年初より、日経平均は下げが続いている。16日も、スイス・フランの歴史的急騰を受けて、円高になったことを嫌気して、日経平均は大きく下げている。ただ、今年は、日本の企業業績の回復が徐々に鮮明になっていくと見ており、日経平均は、いずれ反発上昇に転じると予想している。

(1)スイス・フランが対ユーロで歴史的な急騰、つれて円高が進む

スイス国立銀行(中央銀行)は15日、スイス・フランが対ユーロで上昇することを防ぐために設定していた上限(1ユーロ=1.20スイス・フラン)を撤廃すると発表した。これまでは、上限を超えてスイス・フランが高くなることを防ぐために、無制限の為替介入をすると宣言していたが、ついに為替介入を放棄して、「為替を自然体に任せる」ことにしたわけだ。

これを受けた為替市場ではスイス・フランが急騰を見せ、対ユーロで一時30%高の1ユーロ=0.92スイス・フランをつけた。1日で主要通貨が30%も変動するのは、きわめて珍しい。

スイス・フランの急騰を見て、ドル円為替レートも円高に動いた。元々、日本円とスイス・フラン、そして今はもう存在しない西ドイツ・マルクは、同じ方向に動く傾向が強い通貨であった。信用が高い通貨であるスイス・フランが買われたことで、同じように信用が高い通貨である日本円も同時に買われることになった。

(2)日本の企業業績は今・来期と増益が続く見込み

株は、短期的には需給や材料で動くが、長期的にはファンダメンタル(景気・企業業績)で動く。日経平均は年初から急落したが、上昇トレンドはまだ崩れていないと考えている。

■日経平均週足:2013年1月~2015年1月15日

楽天証券経済研究所では、全産業(除く金融)ベースの経常利益(東証一部上場、3月決算企業)が、今期(2015年3月期)は+9%、来期(2016年3月期)は+11%の増益を予想している。日本は、トリプルメリット(円安・原油安・米景気好調)の追い風を受け、企業業績の好調が続くと見ている。

(3)「下げたら買い、上がったら売り」の単純な戦略が上手くいっている

昨年の個人投資家の日本株売買動向を見ると、「下げたら買い、上がったら売り」の傾向が鮮明だったが、それが、きわめて有効に機能していた。ここで、前半急落し、後半に急騰した昨年10月の売買を振り返ってみたい。

■2014年10月の日経平均推移と、外国人・個人投資家の売買動向

(出所:外国人・個人の売買動向(売買代金差額、二市場1・2部)は東京証券取引所)

10月第1~3週に日経平均が急落する中、個人投資家は1兆円あまり日本株を買い越した。ところが、日銀の追加緩和を受けて日経平均が急騰した第5週には、もう8,000億円以上、一気に売り越しに転じている。個人投資家の売買タイミングは、非常に巧妙であったと言える。

1月から日経平均は下がっているが、昨年10月と同様、下げ局面では外国人が売って、個人が買い越している。さて、今回はどちらが巧妙だったということになるか注目だ。

執筆者プロフィール : 窪田 真之

楽天証券経済研究所 チーフ・ストラテジスト。日本証券アナリスト協会検定会員。米国CFA協会認定アナリスト。著書『超入門! 株式投資力トレーニング』(日本経済新聞出版社)など。1984年、慶應義塾大学経済学部卒業。日本株ファンドマネージャー歴25年。運用するファンドは、ベンチマークである東証株価指数を大幅に上回る運用実績を残し、敏腕ファンドマネージャーとして多くのメディア出演をこなしてきた。2014年2月から現職。長年のファンドマネージャーとしての実績を活かした企業分析やマーケット動向について、「3分でわかる! 今日の投資戦略」を毎営業日配信中。