するリスク

(3) シリア・アサド政権への米ミサイル攻撃により、シリア和平が遠のき、米ロ関係が悪化

(4) 英国がEU離脱を正式に決定し、英国・EUともダメージを受けるリスク

(5) 欧州各国で、反移民・反EU運動が勢いを得つつあるリスク

(6) 世界各地にISテロが頻発しているリスク

(7) 日本の森友学園問題

執筆者プロフィール : 窪田 真之

楽天証券経済研究所 チーフ・ストラテジスト。日本証券アナリスト協会検定会員。米国CFA協会認定アナリスト。著書『超入門! 株式投資力トレーニング』(日本経済新聞出版社)など。1984年、慶應義塾大学経済学部卒業。日本株ファンドマネージャー歴25年。運用するファンドは、ベンチマークである東証株価指数を大幅に上回る運用実績を残し、敏腕ファンドマネージャーとして多くのメディア出演をこなしてきた。2014年2月から現職。長年のファンドマネージャーとしての実績を活かした企業分析やマーケット動向について、「3分でわかる! 今日の投資戦略」を毎営業日配信中。

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