昨年の日経平均は、年前半に急落、年後半に急騰する展開であった。短期間で、悲観・楽観が入れ替わるめまぐるしい年だった。

今年も相場が荒れる要因が山積

今年も相場が荒れる要因が山積している。2017年は、世界景気の改善が続く中、世界の政治不安が一段と高まる年と考えている。景気・企業業績に目がいく局面では株が上昇するが、政治不安が高まると急落が予想される。

今年の日経平均は、年前半に上昇、年後半に下落を予想している。年前半は、政治不安はあっても、日本および世界経済の回復を買う流れが勝ると考えている。ただし、年後半には、世界景気の回復を買う流れが一巡する中で、米国・欧州・中国の政治不安が深刻化し、株安が進む可能性がある。売買タイミングが難しい年になりそうだ。

世界の政治不安に、2種類ある。1つは、ポピュリズム(大衆迎合主義)のリスク、もう1つは独裁国家の暴走リスクである。ポピュリズムの中心に米トランプ大統領がいる。反グローバル(自国中心)主義・反資本主義の過激政策を次々と打ち出し、世界経済にダメージを及ぼす可能性が高い。

欧州各国でも、反グローバル・反資本主義の過激発言を繰り返す、極右・極左リーダーが急速に支持を伸ばしている。去年は、英国がEU(欧州共同体)離脱の方針を打ち出したが、今年は、フランス・イタリア・スペインなどでもEU離脱の議論が高まるリスクがある。

フランスでは、反EU・反移民を掲げる極右勢力「国民戦線」が急速に勢力を拡大しているが、マリーヌ・ル・ペン党首が、歯に衣着せぬ過激発言で知られ、「フランス版ドナルド・トランプ」と言われる。イタリアでも、スペインでも、ドイツでも、過激発言の極右または極左勢力のリーダーが人気を博している。

今年は、欧州で選挙があるたびに、極右・極左勢力の拡大が話題になるだろう。欧州の極右・極左勢力は、反移民・反EUを主張して大衆の喝采を受けている。政権を取るまでに成長すると、EU崩壊の危機が拡大する。米国・欧州にかかわらず、世界中に、自国中心主義の「ドナルド・トランプ現象」が広がりつつあることは、世界経済にとって重大なリスク要因である。

一方、独裁国家の暴走も、今、大きな不安材料となっている。具体的には、中国・北朝鮮の政治動向に不安が高まっている。

ポピュリズム暴走は民主主義国家でのみ起こるもので、共産党が独裁を強める中国や、北朝鮮ではポピュリズムが入り込む余地がない。その代わり、独裁者が国際ルールを無視して暴走するリスクが高まっている。今年は、中国の海洋進出をめぐって、米中の緊張が高まるリスクがある。

リスクは高いがチャンスもある年

さて、そんなリスクだらけの年ならば、株式投資には手を出さないという考えも十分に成り立つ。ただ、世界景気は、今、回復色を強めてきており、リスクは高いがチャンスもある年となりそうである。

今年は、日本株では、小型成長株に投資チャンスがあると考えている。今年は、AI(人工知能)・IoT(モノのインターネット化)・ロボット・自動運転・フィンテック・バイオ・インバウンドなど、成長テーマが豊富で、小型成長株に投資チャンスが増えそうだ。小型成長株は、うまく売買すると、短期間に大きな値上がり益が得られることもある。ただし、失敗すると短期間で大きな損を被る可能性もある。

小型成長株は、売り時の判断が難しい。上昇しているところで早々に売ってしまうと、売った後、さらに急騰が続いて残念な思いをすることがある。一方、突然、急落を始める時は、要注意だ。放置すると、株価は「半値八掛け二割引」の急落に見舞われることもある。

人気の成長株が急落を始めたら、問答無用で売る必要がある。私がファンドマネージャーをやっていた時に「急落する小型株は問答無用で売り」を徹底していた。急落している間は、何で下がっているのかわからないが、大幅に下落した後で「あの成長ストーリーは偽者だった」と明らかになることが多いからだ。

執筆者プロフィール : 窪田 真之

楽天証券経済研究所 チーフ・ストラテジスト。日本証券アナリスト協会検定会員。米国CFA協会認定アナリスト。著書『超入門! 株式投資力トレーニング』(日本経済新聞出版社)など。1984年、慶應義塾大学経済学部卒業。日本株ファンドマネージャー歴25年。運用するファンドは、ベンチマークである東証株価指数を大幅に上回る運用実績を残し、敏腕ファンドマネージャーとして多くのメディア出演をこなしてきた。2014年2月から現職。長年のファンドマネージャーとしての実績を活かした企業分析やマーケット動向について、「3分でわかる! 今日の投資戦略」を毎営業日配信中。

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